人ならざるモノは知る
深夜。
美月は、左手の薬指にはめた指輪を、じっと見つめていた。
淡い、透明に限りなく近い蒼の石。
月明かりに光る、永遠の愛を誓う石。
「ん……美月、起きてたのか?」
目を覚ましたレインが、上半身を起こした。
軽く頭を振った後、美月を抱き寄せて耳朶に口付ける。
「っレイン、くすぐったい。」
「……何考えてたんだ?」
腕から逃れようとする美月を逃がさず、耳元で囁く。
抱きしめてくる腕が気持ちよくて、美月は逃れる事を諦めた。
尋ねてくるレインの胸に頭をよせて、美月は答える。
「貴方にも、私の瞳の色の石を使った指輪を渡したくて。」
「俺に?」
「ええ。」
レインの頬に手を当てて、じっと見つめて、続ける。
「結婚指輪は、お互いにつけるものなの。」
愛する人の瞳の色を身に着けるのがこの世界の風習なら、紅いルビーの指輪をレインに贈りたい。
赤い色の石なら、まるで運命の赤い糸を連想させられる。
密やかな美月の気持ちを伝えるのにちょうどいい。
美月はいつか、永遠の命を持つレインを置いていってしまうから。
忘れないで。
言えない思いを、せめてレインがはめる指輪に込めたい。
「じゃあ、明日は店に行ってみよう。」
「ありがとう、レイン。」
「………なぁ、それだけか?」
「え?」
レインは困ったように笑って、みずきを強く抱きしめた。
「大丈夫だからな。」
「え?」
「美月が心配してることは、俺がなんとかしてやるから。」
優しく言い切って、レインはみずきに軽く口付けた。
赤くなって、目をそらす美月に。
レインは愛しげに微笑んで、つい、と美月の顎を掴んで自分の方を向かせると。
深く、深く口付けて。
そのまま、二人でベットに倒れこんだ。
美月を拾った日。
あの日が、レインが自我が希薄な分霊から解放されて、実体を得た日となった。
気絶していた美月が妙に気になって。
拾うと決めたら、心臓が動き出し、全身に血がめぐると、体に温もりが宿った。
まあ、ついでに欲も取得したが。
初日の眠れる美月の柔らかな肢体に興奮して反応する自分の体に、レインは笑い転げた。
これが人が子を成す準備か、と面白くて。
名を知り、美月の魂に牙を食い込ませながら、人ならざるモノは知る。
これが愛か、執着か。
指輪を左手の薬指につけて、嬉しそうに月光にかざす美月の横顔を見つめて、レインは満足気に目を細めた。
プロポーズ再びの続きでした。
美月は知らない内に人外化進行中。
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