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五分前仮説のブランニューワールド  作者: 幾楽あくた


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未来シコウのチートデータガール 13


 目が覚めてハジメは大きく伸びをした。体を包んでいた水性のボールチェアはハジメの伸びに合わせて少し形状を縦長にする。伸びによって起こる心地の良い筋肉の緊張は、負担を感じていなかった体に程よい刺激を与えて、ハジメの覚醒を促してくれる。


「んーん……んっ」


 少しふわふわぷかぷかして、寝返り打ってから、ハジメが湖面のギリギリ上に降り立つ。トッ。と足をつけた後ろで水のボールチェアはぱしゃりと弾けた。後に残るのは波紋だけである。

 それに合わせて隣で一緒に浮いて丸まっていた三匹が、慣れた様子で滑らかな宙返りをしてトトトッと瓦礫の上に降りる。主人の次の挙動を好奇心の塊の様に見つめている。


 三匹の表情を一匹ずつ確認し、そして昨夜あんなに綺麗だった天井を見上げる。


 仄かに青白い太陽と言うべきか、天井の中央に煌々と輝く光が一つあった。昨夜見上げて美しいと感じた全ての光を一か所にまとめたよりも更に明るく、まるで昼間のように広場全体照らしている。自然光では在り得ない、温度のない白い光は、黒い石畳や蔦の蔓延る白壁を冷たく映していた。

 少しのうすら寒さを覚えつつも、明るくなったならそれは歓迎すべきと頷いて気持ちを切り替える。


「どうしよっか考えたんだけど……まずはお助けNPCを探してみようと思うんだ」


 腰に手を当てて、足元の三匹に声をかける。

 三匹がハジメの発言を受けて、不思議そうに首をコテンと傾げる。


「この世界がマホレコだったらいる筈なんだ。魔法使いのお爺さんとか、不死身のお兄さんとか。情報屋なのに私に肩入れしてくれる人もね」


 そんな有象無象を頼るの? 三匹の無言の声が聞こえてきそうだった。これが自分の無意識の心の声だったら自分はヤな奴だと、ハジメはこっそり内省する。


「マホレコじゃなくても、情報収集は基本。ログアウト出来ないなら、せめて楽しむために頑張んなきゃ。無意味にうろうろするのって生産性がなくて時間の無駄だろ?」


 三匹の事を連れと認識したハジメは、ついつい説得を試みてしまう。きっと三匹にしてみればハジメが他人を頼る事が不思議でならないだけなのだ。三匹は、ハジメの事を崇拝しているので、ハジメが下々の人間を頼るのが理解できないのである。


「まずは外を目標に、それじゃいこっか?」


 独り言が増えているなと思うとけれど、軽い空腹は続き、喉は乾く。そしてログアウトも出来ない。自身で認識していないストレスが小動物たちに話しかけるという形で現れていた。三匹が人語を正しく理解しているように見えるのもまたこの現象に拍車をかけている。実はは小さく、恥ずかしい。

 そんな主人を励ましたいと考える猫達はナァァと鳴いて彼女の意思決定、行動を喜んでみせる。本当に、一つ目なのに愛らしい。一つ目であっても可愛らしい。一つ目はもしかしたらオンリーワンだ。たくさんいるけれど。


 ハジメは足に意識を向ける。実は元の世界の高級ブランドのデザインに、一流ブランドの履き心地を再現した奇跡のブーツの底に、魔法の力が惜しみなく注がれる。

 足元を固めるそれの心強さに、少し笑みがこぼれる。君が靴だからもしかして楽をしているのかもね。そんな誉め言葉を内心で思えば、心持靴が更に軽くなった気がしてくる。

 

「君達は、どっちに行きたいかね?」


 腕組みをして、瞑目して、ちょっとおどけて偉そうに聞いてみる。ただ、ハジメが先行して、後ろに三匹がついて歩くという構図は崩れない。

 実のところ、すでにハジメは行き先を決めている。きっと三匹たちは理解していて、だからこそ行動でも態度を示さないし、耳とヒゲの意識はハジメが行きたいと思っている横穴の中に向いているのだ。


「そうだね。私も同じ行先さ」


 口元に微笑みを浮かべて、足は軽く歩く。


「ここから先は未知だよ。私もだけど、君達も気を抜かないでね」


 辿り着いたのは、昨夜辿り着いた時に立っていた入口から見て一時の方向。浸水が少ないながらも蔦が一番多く蔓延る部屋への入り口だった。

 ハジメは気負いなく、自信をもち、未知の道程へと足を踏み入れる。自分の感覚が正しければ、この道の向こうに状況打破が待っている。出来なければ、もしかしたらこの地でゲームオーバーになるかもしれないが、だけど根拠のない自信が背中を押している。迷わず進め。と。


