東京トンデモストーリー
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「何様のつもりなのだあの男は」
「私に対してあの暴言、赦せん」
「しかし・・・なぜ焦っていたのだ?」
「私の裸身を見て呪われるというわけでもあるまいに」
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ガチャ、
「出たぞ~って、おいおいおい」
バタン。
開いた扉の向こうには一糸纏わぬコスプレ女。
なに、露出狂なの?
「どうして入ってこない」
「服を着ろ」
「なぜだ」
俺が男だからです。
というか常識・・・だよな?
「俺の目に毒だからだ」
とにかく目のやりように困る。
話そうにも話せねえじゃねえか。
「なっ・・私の裸身がお前の目に毒だというのか」
「そう言っただろうが。いいからさっき着てたの着ろ」
「・・・無礼者が」
微妙に抗議しながらも着替え直してはいるらしい。
衣擦れの音が聞こえる。
(なんなんだホント。非常識云々以前に何か抜けてるぞ)
「入れ」
ガチャ、バタン。
「まず、俺から質問していいか?」
「私からだ」
「あー、はいはい」
さっきからそうだが傍若無人かつ偉そうな物言いが目立ちませんか。
別に俺は気にせんが、いい態度とは言えない。
「貴様は何者だ」
「貴様、ねぇ。単なる一般人だよ」
「名は?」
「渚怜だ」
「レイ、ここはどこだ」
どこって、何言ってるんだこいつ。
自分でここに来たくせに分からないって記憶喪失でもしたのかよ。
「東京だが」
「なんだと?ここはトウキョウなのか?」
まるで今知ったと言わんばかりに目を丸くしてやがる。
「まごうこと無き東京だ」
「・・・」
やっぱりなんかおかしい。
東京を知らない筈はないし、考え込む理由も分からん。
「質問いいか?」
「・・・ああ」
「名前は?」
「天御中木花」
あめのみなか?
日本人の名前だがどう考えても時代錯誤すぎる気がする。
なんか聞いたことある気もするんだが、まあいいか。
「どこから来たんだ?」
「マトウキョウだ」
「はい?」
「魔物の魔に、東京だ」
本格的に俺の予感が的中しそうなんだけど。
「・・・どんな場所なんだ?」
「戦乱の絶えぬ場所だった」
うっわ・・・
「今言ったことは本当のことか?」
「偽って何になるというのだ」
目がマジなんだけど、これはなんていうジャンルの病み方なの?
思い込みのレベルじゃねえぞ。
「今すぐ精神病院へ行こうか」
「ビョーイン?何だそれは」
「頭のおかしい人が通う場所だ」
「ふざけるな」
いや、大真面目なんだけど。
このまま放っておくとお兄さん君の未来が心配だよ。
「ここは戦火が及んでいないのか?」
「残念ながら戦乱自体が起きてない」
「なっ・・・!」
驚愕、ってこういう状態を指すんだろうな。
声も出ないくらいに衝撃的だったらしい。
そこまでの妄想になると自己暗示じゃね?
ある意味スゲーわ。
「大丈夫かよ」
「あ、ああ・・・」
大丈夫じゃなさげだなこれは。
精神病って、実際目の当たりにすると怖くて笑えない。
ちょっと落ち着かせるか。
「なんか飲み物持ってくる。取り敢えず落ち着け、な?」
「・・・・・・」
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