双子の妹
覚えてる?
私達、雨の日に出逢ったの。
あなたはいつも私を驚かせてばかりで、
私はいつも怒ってばかりで、
なのに、あなたと出会ってからは、笑わない日はなかった。
忘れないで。
どんなに時間がかかっても、
きっとまたいつか逢いに行くから。
美月は、会社員の父親を持つ中流家庭の生まれであるが、表面上は何不自由なく生育していた。
彼女には双子の妹がおり、二卵性だったためあまり似てはいなかった。
この妹がなかなかの曲者で、美月のものを奪い取る、いわゆる欲しがり妹であった。
幼少期は双子であるため、同じものを買い与えられていたが、隣の芝は青く見えるのか妹であるアリス(漢字は有栖)は美月のものを欲しがった。
同じものだったから交換するだけで済んでいたのは幼少期だけで、成長するに従い、各々の好みは異なっていった。
美月はスラリとした体つきでスタイルがよく、出るところは出て、引っ込むところは引っ込む女子高生にしては、発育の良い体躯をしていた。
部活で陸上をしていたため、胸が大きすぎることは、むしろ悩みであった。
美月はシンプルな装飾のものを好み、身の回りのものを揃えていたが、
アリスは対照的に小柄で、ふわふわとしたリボンやフリルのついた服やキラキラとした小物がよく似合う少女であった。
月2で美容室に行き、天然パーマを装った巻き髪風パーマをかけて、甘いミルクティーカラーに染めていた。
自分をよく見せるやり方を熟知しており、外ではアリスの方が美月より評判が良かった。
美月はストレスからピリピリとした雰囲気をしており、周囲から人を遠ざけていた。
いつからかアリスは美月から、趣味に合わない地味なものを取り上げることをやめて、美月がこっそり憧れていた部活の先輩に告白してあっさり彼氏にするなどして、人間関係を奪うことを楽しむようになっていった。
美月は部活を辞めざるを得なかった。
両親は仕事人間で、ある程度手がかからなくなった双子を等しく放任したがっていた。
だが、美月がアリスの望むようにしないと癇癪を起こす為、アリスのワガママのしわ寄せは全て美月が悪いことにされた、その方が両親は楽だからだ。
美月に与えられるはずのものが、どんどんアリスに流れていく。
いつしか、双子であったはずの姉妹には、明確に格差が生じていた。
両親からの愛情不足を感じていたのか 、双子の妹の美月への嫌がらせは だんだんとエスカレートしていった。
美月が怒ると妹は子供のようにわんわんと泣いて家の中をめちゃくちゃにするので、いつしか美月は グッと怒ることを我慢する癖がついていた。
そんなある日、家に帰りたくない美月は閉館時間まで図書館で宿題をこなしていた。
ふと気づくと、妹からメッセージが来ていた。
帰り道でお菓子を買ってくるように、との連絡であり、断る方が後々めんどうなので、美月は最寄りのコンビニに寄ろうといつもとは違う帰り道を選択していた。
アリスは料理ができない。
両親の帰りは遅く、必然的に毎日の食事や洗濯、掃除はみずきが担当していた。
コンビニに寄ってから夕食作りを始めると、夜の予定が大きくずれてしまう。
見たかった動物系バラエティ番組を見ることが 叶いそうになく、美月は若干イライラしていた。
アリスは自室にテレビがあるが、美月はない。
なのに、リビングのテレビはいつでもアリスが占領していた。
足早に歩いていると、夕暮れの十字路で対面の道から淡いピンク色のコートを着た少女が向かってくるのに気づいた。
双子の妹、アリスであった。
「お姉ちゃん 遅いじゃない!お腹が空いたからアリスも一緒にコンビニに行くことにしたよ。」
「ごめんね 宿題をしていたから、メッセージに気づかなかったの。一緒にコンビニに行きましょ。」
アリスは美月の腕に抱きつき、ニコニコと無邪気に笑った。
アリスは美月に嫌がらせをするが、それは精神的なものであり、人目のある時は表面上は仲の良い姉妹のようにふるまっていた。
天然に悪意を振るうことができる、それがアリスなのだった。
無邪気なアリスの笑顔を見ていると、どうしても美月はその腕を振り払うことができずにいた。
嫌いなのに、嫌いになりきれない。
双子の妹を嫌いだという意識には罪悪感があり、そのジレンマが美月を徐々に追い詰めていった。
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本作は短編「視線の行方」「聖女の瞳は輝く」と登場人物が繋がっているので気が向いたらぜひご覧ください。




