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五分前仮説のブランニューワールド  作者: 幾楽あくた


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未来シコウのチートデータガール 4


拝啓、立秋の候、貴社におかれましては益々御清祥のこととお慶び申し上げます。


平素より第三世界をよりよい世界へと導こうと、格別のご配慮を賜りまして厚く御礼申し上げます。私は第三世界に長く拠点を置く市民支援団体『お祭り騒ぎ』の代表を務めておりますシャクダマと申します。本日は貴社の計画している短期運命論について、ぜひともご検討いただきたく、お願いの書面をお送りする次第です。


貴社は現実改変や物理法則改変を得意とし、万に届く世界を作り、改変してきました。その全ては、貴社の人類の可能性を知りたいという、人類愛に満ちた崇高なる理念のもとである事は重々に招致しております。この理念に我々も賛同し、勝手ながら、世界改変の際には微力を尽くし、世界のパワーバランスの調整を行ってきたと自負しております。


先だって実装が決まったアバター制導入にしても前向きに検討し、協力体制を取る決を出しております。


しかし、この度の貴社の実行しようとしている短期運命論は、人類が歩むべき人生にレールを敷く事になります。これは、人類の可能性の幅を狭める物であり、あらゆる青春は融通無碍であるべしと考える我々の考えと相反するものとなります。そしてまた、貴社の求める自分たちを驚かせてくれる愛すべき人類の発生率を著しく損なうものであります。


先日開かれた、当方主催の達磨市の夜に、未来観測がなされた事を、私共は酷く懸念しており、この度は筆を執った次第でございます。


未来の出来事でありますから、今から議題に上がる短期運命論について私が言及するのは大変不快な思いをなされるかもしれませんが、レールが敷かれた世界であるならば、この様な先手を打つと言う手段もまた可能であるという次第でございます。


世界が貴社の望み通りに発展していくためには、貴社の望む道筋を強制しない事が一番の正道であると考えます。突然のお便りで恐縮ではございますが、なにとぞご一考いただきますようお願い申し上げます。


 草々

 お祭り騒ぎ主催者 シャクダマ



「えー。この人どうやって僕たちの会議室に手紙おいたの? 怖いんだけど」

「ワッ君が怖がるとかすごいじゃん」

「お祭り騒ぎやろー? あすこのシャクダマって奴、絶対私達に届いてるんよ」


 ワンダフルワールドは今までに、数多の世界を作り出してきた。

 魔法が栄えた世界。科学が栄えた世界。両方が栄えた世界。サイバーパンクもスチームパンクも、アポカリプスも、思いつく限りの世界を生成し、弄んできた。

 中には失敗作もあり、修正するのが面倒くさくなって放置したり、破棄したりしてきた。

 印象的な世界の事は覚えているし、今も定期的に観察しているし、中にはメンバーが入り浸っている世界だって存在する。


 七十七個目の世界、もう終わらせてしまったつまらない世界があった。そのつまらない世界の中で、産声を上げたのが現実改変集団『お祭り騒ぎ』である。彼等は自分たちの世界が詰まらなかった事を知っていた。成長しない文明。過去を守らない文明。新しさを求めず、伝統を捨てて、何もない世界だった。文明の停滞の末に、ワンダフルワールドに見捨てられ、管理を放棄され、最後は白い闇と共に無になった。あの世界から脱出したのはお祭り騒ぎのメンバーだけ。


 そんな彼らは様々な異世界を渡り歩き、やがてワンダフルワールドが特に気に入っていた第三世界に辿り着く。

 むろん、ワンダフルワールドは全員がその動向を把握し、そして許容した。


 ワンダフルワールド自身が今まで多くの異世界の超常者を第三世界に送り込んできたからというのもあるが、お祭り騒ぎの思想は比較的ワンダフルワールドとの相性が良かったと言うのが大きい。


 お祭り騒ぎはこの世界を正しく遊び場として捉え、エンターテインメントをどう成り立たせるかを真剣に考えている。地球位なら一瞬で滅ぼせるだけのポテンシャルを保持しながら、現地のスケールに合わせて力を誇示しない。歓迎すべき理想的な移住者だったのだ。


