第3章 告白 ― 「我らの黒歴史」 1.静寂のはじまり ― 「語る者、語らぬ者」
再び、闇が支配していた。
廃ビルの会議室。
窓の外に漂っていた“気配”はいつの間にか消え、
スピーカーからもノイズひとつ流れない。
ただ、机の中央に置かれた黒封筒だけが、
蛍光灯の残光を受けて鈍く光を返していた。
静寂。
呼吸の音すら、やけに響く。
そのとき——
スピーカーが低く唸り、あの声が再び現れる。
「次の議題——“中二病の原点”を語れ。」
五人は一斉に顔を上げる。
だが、誰も言葉を発しない。
重い空気が、会議室全体に沈殿していく。
それは、胸の奥底に封印してきた“過去”を呼び覚ます痛みだった。
アオイは無意識にペンを握りしめ、
赤城は腕を組んだまま、沈黙を貫く。
白石は目を閉じ、まるで祈るように息を吐く。
沈黙が、時間を歪めていく。
時計の針は動いているのに、世界が止まったように感じられた。
やがて、その沈黙を破ったのは、黒羽真夜の声だった。
「……僕は、もう隠さない。」
小さな呟きだった。
だが、その一言が空気を変えた。
真夜は椅子からゆっくりと立ち上がり、
懐から何かを取り出す。
それは、ボロボロに擦れた黒いノート。
表紙には銀のペンで書かれたタイトルが、
かすかに読める。
『世界再生計画』
誰も笑わなかった。
誰も茶化さなかった。
そのノートが放つ気配に、
全員が“何か”を察していた。
——ここから始まるのだ。
彼らそれぞれの“痛くも眩しい過去”が。
そして、それを語るたびに、
この世界のどこかが確実に揺らぎ始めるのを、
まだ誰も知らなかった。