 隻眼の猫達もハジメに続いて軽やかに入っていこうとすると、その時声が響いた。


「のわぁああっ!」


 騒々しい男の叫び声である。


 ハジメはピタリと足を止める。眉を顰めて、滅びた古代都市の遺跡のような荘厳さに紛れ込んだ異物の声に耳を澄ます。


 ガラガラ……ゴン。何かを崩し、何かにぶつかった音。それだけで落ち着きがなくて、ハジメの表情はどんどん曇る。

 別に落ち着きがある事を美徳とは言わないが、煩いのが好きかと言えば全くそんな事はない。それでも、ハジメはここに来てから初めて、自分以外の人物の存在を認識たのだ。気にならないのは嘘という物だ。


 ――何だろう? すごく気になるのだけれど、心のどこかで、本来、そう言ううるさくて落ち着きのなさそうな存在には関わらない筈の自分を思い出すのだ。


 音を追いたいような、無視してしまいたいような。 

 思考はクルクルとして、意味もなく手慰みに指をくるくる回して考えて、もしかしたら進んだ先で出くわすかもしれないと思う事にする。つまり、探す気はないけれど、偶然発見する事は拒否しない。そんな折衷案に落ち着いたのだった。

 しかしそもそも何処から聞こえてきたのだろう? 目を凝らしても耳をそばだてても、その存在はどこにも認められない。


 そう不思議におもっていると足元で『ナァァ』と鳴き声がする。


「あ、君達か」


 見下ろした三匹の耳がぴくぴく。そういう事かと少し納得する。


 彼等が得た情報は、任意、あるいは受動的にハジメの元に入ってくる。ハジメが知りたいと思った時か、彼等が伝えたいと思った時に、ハジメに彼等の見聞きした事が共有されるのだ。彼等の感情まで、伝わるときは伝わってくるのだ。この場に第三者がいるという情報は、当然ハジメに共有されるべき事だったのだろう。

 幻聴や聞き間違えではなかったと確信すると、その第三者がやはり気になってくる。


 同じプレイヤーだろうか?

 それともイベントキャラクターだろうか?

 あるいは、人間の真似をしてハジメを誘い込むような、狡猾な敵モンスターだろうか?


 なんだかんだ気になっているかと思いながら、ハジメは暢気に歩く。角では少し立ち止まったり、物陰を見つけては何かいないかを警戒したりと、基本的な動きは体に染みついているので、たまに襲い掛かってくる黒い鎧の騎士や、毒々しい黄色のスライムなどからの不意打ちは問題なく対処する事が出来ている。ちなみに戦闘をしてくれるのは三匹の猫達である。ハジメが何かしようと思った時には決着がついている。黒い鎧は黒い片目猫がエメラルドの瞳を輝かせるとバラバラになる。黄色のスライムは白い片目猫が欠伸をすると次の瞬間には体を灰に変えて消えてしまった。


「君達強すぎて私の出番ないじゃないか」


 ちょっとは自分に活躍の場を残してほしい。せっかく歩き通しから解放されて違う行動が出来そうなのだ。まだ長い長いオープニングの最中で、チュートリアルにすら辿りついていないという事だろうか。一昼夜掛かるオープニングなんて、クソゲーオブザワールドを狙えてしまうじゃないか。


 そんな諸々を思って苦言を呈する訳だが、なんとハジメに忠実なはずの三匹は、プイッと顔を背けて言う事を聞く気がないと意思表示をする。

 どうやら、主人の手を煩わせるまでもない雑魚は自分たちが対処するのが役割だ。という感情のようである。

 感情を言語化して理解してみると、言い分もそれなりに理解できてしまって、結局ハジメは苦笑いで許すしかなさそうである。


 それにしても、三匹にしてみれば雑魚との事だが、例えば黒い鎧の騎士は物陰に隠れているのがデフォルトで、不意打ちを必ず狙っているのがわかる。不意打ちが当たり前なんて、マホレコでは高難易度ダンジョンや、高難易度クエストに登場する敵だけである。相対的に、それほどの雑魚だとは思えない。ボス敵ではないリポップするモンスターであるという意味なのだろうか? だとしたら、マホレコでは最も凶悪と言われている野生のイノシシはどうなるのだろうか? ただの突撃で何度装備破壊をされてきたのか数えきれない。ゲームオーバーも繰り返した。ボスより強い野生のイノシシ。公式の悪ふざけ。あんな凶悪で狂暴で強力な敵も、コモンモンスター扱いで猫達が倒してくれたら万々歳なのだが。


 話が逸れた。結局一度も戦闘できず、ただ漏れ伝わってくる気配を辿って歩くだけでの時間が過ぎていく。


 すでに五時間近く歩いたから、ここが外れだったら最悪だという思いが多く過る。戻りにも同じだけの時間が掛かるだろうか。そんな不安が頭をもたげるが同時に、目的地に近づいているという確信は強くなる。ここのボスと思われる存在の気配は増す一方だ。この先に待ち受けているはずなのはこのフロアの王者なのだ。気配を隠す意味はなく、示威行為としてむしろ周囲に威嚇の気配を巻き散らすのが正しいのかもしれない。


