夏イベント
暑くて溶けそうだった。
視界は立ちくらみをしたみたいにジラジラと砂嵐が走っている。頭は寝起きみたいに靄がかかっていて、簡単な計算すらできない。今日の最高気温は36度だった。マジかよ。人の体温じゃんか。36度というのな、最高気温である。鎧を着た人間の体感温度はさらに高い。つまり、最高の環境だった。
火炎を吹く竜に立ち向かうとき、騎士の体は火に包まれ、その白銀の鎧は煤けて黒く色を変える。
その鎧の中では、眼球の水分が蒸発し、前髪が熱で縮み上がるような高温にさらされた騎士が呻き声もあげずに耐えているはずだ。
私のこの状況はそれに近い。いいね~ロールプレイングって感じ。
好きな映画のオールユーニードイズキルの名言を引用すると、『準備と訓練で運命をねじ伏せる』と言うことだった。
コミケには、ヤバイ人がいた。なんか今年多くない?暴れまわり、係員に取り押さえられながら叫んでいた。電車から降りるときに押されたとかで声を張り上げて「殺すぞ!!!」だって。ちょっと鎧を着ようかと思っちゃったよ。鎧はいつもの袋の中にあった。和洋折衷具足ちゃん。鉄の塊は着ないと意味ない。力士のような体格の人のタックルですら押されてるかな?と感じるくらいなのだ。毎日筋トレもせず黙々とアニメとゲームをやっている人には負けない自信があった。裏を返せば、これを着ていないと心配でしかたがなかった。
多分これが鎧依存症というやつなのだろう。
万が一反撃された時に急所にもらうと目も当てられない。鎧はその急所を全て防御し、さらに一方的な攻撃を加えることのできる力だ。だから失うのが怖い。
その力のなんと美しいことだろう。白鳥を思わせる白銀の鎧は見た人の目を釘付けにする。
特に、他の鎧を着ている人にはその光景は毒だった。
そりゃ、自分も鎧が好きでつくっている人だ。誰だって本物が欲しいと思うのは道理だ。
今日は座っていたら向こうから来た。
モンハンの装備の男の人だった。もう、目キラキラさせて、私も好きなんです!!ってカンジ。そりゃそうだよ鎧着てるもん。私たちはあの瞬間そこにいた。別にそれ以上はないのだが不思議な出会いというやつだ。
今日は、前にいた日本鎧のボロボロの人に会えるかと思って楽しみにしていたが、その人は来なかったらしい。まあ、暑いからな。
あれ良かったんだ。黒い唐の頭でさ、あれ多分本物を着てらっしゃるのだ。
体がその当時とおんなじ位の人はそれができるので有利だ。
私の場合、腰の位置が合わないしそもそも胴丸が閉じないので滑稽だ。その頃の水準の体してないのよ。残念ながら。
だから作った和洋折衷具足は私だけのデザインなのだけれど、まだ一度も足が日本鎧じゃないかと突っ込んできた人はおらず、恐らくそれをやるのは普段から日本鎧を着てらっしゃる方だと思うので実に楽しみである。
どちらの鎧も人に着せることを前提にデザイン、設計されていますので、別にどちらでもつけられるという特徴がある。極端な話、上が日本鎧で下が西洋甲冑というのもできる。一度はやっても良いかな。
今日着た感じは、なんかもう気持ちは戦車!!です。私の前には道ができるのです。後ろにもね。
そして、目。目という目がこっちを向きます。
ひゃーー。怖いよね。特に、警備員さんには申し訳ない。彼らはある程度鍛えていて、防刃チョッキを着ている人もいましたから、そりゃ気がつきますわなぁ。なにか、おかしい……。
あれ、本物じゃね?
しかもこっち来る!!!
ゴメン。空気をピリッてさせてごめんなさい。もし、武器なんて持っていたら彼らは即、臨戦態勢をとるか、あるいは固まったでしょう。ちなみに彼らは近づくと一生懸命、浅い呼吸をしていました。しょうがありません。更衣室から会場に入るには警備員さんに近づいて横を通らせばならぬのですから。
もうね、分かるのです。怖がっているのが。
試しに大声だしたい。と思いました。大剣とかクレイモア振り回したい。そう思っちゃいましたね。やりませんでしたが。
会場ではいきなり後ろからアナ雪のアナが現れまして、「暑くないの?」
びびっちゃって。「暑いですよ」なんてつまらない返しをした自分が憎い。
違うでしょう。そこは、「女王陛下!なぜこの様なところへ!ささ、城へ!」と、片膝つけて言えれば最高だった。ついでに手にキスを。
視界にいなかったのに行きなり現れたのは、私のこと追いかけてきたってことじゃないの?あの人混みの中で……?
ぐわーー。今書いてて気がつきましたね。あの時返す言葉は間違いなく、「暑いですよ」ではなかった。彼女だって非日常が欲しいから姫様の格好をしているんじゃないか!お姫様はお姫様として接してもらいたいのだ。
まだ精進が足りず、すみません。次はもっとうまくやる。
今日は、4回肩パンをされました。多分みんな鎧が偽物で柔らかいと思ってやってくるのでしょう。ゴメン、本物なんだ。多分やってきたそっちの方が痛いでしょう?なんでみんなやるんだ?




