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採取する部屋


「いくぞ! ファウンド!」

「かしこまりました。ご主人様」


 僕はファウンドから振動剣を受けとり、森を闊歩していく。ファウンドは空中から僕の様子を見守っている。


「これだ! あとこれ! それとこれ!」


 僕は獲物を捉えて、振動剣を振りかざし、獲物の巨体を真っ二つにしていく。こういう時、ゲームの無双系主人公の気持ちが少し分かる気がする。


 真っ二つにした獲物は、ファウンドが空から回収してくれているので、次から次へと獲物の選別ができる。一通り狩り終えた僕たちは、別行動しているエランスの所に向かうのだった。



 ――



「……あんたたち、依頼ほったらかしてどこに行ったかと思えば、何その丸太の束?」


 僕たちと別行動していたエランスは、依頼にあった「ヨクイール・ウルフ」の討伐をしてくれていた。


「仕方ないじゃないか。僕がいたら、難易度の高い依頼をこなせないんだから」


 僕は鑑定石から最低のE評価をもらってしまったので、失せ物捜しか薬草採取しかできない。


 ……そこで、僕は裏技を使った。


 僕がファウンドの中にある窓から依頼書を見て、ファウンドに目的の依頼を選ばせる。そしてエランスと共に二人で任務をこなしていることにするのだ。

 街の外に出れば、僕は偶然通りかかった一般人になるし。


「それはそうだけど、だったらなんで平野はファウンド様を連れて、こんな大量の丸太を集めてきたのよ」

「そりゃあ計画のために決まっているじゃないか」


 当然とばかりに言う僕に、エランスは呆れ返った様子だ。


「あのねえ。あんたがファウンド様の中に入るのは心の底から軽蔑するけれど、決して悪くない方法なのよ? この方法で上級の依頼をこなせば資金問題も解決するし、少なくともファウンド様は勇者としての威厳を示せるんだから!」


 エランスが熱くなって僕に語ってくる。さすが、ファウンドのことを勇者様と言うだけある部屋友だ。僕とは違ったファウンドへの情熱を見せてくれる。


 ……だが、今回ばかりは譲るわけにはいかない。


「言っただろエランス。ファウンドに必要なのは勇者としての威厳じゃない。僕はファウンドのことを、『勇者様』として以外にも見てほしいんだ」


 しかし、こればかりはスタンスの違いだ。ずっと最高の部屋を育て上げてきた僕と、最初から完璧な部屋を見たエランスではファウンドを見る視点が違う。僕としては、ファウンドのことは単なる性能だけで見てほしくはないのだ。


「あの子を育ててきたからこそ出る発言ね。あなたのそういう頑固な所は嫌いじゃないわ」


 ふんと鼻を鳴らして「ヨクイール・ウルフ」の回収を手伝うように催促されたので、僕とファウンドも依頼された獲物の回収を手伝う。やはり友達との意見の交流は楽しいものだ。



 ――



「はい。難易度D、『ヨクイール・ウルフ』の依頼報酬です。本日はありがとうございました」


 僕たちはギルドに戻り、荷車に乗せてきたウルフ達をギルドへと預けて報酬をもらう。回収した丸太はファウンドのお腹の中だ。


「銀貨三枚……まあ難易度Dならこんなもんよね」


 はあとため息をつくエランス。難易度を少し上げた程度ではお金を稼ぐのは難しいらしい。


「おやおや。お困りかな、お嬢さん方?」


 ギルドを出ようとした僕たちの前に、二十代半ばくらいで金髪セミロングの派手な男がやってくる。

 服は銀色に輝くスーツ姿でネクタイはレインボー、整え切った金髪は揺れるたびにその存在を主張してくる。ギルドの人達はみんな、彼の動きの一つ一つを見逃せないかのように注目していた。


「……あんたに用はないわ。ナシスト」

「連れないなぁ。あんなに可愛かったエランスちゃんが、今じゃこんな美人さんになっていて、僕様はとっても嬉しいんだぞ?」


 どうやらエランスの知り合いの人のようだ。コミュ障として、頑張って挨拶しておこう。


「僕は平野頼来と言います。隣はファウンドです。よろしくお願いします」


 僕はナシストと言われた男の人に手を差し出す。いつも以上に完璧な挨拶だった。コミュ障も少しは治ってきたかもしれない。


 しかし、ナシストさんは僕がいないとでも言うかのようにファウンドの方へと向く。


「君がファウンドちゃんだね。僕様はナシスト、総合評価Aの一流冒険者さ」


 ナシストさんはファウンドの手を無理矢理とり、両手で包み込む。


「……ナシスト、それ以上ファウンド様に馴れ馴れしくしたら、タダじゃおかないわよ?」


 いつの間にかエランスは、ナシストさんの首に刃を突きつけていた。


「はっはっは、冗談だよ。全くエランスちゃんはいつもおっかないなあ」


 ニコニコしながらファウンドから手を離したナシストさんは二人を交互に見ている。


「……どちらも僕の側近に相応しい。完璧な僕様のパーティーとして、いずれスカウトにくるからね」


 パチンと軽くウインクしたナシストさんは、まるでスケート選手のように床を滑りながら去っていった。


「……ほんと鬱陶しいやつ。昔から何も変わっちゃいないわね」

「何がしたかったのか、理解不能です」


 呆れた様子のエランスとコミュ障ゆえよく分かっていないファウンド(僕も分かっていない)。僕は差し出した手をそっとしまい、調子に乗っていた自分のコミュニケーション不足を悔やんだ。


「僕は、彼に嫌われてしまったのだろうか……」

「大丈夫よ。ナシストは男性には絶対挨拶しないだけだから。逆に女性にはすぐに声をかけにくるからタチが悪いのよ」


 ナシストの滑っていった跡である氷を見ながら、エランスは呆れ返っていた。


「彼は随分前からいる別世界からの転送者よ。この始まりの地でずっと、魔族を追い払う冒険者として活躍しているわ。毎回魔族を追い払ってくれるから、自他共に認める一流冒険者になっているのよ」

「あの人がエランスの言っていた転送者なんだね」


 そういえば以前エランスは、女神がこの「始まりの地」に転送者を多く送ってくると言っていた。

 女神というのは信用出来ないが、転送者たちの影響でファウンドが「勇者様」と呼ばれるようになったので、彼から是非とも話を聞きたかった。


「よし! 僕あの人から話を聞いてみるよ!」

「ちょっと! 人の話を聞きなさいよ!」


 引き止めようとするエランスの声は届かず、僕は彼が作った氷の跡を追ってギルドから走り出した。

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