第5章 真理 ― 「汝、なぜ夢を見るのか」 3.対話 ― 「夢を見る理由」
会議室の空気が、まるで深い水の底のように静まり返っていた。
光と影の少年——ミスターXが、ゆっくりと視線を上げる。
その瞳には、四人それぞれの“かつての姿”が映り込んでいる。
「人は成長するたびに、想像を殺す。
笑われたくないから、痛みを隠す。
でも——その痛みこそが、お前たちの核だった。」
声はやわらかく、しかし深く刺さる。
その一言が落ちるたびに、空間の光が微かに脈動した。
「“中二病”とは、現実への反抗ではない。
“世界を愛したい”という叫びの裏返しだ。」
その言葉に、誰もが息を呑む。
真夜が、ゆっくりと立ち上がった。
「……俺たちは、痛みを恥じていた。
笑われたら終わりだと思ってた。
でも、それを“創作”に変えた時——痛みは意味になったんだ。」
彼の背後で、光の塔が一瞬だけ再び揺らめく。
それはもう戦いの象徴ではなく、理解の灯火だった。
赤城が腕を組み、ニヤリと笑う。
「つまりさ……“黒歴史”ってのは、
まだ終わってねぇ、“未完成の夢”ってことだろ?」
彼の足元に、黒い羽がひとつ落ちて消える。
それは過去の象徴でありながら、もはや呪いではなかった。
アオイはゆっくりと息を吐き、淡い微笑を浮かべる。
「誰かに見せるためじゃなく、自分を肯定するための物語……
“中二病”って、そういう優しさでもあるんだね。」
白石が目を細める。
「ならば中二病とは、“自分を語る力”そのものじゃな。」
老いた声に宿るのは、教師としての誇りと、少年のような熱。
その四つの声を聞きながら、Xは静かに頷いた。
光が彼の胸から滲み出し、粒子となって四人の胸へと流れ込む。
「そうだ……それが、俺の望んでいた“再定義(Re:define)”。
お前たちがもう一度、自分の幻想を肯定できるように。」
空気が少しずつ柔らかくなる。
壁に映る影が形を変え、まるで夜明け前の光に包まれるように、
会議室は再び“現実”へと還ろうとしていた——。




