プロポーズをもう一度
「美月に、渡したいものがあるんだ。」
いつものからかうような笑みではなく、愛しい相手に向ける熱がこもった笑みを浮かべて。
レインは美月の左手の薬指にすっ、とそれを嵌めた。
「レイン……これ、」
「ん?」
「これ……何?」
「指輪。」
揺るぎない輝きを持つブルーダイヤモンドがつけられた、指輪。
石はひと粒だけの、美月の好みを知り尽くしたかのように、シンプルなデザイン。
「ぇ……どうして?」
「わかんねぇ?」
くくっ、と笑って、レインは美月を抱き寄せた。
「…それ、結婚指輪のつもりなんだけど。」
「ッ……!」
「美月がいた世界では、それが結婚の証なんだろ?」
からかっているような、本気のような、判断のつきにくい表情。
しかし、美月はわかってきていた。
レインが、こんな表情を浮かべているときは本気、なのだと。
その指輪は。
驚くほどぴったりと、美月の指に嵌っていた。
にっ、とレインが嬉しそうに、満足そうに笑う。
「やっぱり色もお前に似合ってる。」
レインの瞳の色に近い宝石を探していて、見つけたのがブルーダイヤモンドだった。
石言葉は、永遠の幸せ。
何気ない動作で美月の手をとって、その薬指に口付けながらレインはふ、と苦笑した。
「「これからも、ずっと一緒にいような。」」
「え?」
「プロポーズ。」
驚いた美月が反応できないでいるのをいい事に、そのまま指をぺろりと舐めて、指を伝って指の付け根まで舌を這わせていく。
「美月はあっさり頷いてくれただろ。
あれがプロポーズだったんだぜ?」
指の付け根に到達した舌が、今度は手の甲へと移動していく。
ぞくぞくと、もどかしい感覚が体を走り抜けていくのがわかって、美月の顔が赤くなっていく。
「気付かれてないって、最近わかった。
だから、改めてプロポーズしようと思って用意したんだ、指輪。」
「いつもそんなこと言ってるから、その……ごめんなさい。」
手の甲を這っていた舌が、また指へと戻っていく。
指を伝い、指輪にたどり着くと、その指輪にはめられたブルーダイヤに口付けて、レインは自嘲した。
人間的な情緒がない自覚はあるのだ、これでも。
だが、何があろうとも美月を手放すつもりはない。
死ですら、美月と自分を分かつものではないのだから。
す、とレインが顔をあげた。
からかいの色が、消えている。
「その指輪、受け取ってくれるよな?」
「受け取らないと思う?」
「いいや。」
どこからそんな自信がわいてくるのかと言うくらい、自信たっぷりに断言して。
美月の額に口付けて、また笑う。
「受け取ってくれると思うけど。」
「断言したわね。」
「するさ。」
どうして?と尋ねて見れば。
これまた、自信たっぷりに。
「お前が、俺の事をどれだけ好きなのかはよくわかってるから。」
そう、言い切った。
余裕ありげな、自信たっぷりな、そんな表情で。
「……受け取って、いいのよね?」
「当たり前だろ?
それは、お前の物だから。」
唐突に、でも優しく抱き寄せられる。
はっ、と美月が顔をあげると同時に、レインの唇が降りてきた。
深く。
深く、口付けられる。
「っん……」
ゆっくりと美月の口内を味わって、レインは唇を離した。
隠しきれない熱が滲んだアイスブルーの瞳が、じっと美月を見つめる。
「まっ昼間だけど、いいよな?」
にっこりと笑って、レインは、美月を抱き上げて歩き出す。
「……レイン?どこに連れて行くつもり?」
「ん?ベット?」
「ッベ……!?」
「ソファーの方が良かったか?」
「そうじゃなくて!」
抗議の声をあげるが、レインはさらりと無視して寝室に向かう。
その表情は、心の底から楽しそうな顔で。
こうなると、止まってくれないのは今までの経験でよくわかっていた。
美月はため息をつき、苦笑しながら言う。
「加減、してね?」
「善処する。」
寝室に入る直前、美月の額に口付けを落として。
レインはイタズラを思いついた子供のように微笑んだ。
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ヤンデレたいのになかなかヤンデレない。
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