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百鬼の主  作者: 咲夜
1/2

きっかけ

「ねぇ見てみて!

百瀬!

このウワサ!」


俺、百瀬 明理 は暖かい日差しにウトウトしていると甲高い声で一気に現実に引き戻された。


「……?!」


ドン


と……同時に足を思い切り机にぶつける。


「いっ…てぇ……」

「何だ……優花莉か……ハァ…朝から元気いっぱいだな……

それで……?

ま〜たあの掲示板にのめり込んでんのか…?」


こいつは綾瀬 優花莉(あやせ ゆかり)俺の幼なじみで大のオカルト好きだ。


「も〜!

せっかく超絶美少女の幼なじみが構ってあげてるの

に元気無いなぁ…!」


「お前なぁ……自分で美少女って…はぁ……」


俺はそこまで言いかけて口を閉じる。

実際こいつは可愛い、黙っていればだが……


それを聞いた彼女は口を尖らせながら…


「何よ?!可愛いでしょ?」

「しかも幼なじみだし、世の男からすれば最高のシチュエーションじゃない!」


それはそうである。

彼女はクラスでも一番の美女で成績優秀、運動神経も性格も良いオマケに生徒会会長まで務めるくらいには人望もある。

正直幼なじみの俺ですら、欠点らしい欠点は見つからない。

1つを除いて……


「それにやっと夏が来たんだよ?!

なーんでそんなの気怠そうなんだよ!」


「だから高校生にも……それも大学受験を控えた3年の夏にもなって、オカルトばっかり気にしてる奴いねぇって……」


唯一の欠点は大のオカルト好きという点だ。

都市伝説から心霊スポット、曰く付きの○○と呼ばれる様な物から、地域ならではのウワサ話まで網羅している。

もちろん知るだけでは飽き足らず、週3で現地に行くレベル。

しかもたまに、仲のいい奴を巻き込んで行っているらしい。


「フフン!

私にかかれば大学何てよゆーだからね!

それよりも一度しかない高三の夏を楽しむ方が大事

よ!」


「そうか……俺は余裕じゃないんだ。」

「だから俺は忙しい心霊スポットへは一人で行くんだな。」


「フッフッフゥ〜!

そこは心配ご無用!

私が特別に家庭教師をしてしんぜよう! 」


彼女は得意げに鼻を鳴らしながら話を進める。


「ってアレ?

私今回心霊スポットに行く話したっけ?」


「いや…言わなくても分かるだろ……」

「どうせあれだろ?

なんて言ったか?

『セカコワ』……だったか? 」


「そうそう!

『世界の怖いもの集まれ』ってサイト!

もうコレ見つけてからほんと刺激的なのよ!」


セカコワ……そう呼ばれるサイトには色々な話が集まっているらしい。

例えば、「八尺様」や「テケテケ」の様な有名な都市伝説から地域の人のみぞ知るウワサ話程度のちょっとした怖い話、他にもUMA何かの目撃証言まで、オカルトに関することなら乗っている。


