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裁く部屋

 瓦礫となった村を覆い尽くしていた大きな蛇は、その巨体を地面に打ちつけて動かなくなった。


 蛇の腹を破ったファウンドは、腕を前に出してぐるぐるしながら地上に下りてきて、エネルギーの回収に成功したことを報告してくれる。

 どうやら、あの大きな蛇の中を元気に探検してきたようだ。


「ありえない……!? お前は魔造兵器に飲み込まれて吸収されたはずだ!」


 バーバラスはファウンドに短くなった爪を向けてくる。


「私はご主人様の命により、逃げた洞窟のエネルギーを回収しただけです」



 ……え? そうなの?



 あのでかい蛇は以前ファウンドが言っていた逃げた洞窟のようだ。……まさか、あの蛇の中からこの世界に来ていたとは。


 複雑な気持ちのまま蛇を見つめる僕に、なぜか憤怒しているバーバラス。


「ふざけるな! この魔造兵器は! 神すらも超越する存在として作られた、魔族文明の頂点にある兵器だぞ!?」


 ……そんなこと言われてもね。動かないのは単にファウンドが燃料を吸い尽くしただけだし、また謎エネルギーを与えれば動くんじゃない?


「……勇者共がここまで厄介な存在だとは……どうやら手段は選んでいられないようだな」


 焦りから丁寧な口調が消えているバーバラスが、倒れた蛇の近くに移動し、テテュスさんにかけていた魔法陣を自身の下に作り出す。


「バーバラス! あなた、自らその兵器の核になるつもり!?」

「御名答! 長年の付き合いなだけあるなあ、エランス! 魔王城から無断でこの兵器を持ち出したってのに、今更後には引けるか! ここでテメェらを全員を消し炭にしてやるよお!」


 バーバラスの体は魔法陣に飲み込まれて姿を消した。すると、蛇の体が地響きをならして動き出し、再び活動を始めた。


 その巨体は先ほどまで動かなかったのが嘘のように勢いよく暴れていた。

 蛇がこちらを捉えると、頭の上からバーバラスの顔が浮き出てきた。はっきり言ってキモい。


「ハハハハ! どうだ勇者共! この魔造兵器は、既に私めが思うままに動く! 体を抉られようとも、残りの部位がテメェらを逃さねえぞ!」


 蛇の顔の上に露出したバーバラスの顔が叫んでいる。いや、やっぱキモいな。


「まずいわ! バーバラスが中にいる以上、魔造兵器は私達を殺すことに集中してくる! あんな巨体が全力で襲って来たら手に負えない!」


 相変わらず震えているエランスが怯えながら話す。いつもの強気な威勢はどこに行ってしまったのか?


「たかが勇者二人ごときが、魔族である私めと、神すら殺す魔造兵器を撃破したなどあってはならねえ! ここでテメェらは終わらせる!」


 バーバラスが激昂しながら、合体した蛇の体でこちらに向かってくる。だんだんと迫ってくる合体した二つの顔はホラーなことこの上ない。




「……ファウンド、『アレ』で終わらせよう」

「かしこまりました。ご主人様」


 迫ってくる巨体を冷ややかに見ながら、僕はファウンドに一つの自衛許可を出す。


 ファウンドは両手から、全長数メートルはある砲身を出現させる。


 

 それは、電磁気力を用いて、中に入った物体を音速すら優に超える速度で射出する、ファウンドの正当防衛シリーズの一つ。『電磁加速砲』だ。


 僕は、万が一部屋が巨大な兵器に襲われてもいいように、跡形もなく破壊できる威力を持つ装備を創り出していた。


 ……もちろん、以前の世界で使用は一切していない。


 砲身をぶら下げて、両手で持つファウンド。可愛いメイド服姿とは相反した物騒な装備が黒く輝いている。


「よし。ファウンド、やっておしまい」

「かしこまりました、ご主人様。『異界電磁加速砲』発射します」


 撃ち放ったその一撃は、眼前まで迫っていた二つの顔を跡形もなく消滅させる。

 消え去った顔に続き、僕たちへの特攻で一直線になった蛇の岩で出来た体は、中で走る弾丸が通過した衝撃のみで木っ端微塵になっていく。


 弾丸はそれでも止まらず、蛇の体を貫通し、以前佇んでいた後ろの神殿すらも、跡形もなく撃ち壊すのだった。



 ――



「……ぐっ、まだだあ! テメェらは魔族の……いや、この世界の脅威だ! ここでテメェらはぶち殺す!」


 血だらけのバーバラスが短くなった爪を遠慮なしにこちらへと振りかざしてくる。どうやら蛇が跡形もなく吹き飛ぶ前に分離したらしい。


「へへっ、そいつはあ勘弁してほしいでさあな」


 何も無い所から声が聞こえたと思ったら、バーバラスの体が縦に真っ二つに斬られる。見事な剣筋だった。


「なっ!? 貴様は、グラッド!?」


 驚くバーバラスの前に現れたのは、美しい日本刀を手に持ったグラッドさんだった。


「牧師さまあ。俺はあ村に平和をもたらしてたあ、あんたのことを信頼してたんだあ。でもお……」


 グラッドさんは一度日本刀を持ち直し、再び構える。


「村にしたこと、それになにより……俺のテテュスにやったことは、お前の命でケジメつけさせてもらうぞ」


 揺らぐことのない剣は魔族であるバーバラスの肉体を抵抗なく切り刻んでいく。


 ちなみにあれは、グラッドさんと別れる前に、僕が渡しておいたあくまで自衛シリーズの一つだ。

 ファウンドの身長と同じくらいの長さを持つその剣は、村人達にもしも何かあった時用に持たせたもので、一応ファウンド経由で謎エネルギーを通してある。(実験したら配線なくても通った)


「あひえん……わたひが……ひゅぞくのひょうへんが……こんな劣等種族共なんかにいいい!!!」



 バーバラスは最後の断末魔をあげ、グラッドさんから受けた追撃を最後に、その体を塵へと変えていった。

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