新雪を踏み荒らす
ーー美月は、この世界に残ることを、もうずっと前から、密やかに願っていた。
家具や雑貨を揃えて、数カ月が経ち、本格的に長く同棲することを決めてから、美月はレインと男女の仲になることを、自分の中ですんなりと自然に受け入れていた。
じゃれついてくるレインのまっすぐな愛情は感じていたし、一緒に寝ていると、たまにしれっと固いナニかがお尻に当たっていたし。
好きだとか可愛いとか、毎日のように言われているせいで、未だにどれが告白だったのかは分からない。
その中のどれかが、レインにとってはプロポーズだったらしく、いつの間にか美月のことを、冒険者ギルドなどで対外的には、俺の嫁と呼ぶようになっていた。
嫁発言は流石に恥ずかしくて、つい照れ隠しにそっぽを向いていたが、美月がそれを否定したことは1度もなかった。
レインなら嫌じゃなかったから、だんだん深くなる口づけに、流されるまま、もつれ合うようにベッドに沈み込んでも、拒絶することなくレインの熱を受け入れた。
翌朝、レインに顔が見られないように毛布に潜り込むと、腰が痛くて動けない美月に動揺し、彼は甲斐甲斐しく世話を焼いてくれた。
涙が滲むほどの幸福感で、胸がいっぱいになった。
毎回受け身で申し訳ない気持ちもあるが、正直それで精一杯なので、いつかの成長に期待してもらいたい。
レインもそれは十分承知なようで、むしろ新雪を踏み荒らすような状況を楽しんでいた。
ほぼ、結婚したと言っていい生活をしていたのだ。
レインは美月の薄い腹をなでながら、早く子供ができないかな、と笑っていたのだ。
ーー今更、元の世界になど帰りたくない。
レインが、襲撃してきた兵士と単独で戦っていた間のことだった。
オーレイアは美月を見つめ、憐れむように深々とため息をついた。
「貴女はもう、あの方から逃げられないと思う。
名前をつけたというのは、そういうこと。
双子なんて比較にするのがおこがましい位、強い魂の縁が結ばれてしまったの。
例え貴女が生まれ変わっても、必ずまたあの方に見つかってしまう、そういう、呪いみたいな結びつき。
……薄々、気づいていたと思うけど、」
「貴女は、人のコトワリから外れた存在の花嫁になりました。」
美月は、この世界に残ることを決めた。
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本作は短編「視線の行方」「視線の絡み合う先」「聖女の瞳は輝く」と登場人物が繋がっているので気が向いたらぜひご覧ください。