 そんな王者の気配に隠れて、ほんの少し強い気配が三叉路の右手側に潜んでいる。なのでこの距離から――と思ったらやっぱり片目猫が始末してしまう。


「あーもー……」


 思わず嘆いて、でもそれ以上は文句も言わず、ハジメは更に歩を進めた。

 すると、この辺りから気配が変わり、ハジメの表情もやや引き締まる。猫達でもハジメでもない第三者によって殺害されたモンスターの死体が転がり始めたのだ。


「もしかして君達、この距離の音を聞き分けたの?」


 驚きとともに見下ろすと、三匹はどこか誇らしそうに耳と鼻をぴくぴくと。

 

「……階層跨ぎだよね。これ」


 床ではなく、天井に描かれたのは扉をモチーフにした魔法陣。マホレコでは『一方通行』や『階層跨ぎ』などと呼ばれていたトラップだ。床に書いてある模様を踏むと、落とし穴に落ちたかの様に吸い込まれ、そのダンジョンの下層に飛ばされるという代物である。言ってしまえば初級ダンジョンから最上級者向けダンジョンにまで、どこにでもある転移トラップである。


 ただ、九龍大迷宮クラスの巨大ダンジョンだと、その効果は凶悪なものになる。五階層下がれば適正レベルが十変わると言われるダンジョンにおいて、場合によっては百階層を超える移動を強制させられる事になる転移罠は人によっては絶望的な状況になりうる。

 もっとも、この状況を作った人物は、どうやらそれほど苦労はしていなさそうであるが。


 と、ハジメは少し広い部屋に散らばるモンスター達の死骸を見渡す。綺麗な刃物、あるいはそれ以上の切れ味で切り分けた様な断面で、飛び散った色とりどり体液からは想像しずらいが、無駄な動きのなさそうな戦闘の跡だった。 


 ただ、何匹かはまだ生きていて、痛みの中苦しんで生きているように見えた。


 ちょっとだけ、嫌だな。

 そんな風に思った次の瞬間、左足にまとわりついていた太っちょのブチ猫が短く一鳴きする。そして鳴き声の余韻が抜ける頃、全ての動きは止まっていて、音もなくなり、寒々しいまでの静寂が辺りを支配した。


「うん。いこっか」


 そうして再び歩き出す。三匹も、何事もなかったかの様に後に続く。


 次に歩みを止めるのは、ついに念願のボス部屋の前の事。

 モンスターとの遭遇率はぐっと減った分、遭遇する筈だったモンスターの成れの果て、その残骸はよく目にするようになっていく。幸いな事に殆ど死んでいる様なモンスターはおらず、発見するのは最後まで面倒をみた状態ばかりであった。ダンジョンのモンスターが苦しんでのたうったところでたぶんそこまでハジメはショックを受けないが、手負いの獣は危険だと言う太古からの格言もある事だし、虫の息の怪物の中を歩くのは嫌だったのだ。


 胎を掻っ捌かれて内臓の一部から何かを引き抜かれたモンスターたちを通り抜け、ハジメはその部屋に入る前で立ち止まる。


 理由は二つ。


 一つ。

 もう、ここは一歩進んだらボスとのエンカウントしてもおかしくない位置である。どこでボスと出会っても不思議ではない。ボス的ですら不意打ちをしてくるかもしれないと思えば、より慎重に、曲がり角事に、部屋の前ごとに、立ち止まるのは当然であった。


 そしてもう一つ。

 これはもっと解かりやすい。進行方向にあるその部屋にはどうやら先客がいるのだ。ここにやってくることが可能な程の強い気配。まるでここのボスの様に隠す気がない。ただ、隠す必要がないのではなく、隠し方が解らないだけかもしれない。ハジメも気配の消し方など、このゲームに迷い込むまでまるで分らなかったし、消せるとも思わなかった。自認としては最強であると、根拠なく思っているハジメでも、気配の消し方は言語化出来ないむずかしい物だった


 ただ、この先にいる人物は、どうやら自らの居場所を喧伝している様だった。


 白い石造りの通路。模様の刻まれた入口の淵。身を隠しながら耳をすまし、神経を尖らせ、中の様子を探る。

 

「――俺はただの社畜だよ。誰だってそれなりに社畜なんだ。心の悲しき獣に生活を奪われた、社畜なのさ」


 そんな独り言だ。随分ポエミーであり、恐ろしい独り言ではあるが、どうも、誰かに向かって話しかけている様な雰囲気もあった。


「心の畜生を飼い殺す為に俺はダンジョンに潜ったのさ」


 一体何を言っているのか。ハジメの感想は本当にそんなものだった。

 だが流石に推察する事はできる。姿を見せないように、きっとこっちを向いていないだろうと感じた気配を信じてちらりと見れば二十畳ほどの広さの空間にその姿が見えた。

 部屋の中央付近。胡坐をかいて座る背中。黒紫のカラーリングの物体が、無音でその周りを飛んでいる。何かの機械、具体的にはドローンの様に見えた。


 あのドローンが撮影用の物である事は推測できた。マホレコの配信動画ではあれを通した映像が良く使われていた。自視点の映像だと迫力が出る代わりに、多くの場合画面酔いを起こすという事で、第三者視点を体験できる撮影用ドローンが多用されていたのだ。


