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雨の日には君を想う  作者: 柚月
番外編
22/23

プロポーズをもう一度

「美月に、渡したいものがあるんだ。」


 いつものからかうような笑みではなく、愛しい相手に向ける熱がこもった笑みを浮かべて。

 レインは美月の左手の薬指にすっ、とそれを嵌めた。


「レイン……これ、」

「ん?」

「これ……何?」

「指輪。」


 揺るぎない輝きを持つブルーダイヤモンドがつけられた、指輪。

 石はひと粒だけの、美月の好みを知り尽くしたかのように、シンプルなデザイン。


「ぇ……どうして?」

「わかんねぇ?」


 くくっ、と笑って、レインは美月を抱き寄せた。


「…それ、結婚指輪のつもりなんだけど。」

「ッ……!」

「美月がいた世界では、それが結婚の証なんだろ?」


 からかっているような、本気のような、判断のつきにくい表情。

 しかし、美月はわかってきていた。

 レインが、こんな表情を浮かべているときは本気、なのだと。


 その指輪は。

 驚くほどぴったりと、美月の指に嵌っていた。

 にっ、とレインが嬉しそうに、満足そうに笑う。


「やっぱり色もお前に似合ってる。」


 レインの瞳の色に近い宝石を探していて、見つけたのがブルーダイヤモンドだった。

 石言葉は、永遠の幸せ。


 何気ない動作で美月の手をとって、その薬指に口付けながらレインはふ、と苦笑した。


「「これからも、ずっと一緒にいような。」」

「え?」

「プロポーズ。」


 驚いた美月が反応できないでいるのをいい事に、そのまま指をぺろりと舐めて、指を伝って指の付け根まで舌を這わせていく。


「美月はあっさり頷いてくれただろ。

あれがプロポーズだったんだぜ?」


 指の付け根に到達した舌が、今度は手の甲へと移動していく。

 ぞくぞくと、もどかしい感覚が体を走り抜けていくのがわかって、美月の顔が赤くなっていく。


「気付かれてないって、最近わかった。

だから、改めてプロポーズしようと思って用意したんだ、指輪。」

「いつもそんなこと言ってるから、その……ごめんなさい。」


 手の甲を這っていた舌が、また指へと戻っていく。

 指を伝い、指輪にたどり着くと、その指輪にはめられたブルーダイヤに口付けて、レインは自嘲した。


 人間的な情緒がない自覚はあるのだ、これでも。

 だが、何があろうとも美月を手放すつもりはない。

 死ですら、美月と自分を分かつものではないのだから。


 す、とレインが顔をあげた。

 からかいの色が、消えている。


「その指輪、受け取ってくれるよな?」

「受け取らないと思う?」

「いいや。」


 どこからそんな自信がわいてくるのかと言うくらい、自信たっぷりに断言して。

 美月の額に口付けて、また笑う。


「受け取ってくれると思うけど。」

「断言したわね。」

「するさ。」


 どうして?と尋ねて見れば。

 これまた、自信たっぷりに。


「お前が、俺の事をどれだけ好きなのかはよくわかってるから。」


 そう、言い切った。

 余裕ありげな、自信たっぷりな、そんな表情で。


「……受け取って、いいのよね?」

「当たり前だろ?

それは、お前の物だから。」


 唐突に、でも優しく抱き寄せられる。

 はっ、と美月が顔をあげると同時に、レインの唇が降りてきた。

 深く。

 深く、口付けられる。


「っん……」


 ゆっくりと美月の口内を味わって、レインは唇を離した。

 隠しきれない熱が滲んだアイスブルーの瞳が、じっと美月を見つめる。


「まっ昼間だけど、いいよな?」


 にっこりと笑って、レインは、美月を抱き上げて歩き出す。


「……レイン?どこに連れて行くつもり?」

「ん?ベット?」

「ッベ……!?」

「ソファーの方が良かったか?」

「そうじゃなくて!」


 抗議の声をあげるが、レインはさらりと無視して寝室に向かう。

 その表情は、心の底から楽しそうな顔で。

 こうなると、止まってくれないのは今までの経験でよくわかっていた。

 美月はため息をつき、苦笑しながら言う。


「加減、してね?」

「善処する。」


 寝室に入る直前、美月の額に口付けを落として。

 レインはイタズラを思いついた子供のように微笑んだ。

よろしければ★を頂けると嬉しいです。

ヤンデレたいのになかなかヤンデレない。


番外編もお読みくださり、ありがとうございます。

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