47/53
47
「おい、まだ寝ぼけてんじゃねぇの?」
横からナズナがひょいとアリスの腕を突いた。
「寝ぼけてないってば!」
アリスはむっとしながらも、わざと大げさに腕を振り払う。
「ほらほら、昨日のあのドジの話、もうみんなに広め──」
「やめて!」
思わず笑いながら、ナズナの口を手で押さえた。
前ならただ“嫌なやつ”にしか思えなかったはずなのに、
今はその軽口すら、少しだけ心をほどく感覚があった。
そんな二人を横目に、ツクモが静かに口を開く。
「今日から、組み合わせを変える。
アリスはミオと組め」
「え?」
アリスは思わず聞き返した。
ツクモは淡々と続ける。
「同じ相手とばかりだと、見える景色も偏る。
次はミオから学べ」
ナズナがすかさず口を挟む。
「はいはい、つまりアタシはお役御免ってわけね」
わざとらしく肩をすくめるが、その表情は少しだけ笑っていた。
「別に捨てたわけじゃない」ツクモは軽く首を振る。
「お前たちはもう大丈夫そうだ。だから、次の段階だ」
アリスは少し戸惑いながらも、
ナズナの横顔を見て「……うん」と小さくつぶやいた。




