付き纏う因果
きっかけは、元々とある宗教国にあった禁書である異世界召喚の巻物が、宗教国を襲った戦火の騒動に紛れて、盗まれたことから始まった。
それを手に入れたのが、封建制度から成り立つ王国だ。
美月とアリスを召喚したこの国である。
宗教国に戦を仕掛けている帝国の、次の標的になることを恐れて、王国は聖女を召喚した。
ただし、聖女は世界に1人しかいないのが、この世のコトワリだ。
聖女のつもりで、 何かが違う、しかし何らかの力を持つものを呼び寄せた。
「それが私とアリスだと言うの?」
美月の額に、冷や汗が滲む。
オーレイアは、唄うように告げた。
「神は信託を下しました。
貴女達双子が、この世界に長く留まると、いずれ世界中を巻き込んだ戦火が起きます。
双子は共鳴するんです。
それも良くない共鳴。
だから帰っていただきたいんです、どちらかに。
アリスさんでしたっけ、貴女の双子の片割れが常に貴女から力を吸い取っている。
元の世界での、搾取するものとされるもの 、二人の因果が、この世界でも続いている。
貴女が元の世界に帰れば、アリスさんは力が使えない。
聖なる祈りの適性を持つのは寧ろ、貴女の方ですよ、美月さん。
アリスさんは、良き力を悪しき力に反転することができる。
その力を使って、ある国がよくないものを復活させようとしているんです。」
オーレイアの静かで強い声とよどみない話し方には、不思議と説得力があった。
「元の世界での、因果だなんて……」
美月の顔が、不可解にゆがんだ。
感情の処理が、追いつかないのだ。
「今更もう遅い!
帰さないぞ、美月は俺のものなのに。」
場違いなほど明るくて我が強い、抗議する声が、美月の心を救い上げた。
茫然としたまま、反射的に美月は口を動かす。
「えっと、私は誰のものでもないわよ。」
「違う、俺が拾ったから、俺のもんだ。」
拗ねたようにレインは美月の背中にくっついた。
「………」
呆れたようにヒースクリフと目配せをして、オーレイアは説明を続けた。
「地獄の門と言えば分かりやすいかな。
よくないものと、この世界をつなぐ扉です。
貴女とアリスさんを召喚した国は、アリスさんが聖女じゃないとわかって、自国を守るんじゃなくて攻める方向に転換したらしいんです。
地獄の門を開いてそこから出てくるものを軍隊にしようとしてるんですよ。」
ヒースクリフが、オーレイアの続きを引き継ぐ。
「まあ、コントロールなんか、できるわけないわな 、そんなバケモン。
どんなものが出てくるか、そもそも、コントロールできないってことも分かってないんじゃねぇか。
結果ばかり重視する権力者って、どこもそんなもんだ。
いやんなっちまうね。」
嫌悪感を滲ませて、ヒースクリフは柄悪く舌打ちした。
「アリスさんは貴女の力を使って、せっせと地獄の門の封印を壊してるわけです。
宗教国の初代法王が封印してたんですけど、今あの国は戦争中で、それどころじゃないんですよ。
国の土台は腐ってはいたんですけどね、もともと。
私がとどめを刺しちゃったから、あはは。
……だから今回は私にも責任があるんです。」
訳がわからない。
考えることを拒否したい。
美月のそんな内心を見透かすように、まっすぐな視線でオーレイアは貫いてくる。
レインは美月を元の世界に帰したくない。
でも双子のどちらかは帰さなきゃいけない。
「美月さんは帰りたいですか?
帰りたいなら、協力します。
帰りたくないのなら、アリスさんをどうにかしなければなりません。
今は、決められなくても構いません。
もっと詳しい情報は、レーゲン様が持ってます。」
オーレイアは、隠していることがあった。
数ヶ月前からオーレイアの神託を受ける能力は、消失していた。
美月に説明した内容は、 全てレーゲンからの受け売りだ。
だが、もう一つの能力は使うことができる。
聖女の瞳が、輝く。
美月の心は激しく揺れ動いていた。
よろしければ★を頂けると嬉しいです。
本作は短編「視線の行方」「視線の絡み合う先」「聖女の瞳は輝く」と登場人物が繋がっているので気が向いたらぜひご覧ください。




