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壊される部屋

 

 ……いい加減にしてほしい。宗教は興味のない側からすればただの睡眠ボイスにしかならないのだ。こんな状況で教えの違いで争わないでくれ。


 ざっくり聞いた感じ、あのバーバラスという魔族は『魔王城』が本部の別宗教の人で、カクレータ村の女神の情報を盗んでいたらしい。

 僕の部屋友であるエランスは、女神の宗教の人だから、ずっと一緒だったバーバラスに裏切られたことが相当ショックだったようだ。


 そしてバーバラスは、エランスと仲良くしていた僕たちからも、さらに女神について聞きたいようだ。


 ……お互い必死なのは認めるけど、僕たちは女神のことなんて全く知らないし、興味もないんだよなあ。


 それに、関係ないテテュスさんを巻き込んで、宗教の争いをするのは許せない。教えを勝手に説いてる分には許容できたが、誰かに迷惑をかけるのは以前の世界でも御法度なのだ。

 僕はさっさとテテュスさんを返すようにバーバラスに求めたが、彼はびっくりした顔をしてこちらを見ている。


 ……いや、驚いたのはこっちだよ。


 宗教のために人質までとる? 普通。



「……さすが勇者。己のことよりも、目の前の消えかけた命を助けようとは。それでこそ情報を吐かせる価値があります」


 だから勇者じゃないって。というかまだ諦めてないのか。


 ……それよりも、聞き逃せない発言があったな。


「待ちなさい! 『消えかけた命』ってどういうことよ! あなた、テテュスになにをしたの!?」


 息を吹き返したエランスが必死にバーバラスに叫ぶ。以前余裕のあるバーバラスは神殿の奥に視線を誘導する。


「フフフ、どうぞご覧ください。あなた達の村長は、その生命力を使い、『コイツ』の生贄となるのです!」


 神殿を見ると、奥にはテテュスさんが意識を失って磔にされていた。床には魔法陣が描かれており、まるで何かの生け贄のようだった。


「さあ、目覚めなさい! 魔造兵器、スズメノチャヒキ! これまで蓄えた力を、存分に勇者に発揮するのです!」


 ものすごい地震を引き起こして現れたそいつは、神殿の周りにあったはずのこの村の住居を、ことごとく破壊していく。

 村を抉り取りながら現れたのは、見回しても全体が見えないほどの大きな蛇だった。

 体は岩でできており、鋭い眼差しでこちらを睨んでいる。先端の口は、光すらも全てを飲みこむほどの暗闇で、中の様子は全くわからない。



 ――



「ハアッ……ハッ……平野っ…………! テテュスを……助けたわ……!」


 いつの間にかテテュスさんを助けていたエランスが絶え絶えの息の中、僕たちの前に彼女を運んできていた。


「ファウンド! 部屋に入れることを許可する! 出来る限り治療してくれ!」

「かしこまりました。ご主人様」


 僕が許可すると、ファウンドは速やかにテテュスさんを中に入れた。……どうか、無事であってくれ。


「無駄ですよ。この魔法陣はスズメノチャヒキを起動するために必要な魔力を全て奪います。いくら魔力量が多い彼女でも、もう長くないですよ。むしろ、よく一人の生命力だけでこいつを起動できたものです」


 村を巻き込みながら、まだ出てこない身体を地面から生えさせてくる蛇。村の景色を一気に変えるその光景はまさに世界の滅亡のようだった。


「あんなの……どうしろっていうのよ……」


 絶え絶えの息のまま、青い目を恐怖に変えるエランス。


「ハハハ! もうお終いですよお! 魔族の私めに! 魔造兵器! こんなちっぽけな村にいる勇者共には過剰すぎるほどの戦力で! 痛ぶられ! 無様に許しを乞いなさい!」


 優越感に浸りながら絶望の表情を窺うバーバラス。長く伸びた爪が特徴的なその姿は、以前の世界でも伝わる魔族そのものだった。こちらの宗教争いは、かなり過激なものらしい。


「ファウンド、あのでかい蛇は任せた。僕はあいつをやる。振動剣を出してくれ」

「かしこまりました。ご主人様」


 ファウンドはお腹から振動剣を取り出す。


「あなた方勇者の女神から受けたスキルが空を飛ぶことと、武器を出すことなのは知っていますよ! ……しかし、その武器も眷属を切れたからと言って、この私が切れるわけがないでしょう!」


 笑みを崩さないバーバラスは、僕たちのことも調査済みのようだ。


「『目的』を、達成します。ご主人様」


 ファウンドは背中にジェットエンジンをつけて空を飛ぶ。

 蛇はファウンドに反応すると、その口を大きく開ける。中の様子は口を広げても全く見えない。

 そして、蛇はそのまま勢いよくファウンドをその暗闇に飲み込んだ。


「あはははは! 滑稽ですね! あなたの相方は人質ごと、勝手に自滅しましたよ!? まさか勇者がここまで愚かな存在だとは!」


 バーバラスは飲み込まれた一部始終をみて笑い転げていた。


「そんな……テテュス、ファウンド様……」


 限界が来て膝から崩れ落ちるエランス。笑い終わったバーバラスは僕の方に向き直る。


「さて、さすがに一人は残さないと目的が達成できないか。あなたには苦痛を味合わせた後に、ゆっくりと女神の情報を吐かせます。先に死んだ相方を恨むのですね」


「平野逃げて! 魔族の爪は全てを切り裂く!」


 僕を嘲るような目で見るバーバラスは一気に距離を近づけて、長く伸びた爪をこちらに向けてくる。その爪は掠るだけでも岩を切りそうな鋭利さだ。


 僕は振動剣でその爪を受け止める。


「流石に止めますか。ですが、それもいつまで持ちますかね!」


 魔族が何本もある爪をたててこちらへとむけてくる。僕は襲ってくる爪をいなし、後方へ距離を取る。


「なんとか言ったらどうなんですか? あなたの相方は情けなく何も出来ずに、無様に死んだんですよ? こんな無力な勇者しか迎え入れられないこの村は! なんて愚かな村だ!」


 バーバラスは爪で地面を抉りながら僕を引き裂こうとしてくる。


「平野! あなただけでも逃げて! このままじゃ、私たちは全滅よ……」


 エランスは涙を流しながら必死に僕に訴えかけてくる。



 ……僕はそろそろ言いたかったことを言った。



「あのさあ、さっきから何の話してるのか分からないんだけど」

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