頑張れファウンドちゃん
カクレータ村に初めてやってきて、エランス達と遠足に行く前日、グラッドさんにおやすみを伝えた僕は、ファウンドのお腹の中にある部屋に入り眠りにつこうとしていた。
「ファウンドって、ガスとか水道はどうなってるの?」
僕はふと、気になっていた完璧な部屋のライフラインについて尋ねた。
以前の世界の電気は蓄電器に溜めてあるが、もし部屋のライフラインが利用できるのなら、この世界でも快適に過ごせるかもしれない。
「……申し訳ございません。ライフラインに関しては以前の世界から絶たれていて、利用できません。残っていた電気も洞窟内で使用してしまい、今使えるのは蓄電器にある電気のみとなっています」
なるほど、なんでもありのチート異世界生活でも出来るかと思ったんだが、現実はそう甘くはないらしい。
「……ですが、水道とガスならばに多少利用できるだけの量があります。この世界でも使用可能かと」
それは嬉しい。このカクレータ村には川があるし、ガスが利用できるのなら温泉なんかも作れるかもしれない。
「それじゃあ早速、ファウンドの中にある水道水を飲ませてよ。川の水じゃなくて綺麗な水を飲みたかったんだ」
「…………」
おや? ファウンドからの返事がない。普段は僕の言葉をすんなり受け止めてくれる完璧な部屋は、どうしてか顔を赤くして後ろを向いてしまう。
「……ご主人様。少し後ろを向いてて頂けますか?」
「え? いいけど……」
僕はファウンドに言われた通りに後ろを向く、後ろから衣の擦れる音が聞こえた後、水が流れる音が聞こえる。きっと自分の手から蛇口が出てるのを見られたくないのだろう。
しかし、いくら小さい子どもの姿をしたファウンドだとしても、手から流れてるにしてはやけに下から水の音が聞こえた。
「…………お待たせしました。ご主人様」
しばらく時間をおいて、ファウンドは僕に水を差し出してくる。綺麗にメイド服を着ていたファウンドの顔は真っ赤に火照り、今にも爆発しそうだった。
「ファウンド、大丈夫?」
「……お気になさらないでください、ご主人様。私はあくまで言いつけ通りのお品を提供しているまで。決して気にしてなどおりません」
その割にはコップに注がれた水を差し出す手が震えている。僕の完璧な部屋がこんなに取り乱すとは、一体どういう事なんだろうか?
僕はファウンドからコップを受け取り、水を確かめる。見た目は無色透明で液体、重さもしっかり水の重さだ。匂いも特にしない。……なんでファウンドは顔が真っ赤なんだろう?
僕はコップの水を飲んだ。異世界に来てそんなに経っていないし、今の所不自由なく過ごしてきた。
それでも、以前の世界の水道水は無味無臭にも関わらずとても懐かしく感じて、一気に飲み干してしまう。
「美味しかったよファウンド。これで以前の世界に多少残ってた後悔の一つが晴れたよ」
まさか部屋の水道水を飲めることがこんなに幸せだと思える日が来るとは。不思議なことに沢山巻き込まれてきたけれど、完璧な部屋と一緒にこの世界に来れて良かった。
「…………それは大変喜ばしいことです、ご主人様」
僕の完璧な部屋は下を向きながら、僕と一緒に喜んでくれた。
さて、明日は部屋友のエランスと遠足だ! これからも楽しい異世界観光をしていこう!




