終幕 ― 「“招集”のメッセージ」
夜の街に、雨の匂いが残っていた。
廃ビルの屋上で、静かに眠っていたスマートフォンが——突如、震えた。
ブルルッ……ブルルルッ……。
その微かな振動は、まるで心臓の鼓動のように闇を震わせる。
画面が光を帯び、ノイズを走らせながら、ゆっくりと文字を浮かび上がらせた。
『次回会議:来年、黒き月の夜に再開』
その一文が、夜の静寂を切り裂く合図となった。
***
同じ瞬間——。
◆ 真夜:
夜更けの部屋。
机の上のノートPCがスリープから目を覚ます。
メールの通知音。画面に、あのメッセージが浮かぶ。
彼はしばらく見つめ、ゆっくりと息を吐く。
「……やっぱり、終わってなかったんだな。」
指先が、再びキーボードへ伸びる。
◆ 赤城:
放課後の教室。
生徒たちが帰った後、黒板に残る「黒翼団」の落書きをぼんやり見ていた。
そのとき、スマホが震える。
表示されたメッセージを見て、彼は思わず笑う。
「はは……“団長”の出番かよ。」
◆ アオイ:
深夜の作業机。
ペンを走らせる手が止まり、スマホの光が原稿用紙を照らす。
彼女は静かに呟く。
「“黒き月”か……タイトルにいいかもね。」
そして微笑むと、再び線を引き始めた。
◆ 白石:
誰もいない夜の職員室。
ノートの山の間で、古びた携帯が小さく震える。
白石は画面を見て、ゆっくりと眼鏡を外す。
「来年か……ふむ、課外授業には丁度良い。」
その声は、どこか嬉しそうだった。
***
再び屋上のスマートフォンに戻る。
雨は上がり、夜空の雲が裂ける。
雲間から——黒い月が、静かに顔を出した。
その光を受けて、スマホの画面が再び明滅する。
『議題:次なる世界の定義について』
風が吹き、画面の光が闇に溶ける。
それはまるで、次なる“円卓”の招集を告げる灯火だった。
——そして世界は、また静かに、動き出す。




