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中二病円卓会議 ― 闇と光の狭間で ―  作者: 南蛇井


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第1章 召集 ― 「選ばれし者たち」 2.集合:廃ビルの会議室

23時40分。

都内の片隅。

取り壊し予定の企業研修施設——かつては社員教育の聖地だったというその建物は、

今や外壁にツタが這い、ガラスは半分以上が割れていた。


それでも、三階の一室だけに、ぽつんと灯りがついている。

まるで、誰かが“夜の儀式”を準備しているように。


黒羽真夜、降臨


懐中電灯の光が闇を切り裂く。

黒羽真夜は、埃っぽい廊下を進んでいた。

足音が響くたび、天井の埃が舞い、静寂がざわめく。


「……ここが、“召喚の地”か。」


彼は慎重にドアノブを回した。

中に広がっていたのは、使い古された長机とパイプ椅子。

“円卓”と呼ぶには、あまりにも貧相だ。


「まだ誰もいない……封印の解除には早すぎたか。」


呟いた声が、薄暗い部屋の壁に吸い込まれていく。

だがその表情には、どこか嬉しさが混じっていた。

まるで、本当に“召喚”が行われることを信じている子供のように。


赤城九郎、登場


そのとき、

コツ、コツと硬い革靴の音が廊下から響いた。

真夜が振り向くと、ドアの向こうにスーツ姿の男が立っていた。


照明の下で、銀縁メガネが光る。

彼は軽く微笑み、まるでプレゼンを始めるような口調で言った。


「君が黒羽真夜くん、だね? やあ、“同志”。」


「ど、同志? お前……もしかして、あの手紙の――」


「ああ。“黒の印章”を受け取ったひとりだ。……久しいな、若き継承者よ。」


「っ……! 本物だ……!」


その瞬間、真夜の目が輝いた。

彼にとっては初めての“同類”との遭遇だったのだ。


赤城九郎。四十二歳。会社員。

だがその口調と身振りは、どこか“かつてのヒーロー”を演じるようで——

場の空気は、すでに痛々しいほどに熱を帯びていた。


星野アオイ、冷風のように


ドアが開く。

バタン、と乾いた音。

その瞬間、熱を持った空気が一気に冷やされた。


「うわ、なにこの空気。なんか……湿度高くない?」


星野アオイ。

カジュアルなパーカー姿、肩にタブレットケースを下げている。

明らかに場違いな一般人。

しかし、彼女の目だけは鋭く観察していた。


「君も“呼ばれし者”か?」と赤城。

「いや、私は取材。素材集め。あなたたち、マジでそのテンションなの?」


「……これは使命だ。」と真夜がむっとして言う。

「はいはい、“使命”ね。めっちゃいい素材。」


アオイはスマホを構え、録音ボタンを押した。

この夜が、間違いなくネタになると確信していた。


白石麗、静かなる重圧


廊下の奥から、杖の音が響く。

カン……カン……。

ドアが再び開かれると、冷たい外気とともにひとりの老人が入ってきた。


長いコートをまとい、首にはマフラー。

その佇まいはまるで、老魔術師のようだった。


「おや、すでに開会前の儀式が始まっておるようじゃな。」


「あなたは……?」と真夜。


「黒の賢者、白石麗。かつて“言葉の魔導士”と呼ばれた者だ。」


「……え、元教師って感じする。リアルに。」とアオイ。


「ふむ、見抜かれたか。」


彼は柔らかく笑った。

だがその眼差しには、ただの冗談ではない“何か”が宿っている。

この中で、唯一“中二病”を理屈で語れる男——

それが白石麗だった。


そして——


時計の針が、零時を指す直前。

突然、照明がチカチカと点滅した。

天井の蛍光灯が鳴り、埃が舞い上がる。


「……停電?」とアオイが眉をひそめる。


次の瞬間、スピーカーから“ノイズ混じりの声”が流れた。


「……よくぞ、集ったな……選ばれし、こじらせ者たちよ。」


真夜が息をのむ。

赤城は腕を組み、口元に笑みを浮かべた。

白石は目を細め、まるで予感していたかのようにうなずく。


「やはり……来たか。」


部屋の空気が、確かに変わった。

古びた会議室が、どこか“儀式の間”のように感じられる。


スピーカーの音が再び鳴る。

そして、その声がはっきりと告げた。


「今宵の議題は――“中二病とは何か”。」


照明が、一瞬だけ完全に落ちた。

闇の中で、五人の影が浮かび上がる。

……いや、“六つ”の影が。


誰も、もう一つのそれに気づいていなかった。

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