第2話 白魔術師は依頼を受ける
「えっ。報酬が多い楽なクエストですか?」
「はい。いくつかありませんかね?」
次の日になって、俺は早速ギルドに依頼してみた。クエストにこんなふざけた要点を付けたのにはちゃんとした理由がある。
1つ目は、昨日の酒場代でスッカラカンであることだ。全く俺が一体何をしたというのだ。けしからん。
2つ目は、今日は働きたくないと思っているからだ。
しかし、働かなくては明日の生活が懸かっている。だから、仕方な~くギルドに来たのだ。
「そうですね。少々お待ちください。」
そう言うと受付嬢は、カウンターの奥で資料らしきものを探している。さっすが、有能な受付嬢は話が速くて助かるよ。
「お待たせいたしました。要点を踏まえるとこちらの3点などよろしいのではないでしょうか。」
”オバケハウスの調査”
”オーク討伐”
”薬草の採取”
「・・・・・・」
あっれれ。なんかおかしいな。クエスト名自体は簡単だと思うんだけど・・・
「これ、この前だかBランクの冒険者が棄権したやつじゃなかったでしたっけ?」
「はい!そうですよ。」
やっぱりそうだ!上から順に帰ってこない、死人がでた、見つからないって噂のやつだし。というか今しがた元気よく受付嬢がうなずいたし。
「あの~一応言っておきますけど、わたくしただいまCランクなんですが・・」
「はい!承知しております。」
ならなぜこれにした!っとツッコミを入れたいところなのだが・・
「ですが、サバトさんなら楽勝ですよね!!」
やめてくださいその満面の笑み、断ったら俺が悪いみたいじゃないですか。
バァァン!!
こんなやり取りをしているとギルドの扉が勢いよく開けられた。外から4人の人が中に入ってきた。先頭を歩いている黄色い鎧に大剣を持った青年が堂々と歩いてきた。おそらくこいつがこのパーティーのリーダーだろう。他には、大きな盾を持った中年くらいの男と、杖を持った赤髪ツインテールの女の子、その後ろには同じく杖を持った白髪ショートの女の子。おそらくこの二人は魔術師だろう。でも、白髪の子はずっと下を向いているな。
4人はそのまま受付嬢のところまでやって来た。
「Dランクパーティー《黄金の時代》のリーダー、コレオと言います。私たちにふさわしい依頼がないか聞きたいのですが、少々お時間よろしいでしょうか?」
そんなキラキラオーラを出しながら受付嬢と話しているが、ここは小さいギルドなので受付は3つしかない。両サイドは別の人と話しているので必然的に中央に来ているのだが今まさに俺がその人と話している。まずは順番くらい守ってほしい。
「あの、「なんと!これは”オーク討伐”の依頼ではないか!!」
全くこっちの話を聞いてくれはしない。そんなに薄いかな、俺の影。
「あの~。大変申し訳にくいのですが、そちらの依頼はお隣の方がやるものでして・・」
受付嬢がそう言ってコレオは初めてこっちを向いた。
「なんだ貴様は!割り込みなど無粋であるぞ!!」
「どの口が言っとんのじゃ!!」
最初からいたは。つーか無粋とか言う前に順番守れや。色々とこの男に対する文句を頭の中で出てきたが、コレオは暫く俺を見ると頭を抱えて笑い出した。
「なんだ。誰かと思えば呪い持ちではないか!こんな奴に依頼をするなどどうかしているぞ!」
そう言いながら笑い続けている。つられて中年の男と赤髪の少女も笑い出した。唯一白髪の少女は笑わなかった。というかフード被ってるし、うつむいてて全然表情が分からないんだよな。
「まぁ、君みたいなザコ冒険者君には荷が重い依頼なのだよ。ここは私たち《黄金の時代》に任せておきなさい。」
コレオはそう言いながら”オーク討伐”の依頼書を持って立ち去ろうとしていた。他二人もそのまま後を追いかけるようにギルドを出ていこうとした。白髪の少女はいまだ立ち止まっている。
「あの、ごめんな「シュナ!早く来ないか!!」
彼女の謝罪をコレオの大きな声でかき消されてしまった。シュナと呼ばれた少女は、頭を下げすぐにギルドを立ち去った。なんだか嵐のようなパーティーだったなと感心していると受付嬢が、
「申し訳ございませんがサバトさん」
なんだか申し訳なさそうに話しかけてきた。まぁ正直言いたいことはわかる。
「大丈夫ですよ。依頼ついでに見てきますから。心配しないでください。」
俺は、残っている依頼の中で”オバケハウスの調査”の依頼書を手に取り出し受付を始めた。
「十分気を付けてくださいね。こちらの3つは本来Bランクのクエストなんですから。」
「えぇ、分かっています。」
俺は、心の奥に少しだけ不安感を抱いたままギルドを立ち去った。
サバトの弱点2:影が薄い
第2話の投稿です。
私の中では長編にしたいと考えているのでよろしくお願いします。
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