「てか、まだ改変してないのに未来予知を実践するとか……そのパラドックスで満足しろってことかなぁ。あーやだやだ。僕達に意見してあまつさえ要求するなんて、何様だよ。まったく」

「と、めっちゃ嬉しそうに困るワーさんである」

「ワッ君こういうの大好きだよねー」


 どこの世界で流行ったのか解らないが今ハマっているソーシャルゲームをいじりながらノースリーブのサバサバ美女が言い、からからとピンクブロンド色の髪の少女が笑う。

 

「それは好きさ。でもさ。お祭り騒ぎはあざといよね。解りやすく僕等の好みにさー」

「だってわかりにくい好みとか好みじゃないもんねー」

「それでもきちんとワーさんの興味引くんだから大成功やん」

「え、君達どっちの味方?」


 聞いたところでそこは無視される。ワンダフルワールドの頭目の扱いなんてそんなもである。


 ワンダフルワールドを立ち上げたのは、ワーさんとかワッ君とか呼ばれる彼である。

 初めは一人だった。

 孤高だけれど、孤独ではなかったと思う。

 無限に世界を作れると解かり、いろいろな世界を作ったものだ。初めに剣と魔法の世界を作り、次にパラレルワールドを作り、次々に自分が面白いと思う世界を作っていった。

 成功もあれば失敗もあった。原始時代のままの世界もあったし、栄え過ぎて宇宙の支配者を作り出す世界もあった。

 マンネリを感じて、世界を作るのに飽きた頃、一番初めに気合を入れて作った剣と魔法のファンタジー世界に賢者が現れた。世界が個人によって作られたと気づくのみならず、少年へコンタクトを取り、無視されるや否や、自ら少年に会いに来た。

 少年は驚き、しかして歓迎した。自分に会いに来る事が出来る魔法使いに敬意を感じたし、自分を超える発想に感動すら覚えた。


 この感動を絶やしたくない。かけがえのない体験を繰り返したい。繰り返す内に、少年に会い、志を共にする人物は増えていく。ワンダフルワールドはそうして出来あがった。


 確率は数百億人に一人。何百と世界を作り出して集まったメンバーは十二名。これからも増え続けるだろうが、何百億人に一人の逸材達は、皆出会った瞬間から少年と対等だった。そして少年は性格的に偉ぶらず、ふざけておちゃらけた態度が基調なものだから、悪い意味で軽んじられ、いい意味でも気安く話しかけられている。そしてそれを望む少年は、世界を作り続けてやっと友人を手に入れたという形になるのだった。


 結果、鋭いツッコミはあるし、惚けても情け容赦ない追及がある。そして頭目として祭り上げられて、少年は孤独どころか、孤高ですらなくなっていたのである。

 と、それは関係のない話である。


「お祭り騒ぎって言えば、下部組織が一つ、グッバイワールドと喧嘩して負けていたなぁ」

「負けてたねー。愉快なキモオタ君たちだったのに、惜しい人を亡くしたねー」

「そうなん? ウチの守備範囲じゃないから確認してへんかったなぁ」

「うん面白かったよー。初めはどんどん追い詰められていって、でも最後の最後でグッバイワールドに思いっきり噛みついた。それでも全く敵わなくて完全敗北。彼等は笑って死んでいきましたとさ。でも最後の最後まで意地を張って、リアムっちに心の敗北感を与えてやったのはもう大感動! って感じで」

「うぇ。グッバイワールドって、リアム!? それはリアルタイムで見たかったわぁ」


 勝つばかりだから負けの美学は眩しいのである。実に気持ちが良く解ると少年は頷く。


「あの下部組織って、第三世界出身だよね?」

「だねー。あのグッバイワールドに一泡吹かせるなんて、本当に第三世界はビックリ箱って感じだよー」


 ピンクブロンドの髪がぴょこぴょこと。本当に楽しそうに嬉しそうに揺れる。

 彼女の言う通り、第三世界は予想外と予定外が連続で発生するワンダーランドだ。 


 勘のいい連中が次々と、ワンダフルワールドの存在に気が付いたのがまずおかしい。存在に気付くだけでもいくつかの世界に一人いるかいないかなのに、何十もの団体が認識している。目の前にやってくるほどの逸脱者こそいないが、いつかワンダフルワールドの元にやってきそうな人間の発生率がダントツに多いのだ。


