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リョウマちゃんの遺伝子  作者: 伊可乃万


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第7話『深夜の家出計画』

 ヨウドウは正妻を持たず三人の妻がおり、それぞれ違う子供が産まれている。スセリビメはその内ラズルシャーチ出身の女の子供であった。そんな彼女が生を受けたとき、サラバナ王国に、神の使者と名乗る中年の男がやってきた。王宮に不躾に侵入し、ヨウドウ公と謁見し、そして自らが神の使者である証明をした。ヨウドウ公の眼前で、不思議なカバンを製作したのである。そして神の使者と名乗る男は、ヨウドウにこう告げた。「スセリが旅立つとき、このカバンを託せ。さすれば偉大なる神の導きにより、世界はやがて幸福に包まれるであろう」と。それを聞いた父、ヨウドウは、そのときの話を思い出し、今こそスセリが旅立つときだと判断したのである。


 一方、スセリビメの姉で王位継承権を持つ醜女、イワガミ・サラバナは、賢いスセリだけを溺愛する父親の事を快く思っていなかった。

「なんであんなレベル3の勉強しか出来ない痴れ者に、父上は甘いのかしら。私の方がレベル128もありますし、全てにおいて有能ですのよ。」

 自らの愚かさを知らない先に生まれただけの姉、イワガミは、従者達に毎日のようにスセリの悪口を言い、本人にも、会えば嫌味を言い、冷たく当たる始末であった。

 全く手に負えないこのような愚か者にも、スセリビメは姉だから、という理由で子供ながらに大人の対応をし、必死に我慢していた。イワガミの態度に対し、従姉妹でスセリ派のムツは常に怒り心頭状態であったが、表向きは抵抗する事も出来ず、歯がゆい思いをしていた。


 そして、ついにスセリは自室内で動き出す決断をした。どうせ父上に旅に出たいと言っても断られる事は解りきっていたので、彼女は亡命に近い形で国を脱出する計画を練った。その決断には、ムツは賛同しなかったが、最終的には折れ、ムツもスセリに付いていくことに決めたのである。


「スセリ、じゃなかった、リョウマのやりたいことはわかったけど、はっきり言って無茶苦茶だよ。無一文だっていうのに、一体どうやって1000億ジェルも貯めて、街を作るつもりなんだ? あの土地は街の規模には収まらない。都市になる。仮に土地を買えたとしても、街を建設する費用だって馬鹿にならないぜ。数年どころの話じゃないぞ。旅に出るのは賛成だが、街づくりなんて承服できないよっ」


 ムツは暴走するスセリを必死に諌めようとしたが、彼女の意思は変わらない。それに、スセリにはとある秘策があった。

「ウチのカバンを持ち出していくつもりだ」

「カバンって、あの宝物庫にある、お前のカバンのことか?」

「ああ。あのカバンには、不思議な力があるって聞いた。そのカバンに、今は賭けてみようち思うちょるぜよ」


 スセリの素っ頓狂な発言に、ムツは頭を抱えた。しかし、そのカバンは宝物庫にあるとはいえ、スセリの所有物。宝物庫前には兵士が厳重に警備しているが、スセリが直接行けば、持ち出すことは不可能ではない。ただし、国王の許可が必要であるが。

 スセリはどのようにカバンを持ち出して国から出るか、その計画を綿密に練った。王宮の設計図と人員配置図をにらめっこして、確実に持ち出せる時間帯と道取りを、ムツと室内のテーブルで思案していた。丁度そのときだった。


「呼ばれてないが来てやったぞ、お姫様」


 突然開いた窓枠から、ゼントが姿を現したのである。


「おっおまんは、確か、いつかの金食い虫!?」

「命の恩人に、随分失礼な物言いだな」

 

 二人の関係を知らないムツは、この状況を見て、更に混乱していた。青装束のしっかりとした身なりからして不審者ではなさそうだが、剣を肩にかけていることから、暗殺者の可能性も考えていた。


「おい、あんた! 一体何者だっ名を名乗れっ」


 ムツは決死の覚悟で、目の前の剣士に威勢を張ってみせる。


「・・・金だ」


「何だと?」


「俺の名前を知りたいなら、金を払え、と言っている」


「あんた、ふざけてるのか。兵士を呼ぶぞっ今すぐここから立ち去れっ」


 興奮するムツを宥めるように、スセリは彼女の肩に手を置き、ゼントに話しかけた。


「現金なら、今部屋に少しある。持っていけ」


 スセリは部屋の化粧台の引き出しから小額のジェルを持ち出すと、ゼントに近づき、手渡した。


「ウチの名前はリョウマ・サイタニだ。お前は?」

「俺の名前は、ゼント。ゼント・ナムジだ」

「一体何なんだ、スセリ、この男と知り合いなのか?」

「ウチの命の恩人ぜよ」


 スセリの発言に、ムツは度肝を抜かれたような表情をして、大仰に驚いてみせた。


「お前、国を出るつもりなんだろ? 特別に、この俺が力を貸してやるぞ、ありがたく思え」

「え? なんでおまん、そのことを知ってるんだ」

「お前の服装は、完全に旅をする者の格好じゃないか」


 確かに、今のスセリの服装は、ドレス姿から一変し、緑のレザージャケットにホットパンツ、そして白いニーソックスにウェスタンブーツと、およそお姫様とは思えない野性味のある服装であった。


「むう・・・おまん、鋭いな。確かにウチは、これから国を出るつもりだ。でも本当に協力してくれるがか? 渡す金ならもう無いぞ?」

「この金だけで、充分だ。あまり時間をかけるわけには行かない。さっさと支度しろ」


 そう言い放つと、ゼントは窓枠から室内に侵入し、テーブルにおいてある城の内部の地図を凝視しはじめた。 


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※補足解説 スセリの姉、イワガミのモデルはイワナガヒメですが、オリジナルの名前とさせて頂きました。

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