終幕 ― 「象徴の残像」
風が、夜の屋上を吹き抜けていた。
廃ビルの屋上。
無人の円卓だけが、雨に濡れたコンクリートの上で静かに佇んでいる。
その上空——。
黒い雲の裂け目から、ゆっくりと“黒き月”が顔を出した。
淡い光が、夜の街をまるで古いフィルムのように照らし出す。
ネオンが消え、音が消え、ただ風のうなりだけが響く。
その時だった。
空の彼方から、一枚の“黒い羽根”が舞い降りる。
まるで、誰かの記憶の欠片のように。
くるくると旋回しながら落ちてきた羽根は、円卓の中央に置かれたカードの隣に、そっと寄り添うように着地した。
羽根の縁には、微かに光が宿っている。
それは黒でありながら、闇ではなかった。
闇の中に潜む、確かな光。
カメラがゆっくりと寄る。
テーブルの上には二つの象徴。
——“白紙のカード”と、“黒い羽根”。
対照的なそれらが、ひとつの世界を象る。
「闇は、光を映すために生まれた。
そして、光は闇を抱くために瞬く。
その狭間に、いつも“中二病”がある。」
ナレーションが静かに流れる。
風が羽根を揺らし、カードの端が光を返す。
カメラが少しずつ引いていく。
屋上、街、夜空、そして——黒き月。
どこかで、誰かの笑い声が微かに響いた気がした。
それが現実か、幻想かは、もう誰にも分からない。
ただ、ひとつだけ確かなことがある。
——“想像”は、まだ終わっていない。




