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静かなる傍観者

 日本刀届きました。嬉しくて嬉しくて、早速鎧の腰に差して眺めるとまあ!カッコいいんですね。


 もう、声なんてかけられません。だって今にも動きそうなのですから。


 日本では古来より、良き道具には魂が宿ると言われています。


 まあ、信仰心の薄い私なようなものでも、その日から数日ワクワクと過ごしたわけです。早く御披露目したい。自慢したい。これは欲と言うやつでしょう。何しろ、私に合わせた大太刀のなんと優美なこと。本当に、今にも動きそうな武士が家にいるのです。


 そして、それは、明日着るというタイミングで起きました。


 夜中の2時ぐらいだったでしょうか。ふと、視線を感じて目を覚ました。

 すると、足元の方に大きな人が立っている。


 それは嫌に大きく、真っ黒で、死神のようであった。


 窓から差し込む光に目を凝らすと、それは鎧を着た人間である。草ずりが立てた金属音が小さく響く。


 怖くて声がでないのだった。


 その鎧は首から上がなく、丸太のような姿でじーっと私を見下ろしているのだ。

 勿論、いつも鎧をしまっている場所と違う。それどころか、明日の用意のためバラバラに分解して荷造りはとっくに終わっている。ここにあるはずがない。


 これまでも何度か夢枕に鎧が出たことはあったが、このところずっと静かであったので、全く耐性がなくなっていたのだった。しかし、それはそこにいた。いなくなったのかと思っていた。


 その時は怖くて眠ったふりをしている間に朝が来たのだが、今思えば惜しいことをした。


 もし、命をとろうと思って来たのなら、きっとそれは私の上半身の近くに来るのではないだろうか。


 頭や、心臓、肝臓など重要な部分は上半身に固まっている。


 ではなぜ足元かといえば、お世話になった人には足を向けて寝られないという言葉が日本にあるように、敬意を示すために私の足元に寄ったのではないか、と思うのである。


 見方を変えれば、こちらを見ていたのも、なにか良からぬ物が近づかぬように見張っていたというのも考えられる。


 昔より、死んだ人が葬式に行く前には、悪いものが付かぬようお守り刀として日本刀を胸元に置く。その習慣は現代日本でも残っていることだ。まあ、まだ私は死んでいないが。


 武士の間には、惚れた相手を寝ずの番で守ることもあったと言う。


 あるいは、私が主人としてふさわしい人間か試しに来たか。


 鎧、刀というのは不思議なものである。努々簡単に手を出すことをお勧めできないなと思った次第である。


 なぜ、首から上が無かったのだろう。それが引っ掛かる。


 まさか、鎧と、冑につけた神様が別だから置いてきたのだろうか。(冑の飾りは太陽の神様である。鎧に直接関係する神様ではない)もしそうならば、この日本で一番偉い神様をも置いて会いに来ているのだが、そんなに愛されてもよいのだろうか。


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― 新着の感想 ―
[一言] 血筋のなせる現象と言うべきか──。 良いか、悪いか、 それは分かりませんぬが。 今更ながら、世紀末覇者の身長体重を知って、闘気や強者のオーラが相手を大きく見せる……と思ったりして…
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