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飛ぶ部屋

 二人で今後の方針を決めたところで、改めてこの広い景色を眺める。


「本当に綺麗な場所だなあ」


 見渡す限り草原であり、遠くに山はあるが正直なにもない。疲れた心を癒すにはいいだろうが、これでは流石に不便だ。


 ……そういえば、洞窟はどうなったんだろう?


 ファウンドに洞窟について尋ねると、八割以上のエネルギーをぐるぐるした結果、洞窟から追い出されるようにファウンドは地上に上げられたらしい。


 肝心の洞窟の入り口は追い出された場所にはなく、どこかに逃げたようだ。洞窟自体が動くとか訳がわからないが、ファウンドが言うのなら事実だろう。

 まあ、気ままに歩いていけばいいかと、ファウンドを連れてとりあえず遠い山を目指して歩み始める。

 すると、ファウンドが僕が行こうとした真横を見ていることに気付いた。


「ご主人様。こちらに近づいてくる人影が一体存在します。排除しますか?」


 人影ってことは多分人かな? 周囲には村らしきものはなかったけど、見渡す限り何もないこんなところまで一人でよくこられたものだ。


 ……それとファウンド、見つけて排除の許可待ちは判断が早い。洞窟では非常時だったしそれでよかったけど、このままだと、もし仮に人と出会ったら機関銃撃つ通り魔になりかねない。


 とりあえずファウンドには今後、すぐに排除しない指示を出し、こちらに向かってくる対象へと歩を進める。


 ファウンドと手を繋ぎながらしばらく歩いてると、向こうから人影が見えてくる。あれがファウンドの言っていた人影かな?

 どうやらあちらも僕たちの存在に気付いたようで小走りになってこちらへと近づいてくる。どうやら少女のようだ。


 ……この世界に来て初めての異世界人だ。コミュ障の僕だが、最大限の手厚い歓迎をするのが、元の世界代表としての礼儀というものだろう。

 若干息を切らしながら、綺麗な長い髪を優雅に揺らしてやってきた女の子は、かなり気が強そうだった。背はファウンドと同じくらいで、赤い髪に青い澄んだ瞳。整った吊り目が高貴な雰囲気を出していて、子どもながらちょっと怖い。

 息を整えた少女は僕とファウンドを交互に見つめて、不思議そうに呟く。


「どうして二人? 女神様からのお告げでは一人だったはず……」


 ……どうやら少女は人探しをしているらしい。


「お二人は、女神様から使命を託されて転送されてきた勇者様ですか?」

「いや……全然わからないですね……」


 何のことかさっぱり分からないのでそう言うと、目の前の赤髪の少女は指を口に当てて悩み始めた。


 ……僕たちは何も知らないし早めに立ち去ろう。なんか女神様とか言ってたし、宗教はもう懲り懲りだ。前見た変な夢で思い出してから、こういう宗教事には厄介な匂いしかしない。


 軽く手を振り、さよならアピールをしてファウンドを連れ少女の横を通り過ぎる。少ししてから、考え事から帰ってきた少女がこちらへと振り向く。


「待ちなさい! あなたたちに用があるの!」

「大丈夫です! 間に合ってます!」


 プライドの高そうな子ども特有の高い声が聞こえた時にはもう草原を走っていた。僕の経験上、捕まったらロクなことにならない。


「ちょっと! なんで逃げるのよ!? 待ちなさいって!」


 ファウンドを連れているとはいえ後ろから追ってくる少女は年相応とは思えない、ものすごい速さで追いついてくる。日頃インドア派な僕ではとても逃げ切れる気がしない。

 必死で逃げている僕の手を握り返してくれるファウンドが僕に解決案をくれた。


「ご主人様。どうやら非常事態のご様子。空を飛ぶのはいかがでしょうか?」


 ――なるほど、あれか。


「ああ! よろしく頼むよ!」


 それは僕の完璧な部屋への想いが作り出した装置の一つ。飛行機のジェットエンジンを部屋に設置し、部屋の重量に耐えられる飛行可能な翼を作り上げて、ベランダに格納し設置したものだ。

 周りの部屋への被害がとんでもないことになることから、あくまで最終手段としてとっておいたこの装置が、まさか日の目を浴びることになるなんて、異世界も悪くないかもしれない。


 僕のことをお姫様抱っこしたファウンドは背中からジェットエンジンと翼を展開し、エンジンの出力を上げていく。


「い、一体何ですか、そのお姿は!? 勇者様は翼人族(フリューゲル)、それとも機械人(デウスマキナ)!?」


 轟音の中で追ってきていた少女が何か言ってる気がするがまあどうでもいい。この機能をついにお披露目する時がきたのだから!

 僕を抱えたファウンドはエンジンを爆発させ、滑走する。翼がその風を受け僕たちを宙へとダイブさせる。


 唖然とする少女の姿がどんどん小さくなっていく。雲と並び立った僕はファウンドと過ごす、これからのことを考えて胸がいっぱいになった。


「これからも一緒に、よろしくね! ファウンド!」


 エンジンの音で聞こえたかわからない僕の声に、照らされて眩しく輝く銀髪の彼女が微笑みで応えてくれた。

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