 ならば、後姿の彼はゲーム配信者であるのだろう。今はちょうどボス部屋前だという事で彼はここで視聴者に向けて語り掛けている最中という訳だ。


 ……めんどうくさいね?


 心の底からそう思って、三匹に同意を求める様に目線を向ける。


 すると太っちょのブチが部屋に入っていこうとし始めて、慌ててそれを尻尾を摘まんで引き留める。

 この太っちょ猫が何をする気かはわからないが、間違いなくあの配信者に何かちょっかいを掛けるつもりだった筈だ。

 ちょっかいの種類によってはマナー違反、下手をすればペナルティが発生するようなものだろう。ハジメはそれを良しとしない。結構、品行方正なゲームプレイヤーとして今まで過ごしてきた自負がハジメにはあるのだった。


 それに、大したちょっかいを掛けないにしたとしても、後姿の配信者が、撮影用ドローンを使って配信をしているというのなら、ハジメの姿が曝されてしまう可能性がある。


 このゲームが配信されているかは果たして疑問だが、可能性の話しならその確率は決して低くない。

 ゲーム内アバターである眼帯をつけた渋いオジサンではなく、本来の自分の顔である。顔が映るのは避けたい。SNSで話題になるのも、知り合いに見られてゲーマーだと知られるのも、恥ずかしいので本当の本当に嫌だった。


 内省する内に、背中姿の配信者の話は進む。

 

「おっ? なんだか視聴者も増えてきたな。誰か宣伝してくれたのかな……あ、酒呑ねぇさんか。ありがとうな」


 声を作っているな。

 そうハジメは感じている。

 良い声と言われるのを狙ったような、鼻から息が抜けるようなウィスパーボイス。

 それを一瞬格好いいかも知れないと言う気持ちになった気の迷い。

 三匹の一つ目がこちらを見て我に返ると思いなおす。

 評価は反転して鼻につく喋り方だとそう思う。


「じゃっ、まぁ、折角ここまで来たんだし、ここのボスに挑戦してやりますかねっ、と……いやいや、道に迷って死ぬよりは案外展望があるだろうぜ。運が良ければ、脱出の転移陣もあるだろうしな。皆、俺の無事を祈っていてくれよな」


 これを彼の芸風だと思えば、なるほど、少し面白いかも知れない。

 ボスに挑まなくとも、道に迷い続ければその内帰れるとは思うのだが、言っている事はその通り。やり込みが足りないなら迷路で迷ってモンスターに体力を削られてしまう可能性は非常に高い。


 ならば一匹だけと思われるボスを倒す方がシンプルで解かりやすい。少なくとも、迷い道という敵は存在しないのだ。折角ボス部屋に辿り着いたのだ。勝てる実力があるならハジメでもそのルートを選択する。


 声の余裕の具合からも、どっちであっても平気そうな雰囲気はあるけれど、さて、その結果はどうなるのだろう。などと思っていたら――。


「うぉっ! こえぇ! 死ぬぅっ!」

「……ええ」


 泣き声のような叫び。風切り音。岩が崩れるような音が立て続けに響いた。


「ちょっ、待っ、ああくそっ!てめっ、あっ、お、ね、が、いいいいっ」


 ……余裕はあるようだ。たぶん。

 面白枠のゲーム実況者なのだろう。負けても構わないし、勝ってしまったらそれはそれでどうにか笑いをとろうとしているのだ。ハジメには良く解らないが、世の中にはスベリ芸なるものもあるのだから、何が受けるかは解らない。


 とりあえず、様子を見るべくハジメも距離取りながらも待合室を横断する。


 この時、ハジメは本当に本気の隠密を意識した。足の裏に小さな砂利があって、踏んだら小さくズレて音が僅かになる事も、呼吸の変化で周囲の空調に乱れが生じる事も、全てを警戒して、気分としては体温すら空気と同化して、誰にも悟られないように、気が付かれないように、万が一にも、振り返られないようにして歩いていた。

