綱引き
うおおお!イベント行ってきました!!
最高かよ!!やっぱ鎧こそ至高!!
ステージ上で下着みたいな格好をした女子が、マイク片手に声を張り上げてイベントは盛況であった。
座席に空きがなく、立ち見で眺めていた。私は、やっぱり司会の女の子と目がチラチラと合うのだった。
そりゃそうだろうねぇ!!ピカピカで動くとガシャガシャとうるさい塊が私であった。
ステージでは綱引きが行われていた。観客をステージに呼んで引き合わせ、勝負を決めるという楽しい催しだ。一回戦が終わって参加者が帰っていく。
「誰か次にステージに来てやってくれる人はいませんか~?」
数人の人がおずおずと手を上げた。
私も手を上げた。
ガハハハハ!!!
司会のギャルと目が合う!
当然指名された。
私は私の戦闘力が知りたかった。私がどれだけやれるのかということは、まったく未知数だったからだ。だからこそ、ワクワクした。
相手は体重70キロほどの男二人。こちらは私プラス、ぽっちゃりのおっちゃん一人。
ステージに上がった時点で勝ちだった。
騎士は人目を引く。
観客の目を盗む。
「皆さん応援してくださーい!」
と司会の女性が言うと、ちょっとだけがんばれーって聞こえた。
私が腕を上げて『応援よろしく!!』というとみんながんばえーー!!って声を出した。
キタキタキタ!!
綱引きなんていつぶりだろう。
手にもった綱は固くてずっしりと重かった。
手に汗握っちゃう。
ドキドキする。見られている以上、不格好なことはできないぞ。
開始の笛がなって。
怪我防止用に敷かれたマットレスが蛇のようにしなり、踊る。
両者ともに踏ん張るので、足の下にあったマットレスはあっという間に役に立たなくなっていた。
目の前の仲間が転ぶ。
これで、2対1になった。
スタッフから耳打ちで「本気でやらんでください」と言われ、仕方なく力を抜く。
負けた。悔しい。まだやれた。
二回戦目。マットレスが踊って前の仲間が倒れるまでは同じだった。
だが、しっかりと熱の入った私は、負けるもんかと。負けてなるものかと足を踏ん張る。
相手は怖かったぢろう。
引いていた縄が突如として止まる。
まったく動いていない。
それはまるで岩を引っ張っているようなものだったろう。
「マイ・ターンだ」
ずりずりずりと引く。地下足袋が床に食い込んで熱を発し、相手の顔つきが変わる。引っ張っているのに引っ張られている……!!それもたった一人に大人二人が!!
あのですね。ここからは物理学の世界だ。重いものは動かない。重いものが動くとき、それは相応のエネルギーを持ってなぎ倒すのだ。
パワーも質量も違いすぎらぁ!
後ろを振り返る余裕すらあった。
大の男二人を引きずって勝利した。
三回戦もやったけど、同じ結果だった。
司会のねぇちゃんがちょっと引いてた。
そのあと、コスプレイヤーさんが続々と参加するようになっていた。
戦利品の水筒をもらった。
あと、私には頭のリミッターをはずす癖があるのを思い出した。綱引き後、ガントレットの親指がポロリともげた。鋼鉄のヒンジが悲鳴を上げていた。




