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雨の日には君を想う  作者: 柚月
本編
2/23

異世界に落ちる


 コンビニの明かりまであと数メートルというところで、突如として美月の足元が光り輝いた。

 見たこともない複雑な文様が輝きながら浮かび上がってくる。


「これって、アニメで見たやつ!」


 興奮したようにアリスは美月に抱きついた腕を離さないとばかりにぎゅっと強く締め付けた。

 美月はわけがわからないまま硬直し、そして光が2人を包み込んだ。



 ライトノベルや アニメの世界で、異世界転移というジャンルがあることは美月も聞きかじっていた。

マンガやアニメなどのサブカルチャーの知識はアリスが詳しくて、家事に忙しい美月はたまにそれに付き合って鑑賞する程度であった。

 倒れていた床で目を覚ました美月は、先に目を覚ましていたアリスが興奮したように


「アリスが聖女です!」  


 と叫んでいるのを目の当たりにし、困惑を隠しきれなかった。

 いい加減一人称を自分の名前にするのはやめなさいよ、と場違いにも思いながら。



 この展開は、アリスから貸してもらった小説にあったような気がする。

 こんな異世界から誘拐をしてくる国の聖女なんて ろくでもないものだと相場が決まっているはずだ。

 なのに聖女と名乗りをあげるなんて、アリスは何がしたいのだろう。

 心配になった美月はアリスに近寄ろうとするが、近くにいた衛兵に阻まれた。

 曰く、召喚で呼び出したのは 一人だけであり、アリスが聖女ならば美月は不要とのことだった。


「テンプレじゃん!」


 アリスが無邪気に笑う。


「アリス、あなたそれでいいの?本当に大丈夫なの?」

「大丈夫に決まってるよ、お姉ちゃん。

アリスは絶対、ざまぁなんてされないもん。

むしろ、ざまぁする方だよ!」


 自分だけは絶対大丈夫なんていう保証はどこにもないのに、本当にアリスは冷静になって考えなくて いいのだろうか。

 不安になった美月だが、アリスは美月の声を無視して謁見の間に移動するらしく、衛兵に阻まれたまま 動くことができない美月は、その後ろ姿を悲しそうに見送ることしかできなかった。



 その後も最悪のお決まりパターンが美月を襲った。

 着の身着のままで、城から追い出されてしまったのだ。

 この世界のことなど何もわからないのに、野垂れ死ね、と言わんばかりの対応にみずきは腹が立ってきた。

 さすがにアリスも美月がこんな対応されていることは知らないのではないだろうか。

 ……まあ、あの子は自分さえよければそれでいいタイプなので、知っても助けには来ないかもしれないけど。

 聖女だか何だか知らないが、 アリスを助け出さなければならない。


 でも、待って、その、……助けなければいけないの?


 無邪気に悪意を振りまくアリスのことだ、何があっても計算高くワガママに生き延びていくに違いない。

 美月は我に帰って、ポジティブに考えた。

 これでアリスとは縁が切れたと思えばいいのだ。

 もう煩わされることはないことに、後ろめたさを感じつつもホッとした。



 さて、どうやったら元の世界に帰れるかもわからない。

  アリスの心配よりもまずは自分の今後の心配をしなければならない。

 言葉は通じることは分かっているが、この世界の常識がわからない。

 どこか福祉を司る話の通じる役場のようなところはないのであろうか。


 衛兵は美月が城に戻ってくることがないように馬車に乗せて2日 移動した先の山の中に美月を捨てた。

 周囲には山と川しかなく、民家が見えない。


 真冬であった日本とは違い、この国は暖かい。

 着込んでいたコートをたたみ、幸いなことに取り上げられなかったリュックにしまって、埃のついたスカートをはたき。

 話が通じる人を探して、美月は歩き出した。


よろしければ★を頂けると嬉しいです。


本作は短編「視線の行方」「聖女の瞳は輝く」と登場人物が繋がっているので気が向いたらぜひご覧ください。

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