第1章 召集 ― 「選ばれし者たち」 5.不穏な余韻:もう一人の影
「——次の議題は、夜明けに。」
ミスターXの声が、低く、静かに告げた。
同時に、照明が強く明滅する。
まるで部屋そのものが“何か”の心臓のように、
一度だけ激しく脈打った——そして、闇に沈む。
一瞬の静寂。
次に灯が戻ったとき、
円卓の中央にいた“仮面の主”の姿は、もうなかった。
「……いない?」
「今の、演出?」
「投影装置……じゃないよな。」
真夜が立ち上がり、赤城があたりを見回す。
白石は杖で床を軽く叩き、響きを確かめた。
アオイはノートを閉じ、苦笑いを浮かべる。
「……取材対象、いきなり消えるとか反則なんだけど。」
空気はまだざらついている。
埃の粒が光を受け、雪のように漂っていた。
その静かな混沌の中で——
誰も、背後の“窓”に映る異変に気づかなかった。
ガラスの向こう、
薄明かりに照らされて“六人目”の影が立っていた。
それは、彼らと同じ形をしている。
いや——「誰か」に似せている、何か。
その影が、ゆっくりと首を傾げた。
ガラスがきしむ。
誰かの呼吸音が、かすかに混ざった気がした。
しかし次の瞬間、
ビルの外を吹く夜風が、カーテンを大きく揺らした。
それで全て、掻き消された。
——ひらり。
円卓の上。
一通の黒封筒が、まるで“誰かの指先”に触れられたかのように開いた。
中から、一枚のカードが滑り落ちる。
そこに刻まれていたのは、たった一言。
「定義不能(Undefined)」
その銀の文字が、淡く光を放ち——
すぐに、闇へと沈んでいった。
誰も気づかぬまま、夜は終わる。
だが、世界はもう、ほんのわずかに“ずれて”いた。
章末テーマ
中二病とは、呼ばれた者だけが気づく“想像の召喚”。
それはまだ、誰も定義できない「何か」——Undefined。




