第5章 真理 ― 「汝、なぜ夢を見るのか」 2.仮面の崩壊 ― 「真なるミスターX」
割れた仮面の破片が、宙に舞う。
光を反射しながら、まるで星屑のように円卓を包みこんだ。
そのひとつひとつが微細な粒子となって再結合し、
ゆっくりと“ひとりの人影”を形づくっていく。
——光と影が交錯する。
少年のような輪郭。だが、よく見れば少女の面影も混じっている。
真夜の瞳の孤独、赤城の微笑の余裕、アオイの観察する眼差し、
そして白石の沈黙の深み——
それらが渦を巻き、一つの姿として立ち上がった。
年齢も、性別も、存在理由さえも曖昧。
まるで「彼ら自身の理想像」が混ざり合ってできたような、
形容不能の“人間”だった。
彼——いや、“それ”が、ゆっくりと視線を上げる。
仮面の下に隠されていた声が、今度は彼らと同じ高さで響いた。
「お前たちが忘れたもの……それが、俺だ。」
その声には、どこか懐かしさがあった。
誰もが一度は胸の奥で聞いたことのある声。
“世界が自分のために存在する”と信じていた、あの頃の声。
「痛みを笑われ、理想を押し殺し、
“大人”の仮面を被るたびに——俺は少しずつ消えていった。」
少年の身体が淡く透け、光と影の粒が舞い上がる。
それはまるで、幻想そのものが語っているかのようだった。
真夜が呟く。
「……まさか、君が……俺たちの“中二病”そのもの、なのか?」
Xは微笑んだ。
その笑みには、あらゆる感情が混ざっていた——哀しみ、誇り、そして救い。
「俺は“中二病”だ。
お前たちが描き、否定し、
それでも消せなかった“想像”の化身。」
「お前たちの痛みと、夢と、嘘と、希望の……総体だ。」
彼の言葉が響くたび、
会議室の壁が静かに光を帯び、
まるで心の中の記憶が再投影されていくようだった。
四人は息をのむ。
そこに立つ彼の姿は、懐かしくも痛い、
“かつて自分が信じた世界”そのものだった——。