 自身の呼吸と心音を同デシベルにまで落とし込み、推定ボス部屋に進んでいったであろう配信者の跡を追った。

 そうしてやってきた奥の部屋の手前。そこから声は聞こえてくる。


「あったまきたぞクソボール。お前はアレだ、俺のっ、バズりの、踏み台にしてやんよっ」


 ハジメは歩調を早めない。音も出さない。しなやかに歩き、静かに近寄り、動画配信ゲーマー青年が挑みに入ったボスの間を覗き込んだ。

 ボス部屋前の空間とは比べるべくもない大広間。テラコッタの壁と繁殖する黒い木の根。


 そこにいるのは、ハジメにとって既視感のある怪物。体中に世界各国の文字が刻印された大蛇。胴回り一メートルにも達しそうなそれは、宙に浮き、とぐろを巻き、歪な球状になった白い大蛇。文字は蠢き、時折変わり、文字の由来した災害級の魔力を巻き散らす。あれは、九龍大迷宮の九十階層のボスだ。身体の文字にちなんだ周囲一帯への攻撃を武器とする大蛇である。


 氷と書かれていれば辺りは冷えて、雷雨と書かれていれば大雨の中に紫電がほとばしる。その一面を掃くように攻撃してくる能力は厄介であるが、身体の文字によっては弱体化するし、そもそも書いてある文字で何をしてくるかが解かってしまうという致命的な弱点がある。


 今の蛇はその魔力で熱を放ち、自身の熱で溶けて体を融着させて、自壊しながら周囲を焼き焦がしている。あの形状の時、求められるのは遠距離攻撃か耐久戦だ。近寄るだけで火傷を負うし、そもそも生半可な攻撃だと武器が熱に耐え切れずに劣化してしまう。故に攻略方法で一番簡単なのは水の系統の上位魔法を使う事。できないならば、ひたすら攻撃を躱し続けて逃げ続け、自己中毒的な自壊を待つのが正攻法だ。


 そんな球状に丸まる蛇の怪物の尻尾を躱し、余波で巻き起こる炎も躱し、青年は必死に走っていた。汗をかきながら、全力疾走している。必死の形相ながら、どこか引き攣った笑いに見えて、危険を楽しんでいるかの様な、ある種の歓びを感じているかのようだった。


 ハジメは悩む。

 ここにいるからにはダンジョンに挑んでいる人物だ。配信までしているのだから戦う覚悟だってある事だろう。

 これはゲームで、死んでしまってもやり直しが利く。是非とも理不尽な敵の洗礼を受けてもらいたい。そうする事でゲームは上達するのである。


 だが、ずっと心にある引っかかりが正しければ、死は取り返しのつかない事なる。軽々に見捨てるという選択を選ぶべきか、そこに悩みが生じてしまうのだった。

 

「お遊びは、ここまでだぜ。クソボールっ!」


 悩んでいたハジメだが、雄叫びと同時に、空気が変わるのを感じ取って安堵の息をつく。

 青年は振り回される蛇の尾を再び躱し、スライディングする様にして体制を立て直していた。


「出し惜しみは、なしとしよう」


 巨大な球体が裂ける。それはドラゴンがその口を大きく開いたのだ。そこから放たれる高温の炎が、空気の破裂音を上げて闖入者を襲う。

 それを無視する形で、さえない風体の、目の下に隈がある青年は掌に魔力を込める。

 両腕の筋肉が筋張って、青年は目の前の空間に爪をたてるようなポーズになった。


「裂けろっ! 裂けろっ! 切り、裂けろっ!」


 空間に亀裂が入る。その現象は概念としてのずれとでもいおうか、世界が紙で出来ているとして、描かれた物質を掌で破くような、そんな現象。ハジメは感覚的に解るが、それはあのドラゴン程度なら容易に殺すだろう。鋼鉄と同じだけの耐久力とゴムの様なしなやかさを兼ね備えている筈だが、そういう次元の攻撃ではないのだ。分類でいえば、魔力の攻撃であるから、魔力耐性がなければどうにもならない。


 ほら、青年に襲い掛かる炎は左右に分かれ、開かれていた蛇の口が今度は縦に裂けて十字に分かれていく。

 瞬く間に縦筋は球体を完全に切り分けて、まな板の上のトマトの様に、開けて落ちた。


「ふふふ、ふははははっ、どーだ見たかクソボール! えっ? ちょっと待て。ヤラセって。お前さてはエアプだな? いやいやいや。合成って。いやいやこっち死にかけて、切り札まで使ったの。おわかり? あーそレスバするか? ああん?」


 勝利の余韻に浸るも、すぐさま近くで飛んでいる濃い紫の機体に向かって怒鳴り始める青年。口調は品がなく、それでいてどことなくコミカルである。どことなくどこかの誰かさんに似ている気もしなくもない。いや、どこが似ていると言われたら、まるで言語化は出来ないのだけれど。


 心が彼に話しかけてみたいという感情に囚われ、そして――


 にゃー。猫モドキたちが囁くように鳴いた。

 

