第5章 真理 ― 「汝、なぜ夢を見るのか」 5.夜明け ― 「それぞれの現実へ」
光が満ちていた。
それは闇を塗りつぶすような眩しさではなく、
心の奥に静かに灯る“希望”の光。
やがて、世界は白く包まれ——
次の瞬間、すべてが音もなく現実へと帰還した。
■ 黒羽真夜
目を開けると、見慣れた自室。
カーテンの隙間から、朝の光が射し込んでいる。
机の上のノートPCには、書きかけの原稿ファイルが開かれていた。
タイトルは——《Re:define》。
真夜は少し笑って、指をキーボードに置く。
「……そうか。ここからまた、始めればいい。」
画面のカーソルが、まるで心臓の鼓動のように点滅していた。
■ 赤城九郎
彼は教室に立っていた。
朝のホームルーム前、黒板に“黒翼団”の文字を落書きする生徒たち。
「団長〜!今日の作戦は!?」と茶化す声。
赤城は、苦笑しながらチョークを取り上げる。
黒板の横に、ひとつの言葉を書き足した。
“Re:define”
そして、振り向きざまに微笑む。
「今日も、闇を守る任務だ。」
■ 星野アオイ
机の上、散らかった原稿用紙。
昨日まで止まっていたペンが、彼女の指の間で再び動き出す。
「痛くても、好きだから描く。」
線が伸びる。コマが生まれる。
白い紙に、また新しい“世界”が息づき始めた。
インクの匂いが、朝の日差しに溶けていく。
■ 白石麗
職員室。
白石は、回収されたノートの束を静かにめくっていた。
そこには、かつての自分が守れなかった“想像”がびっしりと詰まっていた。
ひとつひとつに、丁寧に付箋を貼る。
「夢を見る力を、奪うな。」
それが、彼の新しい教育理念となる。
窓の外、校庭に差す朝の光が眩しかった。
そして、全員の胸ポケットには——
同じ**“白紙のカード”**が一枚ずつ、静かに入っていた。
その白は、“終わり”ではなく、“始まり”を意味している。
書くための余白。描くための未来。
彼らはもう、痛みを恐れない。
想像することの尊さを、知っているから。
世界に、静かに朝が訪れた。
——それぞれの“Re:define”の物語が、今、始まる。
静かな朝が、街を包み込んでいた。
夜の残響は、すべて光に溶けて消えていく。
しかし、その光の中には確かに——“昨日までの痛み”が、温もりのように残っていた。
ビルの屋上、窓の反射、通りの水たまり。
どこかで、一瞬だけXの影が微笑んだ気がした。
まるで「まだ、ここにいる」と告げるように。
ナレーション(Xの残響):
「人は夢を見る。
それは、現実を忘れるためではない。
——現実を超えて、なお生きるためだ。」
「痛みを知る者ほど、想像できる。
笑われても、拒まれても、
それでも“世界を信じる”者たちへ。」
「中二病とは、その——痛みの証である。」
朝の風が吹く。
街の片隅、ベンチの上を一枚の白紙のカードが転がっていく。
それは、どこかの誰かの胸ポケットから落ちたもの。
風に乗って舞い上がり、朝日に照らされながら、ゆっくりと裏返る。
その裏面に、淡い光の文字が浮かび上がる。
『中二病——それは、夢を信じる勇気の別名。』
風が止み、カードは空の高みへと吸い込まれていった。
そして、新しい一日が始まる。
痛みを抱え、夢を見続けるすべての者たちのために——。




