第73話 アニオタの乱⑤
こちらはカクヨムに掲載された修正版です。
原文ともによろしくおねがいします(*^^*)
ガサガサガサガサバリバリバキメシャっ!!
草と枯れ枝と倒木、そして岩と斜面に足を取られながらアルテマはアニオタを追いかけた。
すでに人間離れした動きを見せているアニオタは、やはり悪魔に取り憑かれている可能性が高い。と、いうかそうでなければ説明がつかないとアルテマは考える。
では、どこのどのタイミングで悪魔付きになったのか。
ずっと昔から取り憑かれていて、それが故の変態なのではないかとの推測に、ぬか娘アレは元々だとハッキリ否定した。
だったら残るタイミングは一つ。
集落のワイファイとやらが切られた瞬間である。
ネット依存が極度に深いと思われるこの世界の若者世代。
それが遮断されたショックは、常人で言うところの恋人を奪われたに等しいという。その計り知れない精神的ダメージの隙きを付いて、この付近を漂っていた低級悪魔に食いつかれたとしたならば、納得がいく。
「くそ……もしそうなら、アニオタだけじゃない。モジョとヨウツベも悪魔憑きになっているということじゃないか!?」
あきらかに様子がおかしかった二人。
冷静に考えればわかることじゃないか。
なんとなくその場の雰囲気でこの世界の若者は変だねぇ~~と眺めていたが……。
自分の目の節穴っぷりを恥じて呪うアルテマ。
しかしいまはそんな後悔にうつむいている場合じゃない。
とにかくまずはアニオタを止めなければならない。
だが、普通に除霊をしてそれで奴が正気に戻るのかと言えば、違う。
そもそもの原因を取り除かなければ、おそらく解決にならない。
しかしワイファイの復旧は、あの偽島組が止めている。
くそう……あっちを取ればこっちが引っ込む!!
一体どうすればいいんだ!?
そう唇を噛んだとき、分け入る草木の隙間からアニオタの姿がチラリと見えた。
異世界から送ってもらった猫耳美少女の脱ぎたてパンツ。
それを後生大事に頭にかぶって山道を疾走するその姿は変態以外の何者でもなかったが、それを見てアルテマは一つ解決策が浮かび上がった。
ガサガサガサガサバリバリバキメシャ――――ごろごろごろごろ!!
深い茂みから獣道へ飛び出るアルテマ。
ごろごろ転がり、枯れ葉と土まみれに汚れながらもすぐさま立ち上がり再び変態を追う。追いつつ呪文を唱えた。
――――開門揖盗!!と。
今回はいつもと違う。あの銀の光柱は現れない。
なぜならいま唱えたのは言葉だけを飛ばす簡易的なものだったから。
幸いにも反応はすぐに返ってきた。
『アルテマ!? どうしたのです、略式の穴など開けて?』
出てくれたのはジル。
姿は見えず、声だけが頭に届いてくる。
「急な呼びたて、申し訳ありません師匠。実は至急用意していただきたいモノがありまして!!」
『あなたがそんなに慌てているなんて……。わかりました、きっと何か深い事情があるのでしょう。何でもお言いなさい、私に用意出来るものならすぐにでも揃えてみせましょう』
「助かります――――では」
六段の雄叫びが聞こえてから約1分。
獣の気配は縦横無尽に乱れながらこちらに近づいてくる。
「すーーーー……はぁぁぁぁぁぁぁ……」
元一は、とある大木の枝の上で呼吸を整えていた。
手にするは異世界からの贈り物『堕天の弓』
それを引き絞り固定しながら、天敵から擬態する小虫のように気配を消していた。
茂みが荒れる音とともに、気配がさらに近づいてくる。
数は二つ。
戦闘の一つはアニオタ。
もう一つはアルテマの気配だった。
「ち……六段のやつ、捕り逃しおったな……」
舌を鳴らすと、神経を集中させ狙いをさらに精密にする。
この弓は魔法の弓と言われるだけあって、射手の意志を汲み取って自動で照準を合わせてくれる。放たれた魔法の矢も自在に曲がって飛んでいく。
弾数無限、装填不要。
すごく便利な魔法弓なのだが、それ故に、ほんの少しの精神の乱れで狙いは四方に分散されてしまうという欠点もあった。
しかしもともと腕の良い狩人だった元一ならばその精神統一もお手のもの。
ほんの数十回の試し打ちで、すでに自在に操れるようになっていた。
今回の標的はアニオタ。
山の獲物ではなく(一応)人間だ。
なのでさすがに怪我をさせるわけにもいかない。
だから奴が姿を見せた途端、足元を狙って転ばせるつもりだった。
もちろんそれで終わりじゃない。
足を止めたその隙きを狙って狩猟用の網をかぶせ身動きを取れなくする。
この頑丈な網さえかぶせてしまえば、相手が成人した熊でもないかぎり大抵の動物は動く手段を奪われる。
それで終わり。
いくらアニオタが異常な動きをしていようが、しょせんワシの敵ではない。
――――ガサガサ、バサァッ!!!!
不敵に笑うその視線の先に、不用意に飛び出してきたアニオタ。
元一は静かに息を止めると、ごく静かになめらかに、その引き絞る弦を離した。
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