「違うね……それはないよ」


 自分の心に去来した不気味な感情を、独り言一つでねじ伏せた。賑やかな言動、コミカルな動き、たぶんそこそこ強い。磨けば光りそうな顔に、少し高い身長。嫌う理由はないけれど、もちろん好く理由も声をかける理由もない筈だ。ダンジョンに出会いを求めていないし、そもそも出会いを求めていないのだ。偶然顔を合わせてしまったなら話位するかもしれないが、見ず知らずの男性に積極的に声をかけるのは何か抵抗がある。


 ここがゲームだとしたら、結構しっかりとしたイベントが発生しそうではあるが、それはどうやら好みではなさそうなのでキャンセルする事を決める。


 その瞬間だ。


 このイベントを無視すると思った瞬間。関わらないと心を確定させた瞬間である。ハジメの身体は強い疲労を感じた気がした。


 インフルエンザにかかって熱が最高潮。それでも無理矢理歩いた時の様な倦怠感である。


 少しふらつく足。そんなタイミングを見計らったかのように背後には、殺気を伴わないスライムが迫っている。このままでは襲われるのは確定だ。


 流石にこの階層の敵に襲われて、無音を貫く事はできそうにない。

 だというのに、それに対処するだけの余裕は今のハジメにはなかった。

 だから、倦怠感と向き合う。たかがイベントキャンセルごときで変なペナルティを与えられてはたまったものではない。


 倦怠感に身をゆだねる事はなく、声を上げる事もなく、ただハジメは首を振る。うるさいな。心の中の聞こえない声がうるさい。うるさい時は、ミュートに限る。


 ニャー。


 ……そうと決めるとどうだろう。

 さっきまでの強烈な倦怠感はなぜか消え去った。

 そして、ハジメに忍び寄っていたスライムは黒猫の尾がぺしりと叩いて核を叩き潰していた。


「だーかーらぁっ! 梅田のダンジョンなら踏破済みなんだよ……ん? 二十階は掌の群れだ。真っ青で腐ったみたいな色の。五十階? 首がない牛だよ。蹄が炎で足跡燃える奴な。最深層は――おめぇら見た事もないのに嘘とかいってんじゃねぇぞエアプども!」


 ほぅと深呼吸をしていると、でかい独り言が聞こえてくる。


 ちなみに彼が言った梅田ダンジョンの内訳は、正解だが正解だと口を挟むつもりはない。ネタバレは良くないし。


 もはやすっきりしたハジメは様子を見る気もなく、物音を立てないように踵を返す。片目猫の一匹が興味深そうに見つめるのを心の中で窘める。めっ。見ちゃいけません。


「あん? 人がいた? ここにかよ――いや、いねぇって。っつぅかここを何処の何階だと思ってんだ? ってか、何処の何階なの?」 


 おっと、さすがにあのタイミングで姿を見られた? 彼ではなく、彼の周りを飛んでいるあのドローン。広範囲を映すカメラにハジメが映ったのだろう。


 見つかってしまったら仕方がない? いや、そんな訳ない。

 ほかの部分で音を立てる等して、なんとか気を逸らせないだろうか。いや、下手に動くと藪蛇か。


 息を秘め、三匹を足元に集めて、ついでだから使えると信じた隠蔽の魔法を使用する事にする。


 存在――希薄。

 色彩を参照――壁。

 種類――触覚不要。

 意識誘導――デコイの虫。

 規模――人類災害。却下。修正――小規模認識災害級。妥協。

 既存目撃者――攻呪術的攻撃により殺害。却下。修正――海馬一部破壊。却下。修正――放置。


 なにやら最後は猫達が少し介入しようとしてきたが、それは流石に許さない。

 

「そこに誰かいますかー? 返事しないとそっち行きますよー? ……ほら、いねぇって。あん? 踏破したっての。あー、じゃあ俺の言っている事がほんとだったらお前ら赤スパ投げろよ? ここを出たら達成報酬みせてやらぁ」


 一度近くまで来た青年は、随分と念入りに周囲を見渡し、物陰まで確認し、頭上を一瞥。そこに魔力で隠匿されたハジメを見ないで踵を返して元の場所に戻っていく。遠ざかる気配。ハジメの耳ですら足音が聞こえなくなる距離。そうとなってやっと一安心であった。


「――それにしてもやっぱり変だね、ここ」


 にゃーん。


 猫の返事が可愛らしい。

 自分の内面に訪れた理解不能の感情の動きと、体の倦怠感。ハジメはこの二つを疑問に思う事もなく――いやおかしい。


 ハジメはこの二つを疑問に思いなおした。このゲームは、内面と体に影響を及ぼしている。

 しかも、自身の感情に沿わない形のストーリーを強要しようとしているのだ。その強制力はそれほどの物ではなく、そうしたいなと思ってしまうだけの物だが、気を抜くと気持ちが誘導されている。そして逆らうと少し疲れてしまう。ちょっと想像するだけで、これはかなり危険な、犯罪にも流用できる洗脳ゲームであると言わざるを得ない。