つまり、オカルト好きの優花莉にとっては最高のサイトって訳だ。


「それに……」

彼女は何かに気付き慌てて口を閉じる。


こいつが何を言おうとしたのかは分かる。

俺の親父の事だ。


あれは小学校を卒業した日の事だ。

雨の酷い夜の事だった、晩飯も早々に親父はいつもの様に「母さんとの約束を果たす」

とだけ言い残し出かけた。


母さんは、俺を産んだ時に亡くなった。

元々俺は難産が予想されていたらしく、もし母さんに何かあった時の約束事を親父と決めていたらしく、何かある度に「母さんとの約束を…」と話していた。


他にも親父はよく、夜中にふらっと出て気が付けば帰ってくるという事があった。

だからその日も、またいつものかと思うくらいで気にも止めなかったが、その結果「人無し山」と呼ばれる地元で有名な自殺スポットの山で事故って死んだ。


地域の人間は人無し山に入ったからだ、あの山の幽霊に連れて行かれたと、噂をしていたっけな。


正直思い出したくは無いし、思い出す度に憂鬱になる。


「……あれは事故だ。

決してその類の話じゃねぇよ……」


苛立ちを隠せず声を荒らげてしまう。


「ごめん……

そう…だよね…ごめん…」


彼女は申し訳なさそうに目を逸らす。

俺たちは家族ぐるみで付き合いがあった。

親父が死んだと言う報告を聞いた時、一番泣いたのは彼女だった。


それからだ、彼女はオカルトにのめり込んで行った。

そして何かと俺の事も気にかけてくれる様になった。


「ハァ……まあ何だ…勉強がやばいのも世話になってる

のも事実だ。

だから危ない所に近付か無い事を条件に夏休みだけ付き合うよ……」


それを聞いた彼女は子供のように目を輝かせる……

いや高校生なんて子供みたいなんもなんだが、こいつは特別天然と言うか、そう言う節がある。


「そ、それでさ!

早速今日行かない?

実は勉強見るって言ったけど君がどこまでできるかも知らないからお試しって事で……ダメ?」


わざとらしく首を傾げながらそう聞いてくる。

もしこれが漫画やアニメの世界ならキュルン的な効果音がついてるだろうな……


そしてこれは断られると思ってない、断らせる気がない時の話し方だ。


やれやれだな……

ふぅと一息つきながら答える


「……わかった

それで……?

場所はどこなんだ?

決まってんだろ?」


「フフン♪

それはね〜

当ててみて!

ヒントは安全で身近で有名な怪談話がある所…! 」


身近で安全……その上有名か。

そうなれば、人無し山は無いし王道の墓地何かも違うだろう、山はシンプルに危ないし、ここら辺の墓地に有名な怪談話は無い。

同じような理由で病院やトンネルも無い。


となれば……

「学校か?」


「正解〜♪

今回は夜の学校の七不思議を探したいと思います!」


学校ねぇ……

動く二宮金次郎像、音楽室の絵、人体模型、トイレの花子さんetc……


確かに最初のお試しとしては打って付けかもしれないが。


「意外だな…

優花莉はもう少しコアなのが好きなのかと思っていたよ。」


「まぁ明理が初心者だからね〜

やっぱり雰囲気もあってドキドキ感もある所が良いかなって……

もしかして不満?」


まぁそうだよな

やっぱり俺の事を考えてだよなぁ

こいつは自分の用事に振り回すときでもこうだ。

いつも周りの事を第1に考えてる。


「いいや?

特に不満は無い

夜を楽しみに待っておく……」


ガラガラガラ


「はーい席につけ〜?

出席取るぞ〜」


引き戸が開く音と共に爽やかな声が聞こえて来る。

それと同時に一気に教室が静まり返り、それを確認した担任が朝の話をし始める。


「〜〜〜とまぁいつも通りそんな感じだ。

いつもと違うことといえば……」


そう言いながら手をパンパンと鳴らす。


「入っていいぞ〜」


その声と同時にカラカラと弱々しく扉が開き、一人の少女が姿を現した。


黒い綺麗な長い髪、黒曜石のような瞳を持つ童顔の弱々しい少女が皆の視線を独占する。


「え、えと……し、四季 実麗(しき みれい)です……

よ、よろしくお願いします!」

その少女は深く頭を下げ長い髪が垂れる。


「これから3年2組の仲間になる子だ

残り半年間だが皆仲良くしてくれ。」

「席は……綾瀬の隣でいいか?」


その問いに優花莉は元気よく手を挙げ答える。


「はいはーい!

むしろウェルカムだよ!

実麗さんよろしくね!」


「よ、よろしくお願いします!」


「おぉそう言ってくれると思ったぞ!

だからもう席は用意してある。」


「はっ!いつの間に……( ゜д゜)!」


(にしても…この時期に転校生か…珍しい事もあるもんだな。)


そんな事を思いながら俺は大きな欠伸をするのだった。

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