 どうせ気が付かれているのだからと、ワンダフルワールドから情報発信をするとなぜかそれが受け入れられた。


 そのうち想定してない魔法が次々と作られた。

 魔法の発展が科学の発展を妨げていないのが意味不明だ。


 ワンダフルワールドが悪ふざけで導入したマジックアイテム、呪物、を徹底的に改造して遊んでいる団体が現れ、『白紙社』が頭角を現した。


 作られた神々を捕獲して解体して、実験し続ける『マキ異教』がワンダフルワールドを崇拝している。


 ワンダフルワールドの技術を的確に理解し、自社製品に昇華させてしまう『有村技研』が技術革新を続けている。


 転生者と転移者をまとめ上げてやがてはワンダフルワールドに逆襲しようとする『転がり同盟』が堂々と幅を利かせている。


 生まれ持った才能を使って全力で悪戯、あるいは無駄使いしようとして次々と新技術を発見する『ダ・チープ』はいつだってワンダフルワールドを飽きさせない。


 ワンダフルワールドに直接交渉を持ち掛け、オーバーテクノロジーアイテムや、オーパーツを専売する『トム&ジョージズマーケット』が最近になって有村技研の商品を逆に売り込もうと異次元に向けて電波を放ち続けている。


『ブレイバーズ』に至ってはなんのつもりか世界の治安を守ると言ってワンダフルワールドを敵視している。ワンダフルワールドは悪魔、魔王という位置づけらしい。悪魔も魔王も格下だが格好いいので満足だ。


 それらの企業、団体を金銭的に援助する『シルバーシップ・ファイナンシャル・グループ』はいつだって投資先を間違えない。彼等の暗躍がこの世界の成長を下支えしているのは間違いないだろう。


 そういった、面白強豪が犇めき合っているのがワンダフルワールドが愛する第三世界だ。


 予想だにしない奇跡が必ずおこる。


 ワンダフルワールドですら手を焼くグッバイワールドという組織に対して、全滅したといえども一矢報いる団体が現れた事は驚嘆に値するのだ。まさに、ビックリ箱を開けてびっくりさせられた気分だった。びっくりすると解かっているのにびっくりさせられるのだから、本当に大したものである。


「七人のオタクにまさかグッバイワールドがしてやられるとはね。本当に面白かった。ぜひミーさんにも見てもらいたい」

「見とくわ。だからこれ以上はネタバレ禁止よ?」

「あいあいー」


 人の生き死に。それどころか自分たちへ実害を及ぼす敵対勢力の諍いすらも、彼等ワンダフルワールドにしてみればただの娯楽だ。


「あーでもね。でもね。でもでもね。グッバイワールドの話はしなくちゃだよー」

「なんかあったん?」

「あったあった。あいつ等、ちょっと本気で動いてたよー」

「本気?」

「アバターの件でごねてたじゃん?」

「めっちゃね」

「その場にいないのに僕の顔に向けて怒鳴られているようだったなぁ」


 しみじみと、あの時の怒り狂ったグッバイワールドの面々を思い出す。もしかしなくとも、様子を覗き見ていたのはばれていたのだろう。それも含めて、だからこそ、烈火のごとく怒り狂っていたのだと思う。ちょっと笑ってしまった事すらばれていた可能性があるので、彼等の怒りは正当なものだったかもしれない。


 グッバイワールドは強力過ぎて世界を壊しかねない団体の筆頭である。彼等がいるからこそ、放任主義のワンダフルワールドが、他世界出身の個人、集団が第三世界に滞在する際に制限を設けざるを得なかったほどだ。


