第1章 召集 ― 「選ばれし者たち」 4.X登場:円卓の主の声
照明が——落ちた。
まるで誰かが世界のスイッチを切ったかのように、
一瞬で、闇が部屋を呑み込んだ。
空気が、重たくなる。
埃の匂いさえ、静止するように。
その闇の奥から、低く、鋭い声が響いた。
「——沈黙せよ。」
たったそれだけの言葉で、場の空気が凍りつく。
真夜も赤城も、白石でさえ息を呑んだ。
アオイだけが、「え、停電じゃないの?」と呟きかけ——
次の瞬間、スピーカーからの声がそれを押し流した。
「汝らこそ、まだ世界を夢見る者たち。」
「嘲笑され、置き去りにされ、
それでもなお、“何か”を信じ続ける魂たち。」
「我はミスターX。
中二病という名の概念の使徒。
今宵、汝らに問う。」
その声は、まるで機械と人間の中間のようだった。
冷たいのに、どこか優しい。
神の啓示のようでもあり、ラジオドラマの演出のようでもある。
次の瞬間——
ひとつだけ、灯りが灯る。
天井の中央に吊られた古い電球が、
じりじりと熱を帯びながら、円卓の中心を照らした。
その光の中に“影”が立っていた。
黒い仮面。
長いコートのような外套。
身長も性別もわからない。
まるで、光の輪郭にすら拒まれているかのような存在。
声が再び響く。
「議題:“中二病とは何か”。」
沈黙。
全員が言葉を失った。
埃の舞う音だけが、かすかに聞こえる。
時間さえ止まったように感じられるその静寂の中——
誰よりも早く、真夜が小さく呟いた。
「……これが、伝説の円卓……」
その言葉を皮切りに、空気が少しだけ動く。
赤城は腕を組み、真剣な表情でその影を見据えた。
白石は目を細め、静かに呼吸を整える。
そして、アオイは——額に手を当てて深くため息をついた。
「あ〜もう、本格的に帰れない気がしてきた。」
彼女の声が、奇妙な緊張をほぐす。
だが誰も笑わなかった。
いや、笑えなかった。
なぜなら——その仮面の奥から、
確かに“何か”が見つめ返していたからだ。
光でも影でもない、
“世界の狭間”のような眼差しが。
「さあ、語れ。己が“こじらせ”の名のもとに。」
仮面の主が静かに右手を差し出した。
その掌がわずかに開くと、
円卓の上の古びた書類が一枚、ふわりと舞い上がる。
銀のインクで書かれた文字——
『第零回・中二病円卓会議 議題:中二病とは何か』
赤城の目が光り、
白石は杖を軽く打ち鳴らす。
真夜は左手を押さえ、
アオイは小声で呟いた。
「これ……もしかして、人生で一番“痛い夜”が始まるやつだ。」
蛍光灯がひときわ強く瞬いた。
その光が、まるで舞台の幕開けを告げるスポットライトのように、
五人とひとりの影を照らし出した。
——“円卓の夜”が、始まった。




