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初詣

 新年あけました。今年もひとつ、よろしくお願いいたしますわ。

 時に日本には、初詣という文化がございまするが、我が家では新しい年を迎えるに当たって、神様に挨拶をする機会ととらえて、一張羅をハチガネの一枚にしても磨きをかけまして、朝から水垢離のひとつもやりまして、せこせこと神社へと向かうのでございます。


 いつも信仰心など欠片もないような人々が神社に詰めかけている。一年で一回しかここに来ないような人々だ。その服装だけは赤だの黄色だのと煌びやかであったが、ケラケラと品の無い笑い声を上げているような、うかれた人達だ。

 お祭りみたいに参道に並んだ屋台から白い湯気が上がっている。

 吐く息も白く、気温は身を切るようだ。


 彼等は仕事がどうのとか、年金がどうのといった内容を話しているが、その実は自分の幸福と他人の下世話な噂話だけが楽しみというような感じだ。初詣といっても身を清めることもしないし、神様にもお願いしかしないのだ。


 列に並ぶのに飽きた少年が小走りで飛び出ると、参拝を待つ列の後ろに駆け出した。

 勿論、なにか面白いことがあるからじゃなく、暇すぎてそうすることしかできなかったのだが、その歩みは突然に止まる。


 そんな中、大人達は噂話と列の進みを考えている。


 悲鳴が上がる。

 暖かな朝日のなか、一人の巨体が車からぬうと降り立った。交通整理をしていた警備員が警備灯を取り落とす。これから起きる惨劇を想像して顔が絶望に染まる。

 

 その周りに集まったのは子供達であった。

 見たこと無い。でも見たことがある、それ。男の子は特にこどもの日に飾られる五月人形がそのまま大きくなったような化物がそこにいたのだ。


 黄金の前立てが朝日を浴びて太陽のように輝きを放つ。太い腕が楽器のように鉄板を唸らせている。

 溜め息すら飲み込むような堂々たる体躯であった。私はその雰囲気を無視して列の最後尾に並ぶ。


「皆さん、どうぞお気になさらず」


 足先から頭のてっぺんまで舐め回すような視線を受け、人の底を知った私は自分のような人間はいないなと判断する。


「な、何しに来たんですか?」


 巨大な鉄の塊に出会った恐怖から立ち上がった男が、かつての少年だった男の笑顔で話しかける。


「こういうのお好きですかな?きっと神様もお好きでしょう」

「あんた一体……なんなんだ?」

「亡霊です」


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