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「私が一人でも、言いたかったんだ。

“あなたはあなたのままでいていい”って」


ルルが、そう言って空を見上げた瞬間──


私は、はっとした。


彼女の体から、

ごくごく淡い光のようなものが、ふわりと広がった気がした。


それは風に触れても消えてしまいそうな、

でも確かにそこにある、微かな“揺らぎ”。


「ルル……!」

私は思わず声をあげた。


「価標、見て」


ルルが胸元に手をやる。

制服の上から、

その下にある価標の感触を、そっと確かめるように。


そして、目を閉じて、言った。


「……我を映せ」


一瞬、風が止んだように感じた。


その直後、ルルの胸元に、

ほんの少しだけ、色がにじんでいた。


それは、まだ“色”と呼べるかどうかもあやしいほどの、

淡く、淡く、揺らぐ影のような光だった。


でも──

私の目には、それが確かに見えた。


ルルの行動が、

誰にも褒められなくても、

誰にも気づかれなくても、


価標だけは、見ていた。


ルルは、小さく息を吸った。


「……私、誰にも肯定されなかったのに」


「先生も、クラスの子も、

アリスですら、反対したのに」


「でも、価標だけは──」


彼女の声が、そこでかすれた。


しばらく沈黙があった。


「……価標のせいで、ずっと苦しかったのに」


「なのに今さら、

少し色がついただけで、救われた気になってる自分が──

めちゃくちゃ悔しい」


ルルはそう言って、

小さく笑った。


笑ったのに、


その目は、静かに濡れていた。

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