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帰還と

なんとか続きかけた…

気が付いたら茜は大学の最寄り駅前のベンチで横になっていた。目が覚めた茜は慌てて身体を起こし、自分の首を確認する。

「私、生きて…!?う、うわあああん!!」

自分の首が確かにそこにある感触に、生きているという実感が湧いてきて思わず涙が出てきて人目を気にせず茜は泣いてしまった。既に日が沈んでいて辺りは暗い。しかし、それはさっきまでいた闇の中のような暗さではなく街灯や走る車のライトや自動販売機の光が照らすどこか安心する暗さだった。

「私は戻ってこれた…のか?あれは…さっきまでのはただの夢だったのか?」

しばらくして泣き止んだ茜は一つ深呼吸してさっきまでの出来事を思い返す。夢にしてはやけにリアルだった。荒くなる呼吸や踏みしめる路面の感触、そして何よりあの首を掴み潰される感覚はとても夢だとは茜は思えなかった。

しかし…

「今傷一つなさそうなんだよな…」

倒れた時についた擦り傷も、噛み切ろうしてついた舌の傷も、…潰されたはずの首の傷も何一つ残っていなかった。どれもすぐに治るはずのない傷であり、うち一つは致命傷のはずなのに茜の体には痕跡すら残っていなかった。この事実に茜は簡単に結論を出す。

「すごくリアルな悪夢だったのかな…?」

これ以上考えても意味が無い。

そう思い茜は軽く伸びして立ち上がる。違和感が残る夢だと思うが、とりあえず家に帰ろうと茜は傍に置かれていた自分のリュックを背負う。課題三昧のいつもの日常に少しため息を吐きながら茜は歩みを進めた。





―――――――――――――――――――――――――――――――――――――



深夜2時、草木も眠る丑三つ時。

少しレトロな雰囲気を持つ校舎が並ぶ大学もこんな時間になったらそんな雰囲気も吹き飛び、ただものものしく感じる。大学敷地内に街灯や自動販売機の明かりはあるがそれが周りの闇を一層濃くして怖さが増している。その明かりがわずかしかない大学の正門前に奇妙な二人組がいた。

一人は大柄で格闘技選手のようなたくましい女性。もう一人は白いレースのパジャマ姿の細身の女性だ。パジャマ姿の女性はいかにも眠そうで、このまま立ったまま眠ってしまいそうだ。

黒鉄くろがね隊長…何でわざわざこんな時間に呼び出したんですか…?急ぎの要件なら他に回してくださいよ…」

「すまんな宮守。お前にしか頼めなくてな」

「はあ……それで?ここにいた悪魔が何かあったんですか?……随分と派手に倒したみたいですが」

「いや、倒したのは私ではない」

「へ?」


宮守と呼ばれたパジャマ姿の女が呆けた声を出す。黒鉄と呼ばれたたくましい女性がさらに続ける。


「後回しにしていた悪魔を倒しに来たらこれだ。ここの悪魔は4級と聞いていたが魔力痕跡が明らかに特級レベル。悪魔の反応もないから特級相当の何かが倒したのだと予測し、お前を呼んだ」

「ああ…だから私が。確かに特級相当はまずいですね。でもそれよりも一言いいですか」

「なんだ?」

「寝ろ」


たっぷりと怒気をはらんだ一言が宮守から放たれる。それまで眠そうだった姿はなく、怒り心頭という表情だ。


「それだけか」

「それだけか、じゃないんですよ!今何時だと思ってるんですか!?夜中の2時ですよ!?残業するにしても限度があるでしょう!?あなたがちゃんと休まないと部下である私たちにも迷惑がかかるということをいい加減自覚してください!」

「す、すまん宮守…」

「まったく…仕事人間が過ぎますようちの隊長は…!」


そういうと宮守は両目を閉じる。次に開けた時、宮守の目には妖しい光が宿っていた。


《発動》【過去】『過去描写』


その瞬間、周囲の雰囲気が変わる。辺りの風景全てに透明な幕がかかったように、静かに書き換わっていく。物音一つしなくなったところで宮守が口を開く。


「それじゃ巻き戻していきますよ」


その時不思議なことが起こった。まるでビデオを見たい場面まで巻き戻すかのように、周囲の空間が巻き戻っていく。やがて自動車が現れ大学前の道路を高速でバックしていき、通行人までも現れては高速で後ろ向きに動いていく。

大量の車と人が流れていきしばらく経ち、


「止めろ」


黒鉄が巻き戻しを制止する。すると時が止まったかのように全てが静止した。黒鉄と宮守以外が動かない空間で、2人は目の前に突然現れたものに目を見開く。


「これは…驚いたな」

「そうですね…この子がここの悪魔を倒したとみて間違いないですね。突然現れたのも異界から戻ったからでしょうし、後はこの子が誰かを特定するだけですね」


傍から見ると何の変哲もない女性…しかし二人の目にはとてつもない量の魔力を放つ存在に見えている…諸星茜の姿がそこにあった。


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