 ログアウトした暁には、必ずやこのゲームに報いを受けさせなけばならないが……さしあたって何とかしたいのは今である。


 中々にえげつない洗脳効果があるようではあるが、ハジメが自由意志を強く主張するとレジスト出来るようである。これまでの経緯でそれは解ったので……と、青年がボスを倒した結果、ボス部屋の奥のエレベーターが解放されたようだ。重たい歯車が動く様な、物々しく軋む音が鳴り響く。


「おお……、エレベーターだ。ラッキー。見ろよ自動で帰れるタイプのダンジョンだぜ? マンハッタン以来じゃねぇの? ほら見ろよお前らこれ見てもまだ合成とかほざくのかよ?」


 言いながら、カチカチカチカチ……とボタンを無意味にせわしなく連打している。気持ちはわからなくもないが落ち着きがない。と評価する。


「ここは何階だ? 絶対に高難易度だな。前人未踏だろこれ」


 確かに高難易度だ。九龍大迷宮の五十階から下は完全なやり込み要素。ゲームクリアには関わらない部分である。だから、ここのボスキャラクターを倒せるならば、十分ゲームイベントはこなせる実力があるという事である。それは、マホレコ全プレイヤーの上半分に入るほどなのだから、充分である。


 エレベーターの箱が下りてくる音がする。これで青年は帰っていくだろう。

 そうしたらハジメも時間を空けて利用しよう。なら、しばらくは一休みだなと気を抜いたところで――青年が振り返って部屋の中央まで戻ってくる。


 すわ、こちらまでやってくるか。こちらに気が付かれたか。内心驚いて隠密行動を思わずとってしまう。

 

「ちょっと巻き戻して見て来いって。転移罠踏んでるからよ。リスナーどもの名前アンチにしてやろうかな……だめだこいつら喜ぶだけだ……あ、青姫さんいつもお金ありがとうな」

 

 ぶつぶつ言っている。飛び上がって天井付近の出っ張りに指を引っ掛けているものだから、もう中は見えないが、これ以上こちらに来る気配はなかった。


 ここで姿を見られたら面倒くさい事になる。おそらく未だ誰も到達していない領域に現れる『巨乳美少女』なんてネット民の玩具になるのは必須であるし、そもそもまだそこにいる青年に合う心の準備が出来ていないのだ。


 血溜りの上を歩く足音がぴちゃぴちゃびちゃ。

 血の上を気にせず歩くのはダンジョン攻略者の嗜みだ。ハジメもそうありたいが、あのデフォルメされた世界ではなく、設定以外の全てが現実のこのゲームでそのメンタルを保てるようになるには、少し覚悟が必要そうだ。などと思っていると男の独り言、或いはリスナーへの語り掛けが聞こえてくる。


「ドロップアイテムは、……これは魔石か? うお、あちっ、これ熱いぞ? 血は……一応持って帰るかね。お前ら他に何もって帰ったらいいと思う?」


 なるほど、勝利の報酬を彼は求めているのだ。気持ちはわかる。

 でも、ボスドロップはあとは骨と鱗だけの筈だ。肉と皮を剥ぐ道具を持っていないなら諦めた方がいいよ。そんなに価値もない筈だし。


 火を巻き散らすタイプになったあの蛇の魔石は酸素濃度に比例して強力な熱源になる。たぶん珍しいから、それをもってさっさと帰ってくれないかな。ハジメは目を瞑って少し焦れる。

 すると足元の片目猫達の意思が何となく感じ取れてくる気がしてちょっと驚く事になる。


 ――殺す? 

 だめだよ。


 ――食べちゃう?

 だぁめ。


 ――おっぱらう?

 ほっとくの。


 ハジメがまるで逃げる様にして身を隠すものだから、心に単語で聞いてくる物騒な片目猫達。ちょっと冗談が通じない彼等三匹をハジメは優しく宥めた。


「頭蓋骨ぅ? 二つに割っちまってるんだが? まぁいいかな……ほんじゃとりあえず、持って帰りますか」


 湿り気のある、スイカの玉を容易くつぶしたようなじゅくりとした音。見てはいないが、鋼の肉体を持つ大蛇を殆ど液状になるまで細切れにしたのだと推察が出来る。これには素直に驚く。かなり練度の高い技術だ。どうやら、肉は潰して骨と魔石は潰さない。そんな絶妙な力加減が出来るほどの熟練度があるらしい。


「案外小さいぞ。んじゃ、今度こそ帰るか。お前ら、絶対チャンネル登録ぅ、よろしくお願いします」


 部屋の中央で、青年がアピールをしたのはそれから三分後の事だった。

 声も気配も運命も、遠ざかるのをしっかりと見送ってからハジメは地面に降り立つ。


「賑やかだったね。でも……ちょっと元気過ぎて、私は疲れちゃうかなぁ」


 苦笑いとはまさにこの事である。嫌う程ではないけれど、だけど本当なら苦手意識すら抱くほどだ。話したら話したで、少し位は面白いのだろうけれど、なぜあの青年に話しかけてみたいという欲求を抱いたのかは、きっと永遠の謎なのだろう。

