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入口の方から、重い足音が近づいてくる。
土と埃の匂いが、冷えた空気の中に混じった。
振り向くと、そこにナギが立っていた。
肩で息をし、服の袖や裾はうっすらと砂埃でくすんでいる。
慣れていない力作業のせいか、額には薄く汗がにじんでいた。
すぐ後ろにはサイの姿もあった。
無言で部屋に入り、荷物を置くと、そのままネリの方へ向かう。
ネリは何も言わず、用意していた器にスープを注ぎ、サイに手渡した。
サイは短く頷くだけで受け取り、静かに腰を下ろす。
アリスは、まずナギが無事に帰ってきたことに胸をなでおろした。
「……おかえり」
自分でも驚くほど自然に言葉が出る。
「ただいま」
ナギは息を整えながら短く返す。
アリスは、ネリからスープを受け取ったナギの横にそっと座り、小声で尋ねた。
「……どうだった?」
ナギは器を両手で包みながら、低く答える。
「廃材や金属を倉庫まで運んで、積み下ろししてた。……正直、かなりきつい」
「サイさんって……どういう人?」
アリスはさらに声を潜めた。
「悪い人じゃなさそうだ。無口だけど、動きは正確だし、変なこともしない。
ただ……俺の体力がもつかどうかは分からない」
そのやり取りを、少し離れた壁際で聞いていたナズナが口を挟む。
「案外やれるじゃん、白銀くん」
「案外ってなによ」
反射的に返すと、ナズナは片口を上げてニヤリと笑った。
奥でネリとミオが静かに見守っている。
二人の表情は淡々としていたが、その視線はどこか柔らかかった。
アリスは気づかれないように息をつく。
“帰ってきた”という事実が、思った以上に胸を温めていた。




