天界らしい部屋②
……何を言っているのかまるで頭に入ってこない
僕の愛しの部屋はどうなったのか? 家賃が払えなくなったら終わりなのに!
今まで誰も暮らしていなかったあの完璧な部屋を、一体誰が管理するというのか!?
この女神もどきはさっきから世界の終わりとか魂の救済だとか言っていてわけわからん。
そこで、僕は急に思い出した。こんなことが以前に何度もあったことを……
――
ピンポーーーン
やたらと響くチャイム音。この最高の部屋の居心地を一気に貶めるそれは、いつも聞いてて居心地が悪くなる。
「はーい、今出まーす」
できるだけ面倒そうな感情が出ないよう努めて声を出す。とりあえず会ったこともない人に対するコミュ障なりの僕が持つ礼儀の一つだ。
受け答えが聞こえたのか、ドアの向こうから声が聞こえる。
「あなたの身近に不幸はありませんか?苦しいと思うことはありませんか?それは、このあなた自身が世界に救済を求めているのです。そこにあるものは幻。どうぞ神の御心のままに…………………」
…………大丈夫です。間に合ってます。
呆れ返って引き返そうとするとポスト口に何か入れられた音が聞こえた。
仕方なく拾って見てみると教祖らしきおじさんがいる写真とその歴史が書かれた紙と連絡先……
――
つまり今の状況はあの時と同じ、何度も体験してきた手の込んだ宗教勧誘か!
以前訪問してきたあの人たちなら一度信じたと思われる人物を拉致してもおかしくはない!かもしれない。そうじゃなきゃ、この状況に説明がつかない。
つまりこの目の前にいる金髪碧眼のお姉さんは教祖様の親族あたりなのだろう。写真に写ってたのはどれもおじさんだったし。
……というかそろそろ家に帰りたいな。何も持たずに拉致られた時の対処ってどうすればいいんだ? わからん。教科書でも学んでこなかったところだ。
だがしかし、ここから絶対出ないといけない。なぜなら自慢の部屋が待ってるんだ!
とりあえず率直に言ってみて、ダメそうならあっちの勧誘に少しずつ譲歩していくことにしよう。
「…………あのー、いかがされました? もう話は全て済みましたが?」
む? 親族の話が終わった。そろそろ帰れるかな?
「もう帰っていいですか? 部屋が待ってるんで」
親族が驚愕したような顔をしている。少しは話が通じたみたいだ。
それにしても、いくら盲信しているからって僕のことを憐れむような目で見るのは勘弁してほしい。こっちはただ家に帰りたいだけなのだ。お互い時間の無駄は嫌だろうし、こちらは入信する気はない。
そちらは諦めて新しいターゲットを探しにいけばいじゃないか。
頼むから僕の愛しの部屋で寛がせてくれ。さっき気持ちよく起きたはずなのにもう寝たくなってきたよ。
「…………一応言っておきますが、帰る手段はありません。あなたは私の世界ダレーテルで武勇を示すしか道がないのです。アンミーンとの約束で一度は手順を踏み、私の世界に呼ばないといけない決まりなので、こちらも速めにに手順を済ませてほしいのですが」
……なるほど、どうやら親族の方も苦労しているようだ。それもそうだろう。わけわからん説明を淡々として、入信しろなんて土台無理な話だ。きっと、かなり面倒でも、身内の事情があるから引くに引けず今に至っているのだろう。
だが、経験上少しでも興味を示そうものなら宗教は獲物を得た魚のように引き摺り込んでくる。それだけは勘弁してほしい。ここはテキトーに話に沿ってやるか。
「転生することが避けられないのは理解しました。ですが僕にはスキル?とか何もいらないです。その代わりに現世での僕の完璧な部屋ごと転生させてください」
スキルとやらで下手に自分の体に傷でもつけられたらたまったものではないし、とりあえず帰れればいいからはやく部屋に戻りたいアピールをしていく。
「え? あなたの部屋ごとですか? まあ、そのくらいの空間を切り取るだけならアンミーンも気にはしないでしょうけど、スキルがないということが私の世界ではどういうことか理解していましたか? あなた即死ですよ?」
どうでもいい。親族さんの世界だろうが安眠さんの世界だろうが、はやく自分の目覚めをやり直させてほしい。
「はぁ、わかりました。スキルなしであなたの部屋ごと転送させます。即死でも神からの罪はありませんけど……私的にはかなり腹が立ってますからね?そこはお忘れ無く」
知ったことか。あんたらが勝手に拉致してきたんだろう。玄関でのやりとりで興味のないアピールでもしておけば良かったか?これだからよくわからん勧誘は嫌いだ。勝手に因縁を作ってくる。
「それではよい人生を。すぐに会うことになると思いますけど」
そういって親族の人は身の丈ほどある杖を取り出して呪文のようなものを唱え始めた。本部まで来た人への洗礼みたいなものなのだろう。
……とにかくこれでまた最高の幸福を目に焼き付けることができる!もう誰にも邪魔されないように部屋の戸締りはきちんとしよう。
親族の人は杖を青い空に向かって掲げると、杖から眩しい光を放ち始め、僕の意識ごと光に飲み込んでいった。
ここまで読んでくださり、ありがとうございます!
話はだいたいこんな感じで進めていきます。この先ヒロイン(部屋)も出す予定なので、次のお話も読んでいただけたら嬉しいです!
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