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第6章 暁 ― 「世界をまだ諦めぬ者たちへ」3.Xの残響
静まり返った会議室の隅で、
古びたスピーカーが——チリッ、と短いノイズを鳴らした。
誰も何も言わない。
それでも全員が、その音の意味を理解していた。
まるで、“別れの挨拶”のように。
あるいは——“次の会議”を促す合図のように。
淡い静寂の中、スピーカーから微かな声が流れる。
それはもう、誰のものでもない。
五人の心が重なった“残響”だった。
「……議題は、まだ尽きていない。
——想像する限り、世界は続く。」
真夜が、その言葉に気づいて小さく笑う。
窓の外では、朝日が完全に昇りはじめていた。
アオイがノートPCの画面を見つめながら、
小さく呟く。
「……また、会おうね。
“痛い”自分たちのままで。」
その声に、赤城が肩をすくめ、白石が静かに目を閉じる。
彼らの胸ポケットには、同じ“白紙のカード”が一枚ずつ——
朝の光を受けて、微かに輝いていた。
風が窓を揺らし、紙の端がひらりと舞う。
その音だけが、次の議題の始まりを告げていた。




