第4章 崩壊点 ― 「Re:define」
——現実が、形を失っていく。
かつて“会議室”だった場所は、もはや跡形もなかった。
壁はひび割れ、天井は剥がれ、床の下からは街が滲み出す。
東京の夜景が、まるでインクのように溶け、
ビルが空中で捻じれ、道路が宙を走り、
月が紙のように裂けて断片となって散った。
世界そのものが——“誰かのノート”に描かれた幻想へと
書き換えられていく。
ミスターXの声が、あらゆる方向から重なって響く。
「——再定義の時だ。」
その声は、雷鳴のようでもあり、
教師の説教のようでもあり、
かつての“創作仲間のツッコミ”のようでもあった。
「お前たちは“中二病”を否定して逃げてきた。
だが、それは想像を殺したのと同じことだ。
——さあ、選べ。
幻想に溺れて死ぬか、痛みを受け入れて生きるか。」
真夜は、光の塔の崩壊を背に立ち上がった。
その目は、もう怯えていなかった。
「……俺は、幻想に逃げた。でも、それで誰かを救えた気がした。
だから今度は、現実で創る。」
拳を握ると、周囲の崩壊が一瞬止まった。
彼の言葉が、まだ世界に“意味”を与えていた。
赤城は、黒翼団の紋章を掲げて叫ぶ。
「闇も光も、同じ俺だ!
なら、翼をたたむのは“俺自身の意思”だ!」
黒炎が立ち上り、夜空に翼を描く。
それはもう“痛い妄想”ではなく、誇りだった。
白石は、崩れゆく教室の幻影の中で、
静かに杖を立てる。
「子らよ——空想せよ。
それを恥じぬ大人になるのが、わしらの償いじゃ。」
彼の周囲に、無数の落書きが舞い上がる。
それらは言葉となり、呪文となり、光の帯となって世界を支える。
そして、アオイがゆっくりと歩み出る。
手の中には、あの“銀色のカード”——『Re:define』。
彼女の瞳には、今も現実が“線画”のように見えていた。
ページの隙間から、世界が崩れ落ちていくのを、
冷静に、でも確かに、見つめていた。
「……みんな、自分の物語を書き換えよう。」
そう言って、彼女はカードを空へ掲げる。
瞬間、銀の光が会議室……いや、“世界”全体を包み込んだ。
ビルが元の位置に戻る。
空が閉じ、街のざわめきが帰ってくる。
崩れた会議室の床に、再び“現実”が形を取り始める。
ただし、それはもう“同じ現実”ではなかった。
誰もが一度、幻想を通って戻ってきた——
再定義された現実。
真夜が息を整え、口元に微笑を浮かべる。
「……帰ってこれたのか。」
アオイが頷く。
彼女の手の中で、『Re:define』のカードがふっと光を失い、
ただの白紙の紙片となって舞い落ちた。
ラストショット:
白紙のカードが床に落ちる。
その裏面には、薄く刻まれた一文。
『想像せよ、そして生きよ。』
それが、彼らが“再定義”した中二病の答えだった。




