第3章 告白 ― 「我らの黒歴史」2.黒羽真夜の告白 ― 「世界再生計画」
——闇の中で、ひとりの少年がノートを開いていた。
古びた木製の机。
開いたページには、びっしりと文字が刻まれている。
“世界再生計画”——それが、彼の創った世界の名だった。
中学二年。
黒羽真夜は、いつも教室の隅にいた。
休み時間になっても、誰とも話さず、
机の上で黒いペンを走らせ続けていた。
そのノートの中で、彼は救世主だった。
滅びゆく世界の中、選ばれし者だけを導く存在。
理想郷を築き、人々を闇から救い出す、光の担い手。
それは孤独な少年が、自分自身を救うために編み出した“物語”だった。
「誰も僕を見てくれなかった。
だから僕は、見てくれる世界を作ったんだ。」
声は震えていなかった。
けれど、机の下で握りしめた拳がわずかに震えていた。
——その世界は、ある日、壊された。
昼休み、クラスメイトの一人が彼のノートを見つけた。
「なにこれ、厨二病じゃん!」
笑い声が、波のように広がった。
「救世主ごっこ?」「世界再生計画〜!」
破られるページ。
踏みにじられる言葉。
机の下に落ちたノートを、
真夜はただ見つめることしかできなかった。
——あの瞬間、彼の“世界”は音を立てて崩れた。
だが、今——彼はそのノートを握りしめて言った。
「でも……あの頃の僕がいなきゃ、
今の僕は、生きてなかった。」
静寂。
誰も何も言わなかった。
その言葉に、誰もが胸の奥を掴まれていた。
その瞬間——
会議室のライトがチカチカと明滅した。
壁面に、黒い影がにじみ出る。
やがてそれは、かすかな光の線となって、形を描いた。
“REBUILD THE WORLD”
——ノートの表紙に刻まれていた、あの文字。
それが、まるで呼応するように壁に浮かび上がる。
アオイが小さく息を呑む。
赤城は思わず立ち上がり、
白石はその光景を詩人のような眼差しで見つめていた。
そしてミスターXの声が、
ノイズを伴ってゆっくりと響いた。
「それが、お前の“原点”か。」
真夜は頷く。
その目には、もう怯えも、羞恥もなかった。
ただ——過去と向き合った者の、
静かな光だけがあった。




