第2章 議題開始 ― 「痛みか、誇りか」 1.再集結:夜明け前の円卓
廃ビルの会議室は、夜の名残をまとったままだった。
外はまだ暗く、遠くで始発の音がかすかに聞こえるだけ。
埃っぽい空気が、蛍光灯の青白い光に浮かび上がる。
五人はそれぞれの思考を抱えたまま、円卓の周囲に座る。
昨夜の“こじらせの熱”は冷めていないが、
今は静寂と緊張が、部屋を支配していた。
中央には、まだ現れぬミスターX。
代わりにスピーカーからわずかなノイズ音が、低く静かに流れ続ける。
赤城九郎が腕を組み、視線を落としたまま呟く。
「まるで“観察されている”みたいだな。」
隣のアオイはタブレットを握りしめながら、眉をひそめる。
「……いや、されてるでしょ。監視とか普通にありそう。」
真夜は左手を握り、視線を虚空に投げる。
昨日の夜の興奮とは違う、静かな恐怖が胸を締めつける。
白石麗が杖を床に軽く打ち鳴らす。
カン、と乾いた音が響き、空気をわずかに震わせる。
「では——始めようではないか。議題は“中二病とは何か”。」
その声は落ち着いているのに、どこか威圧的だった。
部屋に漂う緊張の糸が、一斉にぴん、と張り詰める。
真夜の瞳がわずかに揺れる。
赤城の肩が微かに震える。
アオイは息を吐き、覚悟を決めたようにタブレットを握り直す。
——夜明け前の円卓。
ここから、五人の“定義の戦い”が始まろうとしていた。




