乾杯
今日新しい甲冑投入してきた!
やっぱり人気ねぇ。ナイトは。やっぱり花があるしね。ギラギラして。
今日会った外国人のお兄さんは、目をぎょっとして無言でカメラ向けてきて、ガキみたいにキラキラした目でカタコトの日本語を並べ立てた。
「カッコいいです!!さ、サイコウ!!」
そういうことが4回くらいあって、私の後ろに列ができた。
撮影待ちの列ではなくて、何処に行くかわらないけど付いていきたい!という列だった。
あれーー?こういうことが起きるのか。やはり歴史の長い美しさはある。ゴシックだし。でも、まさかアールピージーみたいなのが、現実で起きると思わないでしょう?
その様子を見た交通整理の警察官が息を飲んだ。
そうだよね怖いよね。
ちなみに手には袋に入れたメイスまであるのだった。
まずいなぁ。色々とめんどくさくなる。
袋の中身を外国人にちらっと見せてあげたら
「クーール!!!クールジャパン!」
なんか嬉しいじゃん? なんか、日本が誉められているみたい。イエーイ!!見てる~?日本人だぞ~!
そんなことをしていたら靴の調子が悪くなった。これはゲームでも妄想でもないので、いつだって現実に痛みが伴うのだ。鉄の靴は固く重い。これは履いたことのある人にしかわからないだろう。シンデレラも大変なのだ。
片膝をついて、直す。するとどう見えるか。
まるでそれは騎士が国王によって任命される、まさにその瞬間のような格好になる。
すかさず焚かれるフラッシュ。機関銃のようなシャッター音。顔の真横にせまるレンズ。
彼ら外国人からすれば、日本にかつての騎士が舞い戻って息をしているのだった。
私は習慣として、鎧を着た日にコーラを買って飲むのだが、ついてきた全員が私の真似をして当たり前のようにコーラを買う。
手に手にもって乾杯である。
はたから見れば、それは頭のおかしい集団だっただろう。言葉だってほとんど伝わっていない。でも、私達はあの瞬間、円卓の騎士であり、ドラゴンを倒した英雄だった。
美化とは名ばかりの人情と思いやりが枯渇した町で、私達は確かに出会ったのだ。
こういうので良いんだよこういうので!
ついでに目の前に止まった車を見て、大袈裟に驚き、『これはなんだ?』と大真面目な声色でやれば、皆顔を青くする。(騎士が歩いていると車が勝手に止まるのだ。タクシーじゃないぞ。ほんとだぞ!)
(あれ、こいつタイムスリップしてねぇか? いやいや、まさかな。そんなはずは……でも、もしかして……?)
人間はみな、自分の見たいものを見る。だから、私は彼らにとってのヒーローとなった。本物の騎士となった。ゴミ箱はあったのに、誰一人として飲みおわったコーラのペットボトルを捨てようとはしなかった。今日、この日の思い出にとっておくつもりなのだ。
もちろん私も。