 ワンダフルワールドたちが呼ぶのはなんだかんだと言って、生態系が崩れないギリギリの範囲の異世界人。第七世界や、百二十世界等で育ってきた、少しばかり才能のある異世界人だ。彼等に関しては制限しない。

 だが、自主的にやってくる異世界人には制限を設ける。山を消し飛ばすほどの力が使えれば圧倒的世界最強の世界なのだ。そんな世界観の所に星喰らいや、ストレンジレット・マイスター等が紛れ込んだらバランスブレイカーも甚だしい。そもそも次元を渡り歩ける時点でほぼ全ての世界においてオーバースペックである。繊細に作り上げたドールハウスにハムスターを解き放つような暴挙は、さすがにワンダフルワールドと言えども見過ごすことの出来ない事だった。


 だから、その気になれば地球を一瞬で土くれに変えられるグッバイワールドを始めとするいくつかの団体に制限を掛けたのだ。


 初めは第三世界での活動においては力が百分の一になる様に、それでも駄目だったから第三世界の物理法則に従うように強制した。それすら努力で抜け道を見つける物だから、ついに先日、指定された団体は全て本人ではなく能力上限制限が設けられたアバターを使用する事を義務付ける事を決定した。流石にあまりにも不公平だと思ったものだから、即時執行ではなく、制限の導入に猶予期間を設けるほどには乱暴な決定だった。


「でねでね。もういいってさ」

「あら引き下がったん? 意外やね」

「絶対に許さないって決めたってさ」

「いやめっちゃ怒ってますやん」

「ワールドシリーズ殲滅計画を断行するってー」

「めっさ怒ってはるやん」

「えー。やだ関連性が解らない」


 少年は真剣な顔をして頭を抱える。ただ、抱えた後はもう耐えられないと顔を笑わせている。


「自分達の力がこれ以上制限される前に、なんとしてもって感じじゃないかなー」

「しょうがない奴等だなぁ」


 さすが意味不明団体の代表格。なにがなんでもワンダフルワールドに牙をむくその姿勢が本当に大好きだ。


「ワッ君どうする?」

「対抗するか、放置するか。やね」

「ルールにはのっとっているんだよね?」

「絶対きょーせーなのにルール違反ってどうやるのー?」

「そもそも抜け道見つけてたらこっちの落ち度やん?」

「ルール通りだよねぇ。……本当におっかしいよねぇ。まいっちゃうなぁ。飽きたとか言っている暇がないのどうなっているんだろ」

「ねー」

「ほんまそれ」

「対抗かぁ。んー。どうしよかな」

「ワッ君のお気に入りも、爺のお気に入りも、ブックやんのお気に入りもみーんな狙われているみたい」

「狙われて負けるのは仕方ないんだけど……皆殺しはすこーし面白くないな。どうしようか。未来を確定させるのは……釘を刺されたばかりだなぁ」


 腕組みをして、目を瞑り、真剣に知恵を絞りだそうと唸る。


「……僕ってさ。人の気持ちわからないじゃん?」

「うん」

「無理やね」

「僕が考えても無駄と発覚しました。全員集合して貰います!」


 こうして、数週間ぶりに全員集合の大号令がかけられる。


 議題は『異世界組全滅を阻止するかどうか』に始まり、あれよあれよと決は出て、いつの間にやら主題は『実力者や特別な人物、怪物に対する二つ名』にすり替わる。言ってしまえばいつもの事である。喧々諤々となったこの議題、どこかの誰かにバッドステータスという名がつけられたとかなんとか。


【NEW】二つ名と渾名システムを導入しました。

【NEW】序列、格付け好きの募集につきまして。

【NEW】偽伝承の承認につきまして。

    一人称の多様性と強制力の上方修正を実施しました。

    一人称及び口癖による能力変化を実装しました。

    ヨガマスターを導入しました。

    伝承による概念的弱点を導入しました。

【重要】ワンダフルワールドはアイテムボックスを認めません。    

【重要】絶対運命論を一時凍結しました。それに伴い定期的未来観測を実施し雨を降らせます。詳細はこちらをご覧ください。

【重要】アバター使用の義務の適応範囲が広がりました。ご確認ください。



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