 

「……つくづくリアルだなぁ」


 すっかり静まり返ったボス部屋の中央までツカツカと歩く。肉片はまだ残り、余熱でむせ返る。

 靴で踏みつけた血の跡はぬるぬるしていて、臭気を放っている。油断したら足をとられて転ぶかもしれない。片目猫達は触れるのを嫌って少し離れた所に遠回り。


 こんなにリアルな世界観だと、ちょっとした感情の変化も自分の自由意志に依る物だと思い込んでしまいそうで、それがハジメにとっての問題だったのだ。 

 ここまでの経緯で洗脳じみた脅迫観念は回避できることは解っている。だが気を抜いたらまた洗脳される可能性があるというのなら、ずっと気を張り続けなければならない。それでは流石に心が休まらないし、不安が残る。


 ならば。と、ハジメはスッと目を閉じる。


 語り掛けるは心の中。

 願う先は自分と、自分の為にだけ生まれた眷属たち。

 今、彼等は三つ巴でじゃれ合っていたのをやめて、顔を上げてハジメを見つめている。

 君たちも、私を守って。

 誰の物でもない、私は私だ。雑音は、いらない。

 イメージするのはハートを守る堅牢な城と、敵を食い散らかす宝石の瞳を持つ怪物たち。

 絶望の巨体、夜の六つ脚、白い霧。

 未開の森よりも恐ろしく、夜の海より底なしで、盲信信者の神話よりも神々しく、あらゆる悪夢を寄せ付けないのだ。


 もちろん、片目猫達の頼もしさを表すイマジナリーだ。

 この精神防御は果たして可能か? 出来るか? 出来る……。


 にゃー。なー。がお。


「……出来た」


 呟き、薄く目を開けたと同時。よろけてしまうほど凄まじい倦怠感に襲われたが、それすら受け入れると強く意識する。片目猫達が主人の様子心配そうに見つめると再び鳴き声三つ。額からの汗のすさまじさが、ハジメの体調変化を如実に表していた。でも、高熱が引いたような爽快感に満たされている。引き算状態からのゼロに戻った気分。ちょっと癖になりそうな爽快感であるのは困った気分だ。


 なにはともあれ、ハジメの試みは成功を確信した。片目猫達が一匹でもこの世にいる限り、ハジメの心は守られるだろう。何人たりとも、ハジメの自由意志に干渉する事はできない状態を猫達は確約してくれている。そういう確信があった。


「君達、本当はもしかしたらこのゲームに存在しない?」 

 

 問いかけると、三匹は首を傾げる。言葉なんて知りません解りません。そんな顔して惚けている。

 このゲームの目的が感情操作なら、その目的を阻害する猫達の存在はおかしい物なので、もしかしたら彼等はバグや外部からのウィルスの可能性も考えられると思ったのだが、答えてくれないというのなら、そういう物だと今は割り切ろう。


 何はともあれ、憂いのなくなったハジメの足取りは軽くなる。

 ハジメは気分良さそうに笑い、飛び散る血肉を抜けてエレベーターへ。

 

「さぁて、私にエレベーターは使えるかな?」


 ボタンを押してみるけれど、反応はない。

 やはり、ここのボスを倒さなけれなならないらしい。あわよくばさっきの彼が倒した場にいた事を理由に免除してくれたらと思っていたが、そうは問屋が卸さないということか。


 もしかして、またボスが復活するまで待たなければならないのだろうか。


 唇を尖らせて文句を垂れる動作をするその前に、背後で何かが蠢いた。

 血が盛り上がり、失われた魔石と骨がどこからともなく補填されて、まだ長い大蛇が生まれていく。

 巻き散らされた血と肉の欠片は煙になり、その煙は文字の形を象り、ゆらゆらとしながら一か所へ。


『戯』『天』『士』『夏』

『魑』『魎』『双』『夫』

『火』『不』『春』『羅』

『不』『下』『岸』『不』

『老』『無』『万』『木』

『遜』『水』『象』『当』

『土』『金』『冬』『死』

『傲』『魅』『無』『双』

『森』『魍』『不』『万』

『国』『死』『秋』『亡』『遊』


 様々な文字の形がぐるぐると。

 集まり骨を作り、肉を作り、皮を作る。

 時間の経過とともに丸くなるのは知っている。大蛇であるときの方が果たして強いのか、それはちっともわからない。


 だって、例えば球体になる前の方が倍強くても、ハジメのスケールでは測れないからだ。

 最低一メートルを測るモノサシは、一ミリが百ミリになってもわからない。そんなものなのだ。

 とりあえず、復活したボスモンスターは運が悪い。

 

「弱い者いじめになっちゃうけれど――グッドバイ」


 最強は振り返った。 

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