第3章 告白 ― 「我らの黒歴史」3.赤城九郎の告白 ― 「黒翼団(こくよくだん)」
沈黙を破ったのは、低く乾いた笑い声だった。
その笑いの主——赤城九郎が、ゆっくりと足を組み替えた。
「笑ってくれて構わないよ。僕は……“団長”だったんだ。」
彼の口元には、いつもの余裕ある笑み。
だが、その声の奥に、どこか懐かしい熱が混じっていた。
——中学二年の放課後。
夕焼けに染まる教室で、彼は宣言した。
「我ら、黒翼団を結成する!」
集まったのは、わずか4人。
コードネームは“黒翼α(アルファ)”“影狼”“白蛇”“団長アカギ”。
彼らは“世界の裏側で暗躍する闇の勢力”を討つために活動していた。
黒いノートには作戦と暗号がびっしりと書かれ、
メールで「次の標的」や「封印地点」の情報をやり取りした。
夜の校庭に集まり、懐中電灯の光の下で“儀式”を行う。
——誰も知らない、世界の裏側を信じて。
「くだらないだろ?」
赤城は笑う。
「でもあの頃、本気で信じてたんだ。
自分たちが世界を守ってるって。」
彼の笑顔は、どこか寂しげだった。
その“黒翼団”の終焉は、唐突に訪れた。
団員のひとりが、面白半分でSNSに書いたのだ。
『俺、黒翼団っていう痛いやつらと遊んでるw』
翌朝、クラス中が知っていた。
黒翼団は、笑い者になった。
ノートも、儀式も、全てが“黒歴史”として晒された。
「でも、僕は今でも……あの夜の空気を覚えてる。」
彼の声は低く、静かに燃えていた。
「誰かが笑っても、あれは確かに“僕らの世界”だったんだ。」
その瞬間——
照明が、ふっと赤く染まった。
机の上の影が伸び、壁一面に広がる。
まるで巨大な黒い翼が、会議室を覆うように。
アオイが息を呑む。
真夜は目を見開き、
白石は「象徴的だな……“黒翼団”の帰還か」と小さく呟いた。
そして、ノイズ混じりの声が響く。
ミスターX「——誇りを笑う者こそ、最初に堕ちる。」
赤城はゆっくりと目を閉じ、
微笑を浮かべたまま、椅子にもたれた。
「堕ちてもいいさ。
僕は、あの闇の翼で、まだ飛べる。」
そして、赤い照明が一瞬強く明滅した後——
影の翼は、静かに溶けて消えた。




