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雨の日には君を想う  作者: 柚月
本編
10/24

唄う神託

 美月とレインが冒険者ギルドで用事を済ませて帰ろうとすると、 長身のレインよりさらに背の高い、がっしりとした鋼のような体躯の男が立ちはだかった。

 艶のない漆黒のライトアーマーを着て腰に剣を差しているところを見ると、剣士として活動している冒険者だろう。

 知り合いなのか嫌そうな顔をするレインの背後から、小鳥のような可愛らしい声がした。


「いたいた、こんなところにいた!

尊いお方が探してましたよ !

レーゲン様ったら、奥方様と離れたくないからって、あなたの捜索を私に押し付けたんですから。

さあ、帰りましょう。

尊いお方が大変なことが起こってると言ってました。

あなたの協力が必要だそうですよ。」

 

 早口でまくし立てるように言いながら、少女は遠慮なくレインの腕をぐいぐいと引っ張った。

 突然のことに、みずきは目を白黒させた。

 レインは事情をある程度、理解しているのか、迷惑そうな雰囲気を隠さない。

 しっしっ、と雑な扱いで手を振るレインに少女は頬を膨らませた。

 少女とレインは気安い関係であるのだろう。


 妖精のように儚げで小柄な少女は、オーレイアと名乗った。

 少女を守るように横に立つ大柄な剣士は、ヒースクリフというらしい。



 冒険者ギルドの真ん中で騒ぐわけにもいかないので4人は速やかに、レインの家に移動することにした。

 移動中もオーレイアは、レインを説得しようとする。


「えーー!いやだ!

俺は美月と一緒にいたいんだ。

あっちのヤツのことより、俺はこっちの美月の方が大事だ。」


 胸を張ってきっぱり言い切るレイン。

 なんだこいつという顔をしてヒースクリフがオーレイアと視線を合わせると、オーレイアはこういう人なのと言わんばかりに肩をすくめた。

 蚊帳の外に置かれた美月は、黙って会話を聞いていた。


「困りましたね。

私で判断ができることじゃないんですよ。

とりあえず美月さんも一緒に、レーゲン様のところへ行きましょう。

美月さんも無関係じゃないと言うか、 関係者なんですから。

それからこれからのことを考えたっていいじゃないですか。」

「 ちょっと待って。私が関係者ってどういうこと?」

「美月さん、貴女は異世界から召喚されて、こちらの世界に来たんですよね。」

「ど、どうしてそのことを……」

「神託ですよ。」


 ひらりとスカートを翻して、オーレイアは歌うように答える。

 ヒースクリフが自分のことのように誇らしげに言う。


「オーレイアは聖女なんだ。」 




 2人に入れるためのお茶を用意する為に、美月はケトルでお湯を沸かしていた。

 彼らと一緒にいたくないのか、レインも台所についてきていた。


「オーレイアさんと、随分気安いのね?」

「え、やきもちか?

オーレイアとはあいつが6歳になった時からの付き合いだからな 。

やきもち焼かれるような関係じゃないぜ。」


 茶化すレインだが、美月が本当に聞きたいことはオーレイアとの関係ではない。

 こくりと、緊張から喉がなった。


「レイン、あなた一体何者なの?

聞きたいけれど、聞いたらあなたの傍にいられなさそうで、怖いわ。」

「……いつか必ず話すよ。少し待っててくれないか?」

「うん、分かった。……必ずよ。」

「あぁ、必ず。」


 大人びた男の顔つきで、レインはじっと美月を見つめると、彼女の緊張から白くなるほど握られた手を解いて、優しく握りしめた。

よろしければ★を頂けると嬉しいです。


本作は短編「視線の行方」「視線の絡み合う先」「聖女の瞳は輝く」と登場人物が繋がっているので気が向いたらぜひご覧ください。

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