本物
本日は日光の方に行きました。
すると、思いがけず徳川家康の元服の時に作った甲冑が御座いました。
その美しいこと。
きらびやかな金箔を多用した神社の中で、ずっしりと構えたその黒い甲冑は、古びてなお、今にも動きそうな迫力であった。
説明文では55キロ級というその重さは勿論、規格外。
徳川家康はそれを元服の時に着たというのだ。年齢にして、だいたい15歳の時である。おそらく当時の日本人の体格から考えて、まったく動けないので、作っただけで飾っていただけだと思われる。
だが、その重さからもわかるように、当時の甲冑にしては珍しく、とても大きいのだった。私が着れそうなほどである。
顔を守る面ぽうも非常に大きく、私にぴったりなのだった。あーあれ欲しいなぁ。たぶんぴったりなのだがなぁ。眠らせるには惜しい。武具は使わねば、泣いている。
数ある戦国武将が真っ赤や金ぴかな甲冑を着ているときに、真っ黒な甲冑を作らせるというのがカッコ良かった。
兜を飾るのは、金のシダ植物のうえに、勝ち虫のトンボ。トンボは視野が広くて前にしか飛ばない出世虫。これから大成しようという気概を感じさせるそのかっこ良さよ。
あれを再現して使ったらたぶん日本に入れるときに問題になると思う。だって、偽物といれかえられたら判別がつかないだろうから。
200年もたてば鋼鉄もなまる。でもあの甲冑は、使われた鉄の隙間から戦国武将達の叫び声や、戦馬の早足の音が聞こえて来そうなのだった。




