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雨の日には君を想う  作者: 柚月
本編
3/23

捨てる神あれば拾う神あり

 しばらく川沿いに歩いていると、ぽつぽつと小雨が降ってきた。

 どこか雨宿りするところがないかと探していると、古めかしい一軒家が見えてきた。

 白っぽい 漆喰の壁は陽に焼けて黄ばんでいて、ボロボロだった。

 もしかすると空き家かもしれないが、雨宿りはできるかもしれない。


 ゆらり。

 恐る恐る近づいた美月は、曇天の下、空き家の壁を通り抜けて半透明な黒っぽい影が、ゆらりと漂うように空中に出てきたのを見て


「でたぁ!」


 と、叫んで、ふらりと気絶した。

 美月はホラーが大の苦手であった。



「おーい、大丈夫かぁ?」


 つんつんと何かでつつかれる感触がして、美月の意識はゆっくりと浮上した。


「う、うぅーん……」


 仰向けになったまま目を見開くと、みずきの顔を覗き込むようにする、先ほどと同じ半透明の黒い影があった。

 半透明の体越しに向こうの景色が透けて見える。

 もう一度気絶しそうになる美月を見て、影の主は慌てて半透明の体を実体化させた。


「お、 おいこれでいいだろ?しっかりしろ。

なんたってこんな辺鄙なところに、一人でいるんだ?

それにその格好は何だ、見たことがない。

髪の色も目の色もここら辺じゃ見たことがない色だぞ?

なあ、名前は?」 

「 そんなにいっぺんに質問しないで。

頭がこんがらがってしまうわ。

私だって今何が何だかよくわかっていないのよ。」


 仰向けになった美月が起き上がろうとすると、 それを助けるように影の主はその背中に手を添えて 、支えてくれた。

 血圧が下がったのか、美月はめまいがしてきて、目元をとっさに手で押さえた。


「大丈夫か?水なら用意できるけど飲むか?」

「あ、ありがとう。」


 竹製の水筒を手渡されて、何の疑いもせずに美月はその中の水を口にした。

 入れたてなのか、よく冷えたおいしい水 だ。

 この世界に召喚されてから、ほぼ飲まず食わずだったことを思い出して、美月は夢中で喉の渇きを癒した。


「 よっぽど喉が渇いていたんだな、かわいそうに。」


 暫定幽霊と思われる影の主に哀れまれて、美月は何だか自分が情けなくなった。


 改めて影の主をまじまじよく見ると、若い青年であることに気づいた。

 元の世界基準で考えるのならば、ケルト系だろうか、彫りの深い顔立ちは整っている。

 黒く見えたのは、聖職者がよく着ている立襟の祭服であろう。

 着古してボロボロだが、何故か青年にはよく似合っていて、しっくり来る。


「 めまいはどうだ?

もしかして 病弱なのか?

崩れそうな家だが、そこの俺の家に来るか?」


 ずいぶんよくしゃべる男だ。

 見た目は20代前半に見えるが、精神年齢か実年齢はもっと下なのかもしれない。

 表情もどこか子供っぽくて、美月は思わずくすりと笑ってしまった。

 そして気付く。


「 え?今なんて言ったの?」

「 いやだから、俺の家に来るかと聞いたんだよ。

雨ぐらいはしのげるし。」

「本当 ?助かるわ。ありがとう!」


 思いがけず屋根のある建物に入ることができそうで美月は思わず、食いついた。

 探していた話が通じる人か、は、まあ、分からないが、この機会を逃す手はなかった。

よろしければ★を頂けると嬉しいです。


本作は短編「視線の行方」「聖女の瞳は輝く」と登場人物が繋がっているので気が向いたらぜひご覧ください。

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