ノエルと師匠
「…エル……ノエル!!」
身体を大きく揺すられた、閉じていた目を開けるとそこには黒髪ロングに真紅に染った目をしたナイスバディーがいた。
ぼーっとした頭を叩き起す。
「師匠……。」
目の前にいるのは私の師匠だ。どうやら、あの聖女召喚のあとの宿舎へ帰る馬車の中で寝てしまっていたらしい。
珍しく師匠が心配した顔をしてる。
「ノエルったらうたたねしたと思ったら、うなされてたんだものぉ。
それにノエルちゃん、師匠じゃないでしょママと呼びなさい。」
この人は………、飽きられた顔をして師匠を眺める。
ものすごいドヤ顔でふんぞりかえっている……。はぁ…
このくだりは実に12年くらい繰り返している。どうせ、何言っても聞かないんだよなーこの人。
渋々諦め
「お母様聖女召喚無事終わりましたねー。」
首を左右にポキポキ鳴らしながら姿勢を整える。
窓から見える景色的にまだ宿舎までは時間がかかりそうだなーって思いながら窓から師匠に目を向けると、納得いってないような顔をしてる。
「んもう、反抗期かしら。昔はママって言ってくれて可愛らしかったのにー。」
ぶちぶち文句をいう師匠を横目に見て窓に視線を向ける。
「お母様が行く必要はあったのー?」
師匠もとい、お母様は偉大なる魔女様であり魔法使いとは比べられないくらいの力をもっている。何千年もを生きており、年齢は不詳。
年齢に聞くとものすごく機嫌が悪くなるからモウキカナイ。ウンダメゼッタイ。
ここアレベールには、多数の種族が存在している。主に王都には人間が住んでるけど。
この国では魔法が重視されている。
魔力の強さや質が特に重視される。
でも魔力を使うことにより、世界の均衡が保たれず溢れ出るゴミとして「瘴気」が生まれてしまう。
人間が酸素をすい、二酸化炭素を吐き出すことと同じだと思ってくれると助かる。
「瘴気」を浄化するためには魔力とは違う聖魔法がいるけど、これは生まれ持った力であるため「瘴気」を浄化するものの数は限られている。
「聖魔法使えるものを別世界から呼ぶってほんと変な話よねぇノエルちゃん。でもそうでもしないと均衡が保てないもの。
王都も必死なのよぉ、王都から追い出した魔女の力を借りたいくらいに。」
師匠は魔法ではなく魔術と呼ばれる魔女特有の力を使っているんだけど、「召喚儀式」のために呼ばれている。
「おかげで私の可愛いノエルちゃんと王都でお買い物ができちゃうのはいいことよぉ、ノエルちゃんったら王都からなかなか森に帰ってこないんだもの。」
不貞腐れた顔をしながらこっちを見る師匠を無視することにした。えぇ…王都で自立しなさいって突然転移させてきたのは師匠なのにぃ…、じどーっとした目で師匠を見るけど全く悪気のなさそうな顔できょとんとしている。
魔力重視の世界では、魔力ほとんどなしの私には薬草などの依頼や、薬師としての依頼をこなしている。魔物などもいるけど、私には依頼が回ってこないのだ。
なかなかギルドでお金を稼いでやりくりするのが大変なので、師匠にオネダリして服とか買ってもらおうかなっと思いちょっとウキウキする。
魔力がないというのは、この世界ではなんと風当たりの冷たいこと……泣いちゃう。
悪口を言われることも少なくないんだよね……。
先程の召喚の間では、師匠に連れられて来たので私は特に何もしてないわけで悪口をグチグチいわれていた。
思い出して嫌な気分になっていたところ、師匠が笑顔で
「大丈夫よノエルちゃん。
ノエルちゃんを魔力なしだとバカにした連中は私がお仕置きしておいたからね!
私の最高傑作なのに失礼しちゃうわー!」