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暗闇の中で叫ぶ

 さんざんやって分かった。


 私は多分ヒーローになれない。なれるとしたら悪役なのだ。誰もが恐れる悪役だ。


「でも、めんどくせぇしな」


 悪いことをすると多分捕まる。私は嘘をつけないタイプだ。聞かれたら全部正直に答える自信がある。


 うん、だめだ。自供する。そして最後には自分で処刑台の階段を登るであろう。

 お世話になったみんなに迷惑がかかりそうな気がする。

 捕まったら部屋を暴かれて変質者だと思われる。言い得て妙だ。少なくとも私の家は、鎧が座っているその横に洗濯物が干してあって、足元には工具やナイフ等が転がって、畳んでいない洗濯物がその間に渦巻いているのだ。


 明日から仕事がしたくないのだった。

 そんな理由で皆の平穏をぶち壊そうとするのは浅はかな事なのだろうが、明日会社に行きたくなかった。そして、明日が来なければ良いのにと本気で思っている。


 今、右腕に刻まれた鎧によってできた真っ赤な傷がうずいて、何かしらのヒーローパワーでも出てくれれば良いが、そうはならなかったのである。そうはならなかったのだ。


 私は弱い。

 電車で子供に席を譲るのすら惜しむような人間となり果てていた。体に贅肉がつくように、魂に分厚く纏わりついた脂肪が、ゆっくりと自分の首を絞め行く感触が頭にこびりついて離れないのである。


 私はこんなはずではなかったのだ。研がれたナイフのように、冷たい光を反射するような人間であったはずだ。いつから毒されたのか。

 朱にまみれば赤くなるように回りの人間に影響されたのか、あるいは、自分の根底にある怠惰という人間性が自分をこうしたのかは分からない。


 自他共に認めるほどに、自分はビランであった。悪者である。日本で正義を執行するところである、警察を憎み隙さえあれば張り倒す妄想にかられてしまうのは、彼らの暴挙ぶりを知ってしまったからか(勿論中には素晴らしい人もいると思うが)


 今、私はチャラチャラと音を立てる小手に身を包んで、胴に身を包む。死に装束だ。明日は来ないかもしれない。


 魂の脂肪を落とすために食事制限を開始した。体重が25キロ落ちるまで食べるものは質素なものとなる。それで魂の形が変わらないならばそれまでの人間ということだ。


 なぜこんなに落ち込んだかというと、新しい鎧を作りました。


 全身鎧、全ての装甲を赤い糸で繋ぎ合わせたような美しい大鎧であった。


 はっきりと今まで着たものよりも美しく、しなやかで、重厚だった。故に、自分の矮小さが露呈しまして、いやーお恥ずかしい。バットに入りました。


 いや、これにふさわしい姿になるべきなのです。

 魂も体もね。

 最近設計の力が上がりすぎて出来たものが作った人より美しいというね、納得できんのですわ。


 豚に真珠、馬の耳に念仏。


 でも言霊ですから。私はきっとヒーローになるぞ!!!ふざけんじゃねぇ!私が弱いやつを助けるのだ!!!私以外に誰がやるんだ!!という気持ちでね、鎧と向き合っていきたいと思います。ありがとう。


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