嫉妬を知る
「もう、ヒースクリフさんったら、からかわないで!」
ヒースクリフからの、新婚旅行の際のノロケ満載な手紙を揶揄る軽口に、美月が恥ずかしそうに頬を染めた。
ただ、それだけなのに、面白くない。
他の男の名前を呼ぶな。
照れた顔を見せるな。
ーー閉じ込めたくなる。
昼寝をするフリをしながら、薄目の下でレインはそれを眺めていた。
オーレイア達を見送ると、昼寝から起きたのか、レインが美月の背後に立っていた。
レインが真顔でぼそっと呟いた。
「………なぁ、お前は俺のものだよな?」
無意識に、レインの両手が美月の首に伸びる。
目を細め、表情に暗い陰を落としながら、レインは美月を見下ろした。
力を込めるように、
いや、違う、
首を締めようとする狂気に抗う為に力が籠もり、腕に血管が浮かび上がった。
葛藤が、苦悩が、その冷たい手から伝わってくる。
「そうよ、髪の毛一筋でさえ、貴方のものよ。」
美月は首を締められそうになっても、欠片も恐怖を感じなかった。
圧迫感はあれど、苦しくはない。
レインはどんなことがあろうとも、美月を傷つけたりはしない。
真顔のレインだが、そのアイスブルーの瞳には、冷たい嫉妬と悲しみが同時に滲んでいた。
「不安なの?
私を信じてくれないの?」
「っ、!」
レインはゆるゆると脱力して、美月の首を解放する。
応えないレインを挑発するように、美月は彼を見上げた。
緊張して、脚が震えている癖に。
自分からレインに優しく口付ける。
「……煽ってんじゃねぇよ。」
レインは舌打ちを噛み殺して、美月の両手首を纏めて掴むと、壁に縫い付けた。
もう片方の手を後頭部に回して固定し、引き結んだ口をこじ開けるように舌をねじ込む。
「今夜は眠れると思うなよ。」
息切れをする美月は、レインから押し付けられる熱に目を潤ませて頷いた。
神でも嫉妬するのかって?
さあ。
存外神っていうのも、元は人間だったのかもしれないな。
ワンシーンだけ書きたくて、番外編でした。
ありがとうございました。




