冷たい宿命の部屋
続きです!若干、性的描写あります。
昨日に続いて、二回目の宴の準備をするカクレータ村の人たち。ロース・ブルの調理方法も色々あるようで、昼から村人総動員で準備をしている。
僕たちも手伝おうと思ったのだが、村人たちから「一番の功労者に働かせるわけにはいかない」と言われてしまい、することもなく手持ち無沙汰になっていた。
「暇そうね、平野」
やってきたのは今日ようやく友達になれた、部屋友のエランスだ。
「どうしたのエランス? 確か神殿に行ったんじゃなかった?」
彼女は部屋友ではあるが、それ以前に宗教の人だ。僕に止める権利はないので、彼女の信仰的な行動には目を瞑ることにした。
「バーバラスが留守でね。神殿にいる理由もないから、あなたのところに来たのよ」
……「暇だから遊びに来てくれた」って、めっちゃ友達っぽくない?
エランスと友達になれて改めて良かったと思う。時々する宗教の話はやめて欲しいけど。
――せっかくなら、友達っぽいことをもっとしたいな。
「そうだエランス! せっかくだから僕の部屋に来てよ!」
「え? あなたの部屋?」
頭に疑問符を浮かべるエランス。僕は村の人たちからロース・ブル料理のレシピを教わっていたファウンドを手招きする。
「ファ、ファウンド様。ご機嫌麗しう」
緊張しながら話すエランス。やはり、まだファウンドに恐怖心が残っているようだ。
「エランス、君にはファウンドと仲良くなって欲しいし、僕の友達としても頼もしくいて欲しい。だから、是非ファウンドにある僕の部屋を案内したいんだ!」
僕が高らかに宣言すると、ファウンドは完全に理解して、うんうん頷いている。さすが僕の部屋は飲み込みが早い。
「そういえば、空間魔法を扱うファウンド様の部屋を案内するって言ってたわね。まさか平野の部屋だったなんて……」
空間魔法だのなんだのはよく分からないが、ファウンドの中に最高の部屋があるのは間違いないので頷いておく。
「でも……それはとても光栄なことね。是非見せていただきたいわ。」
珍しく僕に丁寧語のエランス。なんて真面目な子だろう。親しき中にも礼儀ありだね。
僕はファウンドに目配せすると、ファウンドは頷き、メイド服を脱ぎ始める。
慌て始めるエランスを尻目に、ファウンドはエプロンを脱ぎ、黒いドレスをはだけて、上半身を下着だけの姿にする。美しく艶やかなその肌は、光を反射する銀髪に負けないくらい綺麗に輝いている。その中でも、一際輝いているのが、上半身と下半身の間にある、身体の全てを支えるお腹だ。
ファウンドは、そのお腹をさすり、おへそからスカートに当たるまで指をなぞる。すると、お腹は光輝き、僕たちを招き入れる準備を完了させる。
「お待たせいたしました。ご主人様。どうぞご利用ください」
全てを包み込む光に向い、僕はその足を進める。
しかし、その歩みは数歩で止まった。どうやら誰かに手を掴まれているらしい。というか痛い。
「……平野、あなたはこんないたいけな女の子に、なんて事させてるのかしら?」
僕の手を掴むエランスの手が、僕の手を握りつぶさんとばかりに震えている。
「そりゃあエランスを部屋を案内したくて、ファウンドに最高の部屋を開けてもらったのさ」
ファウンドのお腹を指差す僕を、エランスは虚無顔で見つめる。あれ? 僕何か間違えた?
エランスは僕の手を引っ張り後退させ、下着姿のファウンドの両手を優しく包み込む。
「……ファウンド様。ありがとうございます。お部屋、ここから見るだけでもとても美しいですわ。ですので、是非ともその扉を閉じて、煌びやかな衣装を身に纏ってください。私は、あなたの『勇者様』としての姿が大好きですわ」
「? 承知しました。ご主人様、よろしいでしょうか?」
「あ、うん」
珍しく困り顔のファウンドに納得した僕は頷く。完璧な僕の部屋を、ファウンドのお腹から見ただけで十分というのは僕でも出来なかった。
……つまりエランスは、それだけあの部屋の素晴らしさを理解したということに他ならない。僕の友達は、僕以上の逸材かもしれない。
感動している僕に、ファウンドがメイド服を着直すまで見ていたエランスが向き直る。
「……さて、平野。少しお話があるので、村の入り口までご一緒しましょう。ファウンド様。少し平野をお借りしますね」
僕の手を取り、先に進むエランスに引っ張られながらファウンドに手を振る。
エランスはどうやら、新しい部屋への着想が湧いたようだ。僕の完璧な部屋には及ばないだろうが、話くらい聞いてあげるとしよう。
――
「おはようございます。ご主人様」
天井からファウンドの声が響く。目が覚めると、僕は最高の部屋のベッドで寝ていた。どうやらいつの間にか眠っていたらしい。
「おはようファウンド……痛っ!」
起きあがろうとすると、頬から痛みを感じる。昨日の宴で、苦手なお酒を飲んだのだろう。どうやら派手に転んだようだ。
「迷惑かけたようだね、ファウンド。誰かが運んでくれたの?」
「エランスがご主人様をお連れしてきました。その際、『私はあなたの味方だからね』と言われたのですが、どういう意味でしょうか?」
珍しくファウンドが質問してくる。無理もない。ファウンドも僕以外と話したことのないコミュ障なのだ。
「……それはね、ファウンド。エランスは、君と友達になりたいんだよ。だからファウンドも、出来るだけ彼女に譲歩してやって欲しい」
幼い女の子同士、ようやく気が合ったのだろう。最初の出会いこそ酷かったが、どうやらいつの間にか仲良くなれたようだ。
「……かしこまりました、ご主人様。以後、エランスのことを保護対象といたします」
二人の幼い子どもたちの成長に感動しながら、ファウンドから出る。外は早朝で宴の後なこともあり、村人はまだ寝ている。
ファウンドに散歩してくることを告げて村を散策していた僕は、神殿の掃除をしているエランスを見つける。
「おーい! エランスー!」
僕の声が聞こえなかったのか、エランスは掃除を続けている。近づけば気づくかなと思い、神殿に向かおうとした時、いきなりエランスが目の前に現れる。全く動きが見えなかった。
「………………話しかけるなクズ」
エランスはその一言だけ言って神殿に戻っていく。どうやら昨日の悪酔いで粗相をしてしまったようだ。反省。
――これ以降エランスは、僕がファウンドの部屋に入ろうとすると、何故か妨害してくるようになった。




