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魔法は存在する

 全国!いや、世界中の甲冑ユーザさん!これからユーザになる皆さん!諦めないで!!


 何をあきらめないか説明する為に、まずは甲冑の弱点の話をしよう。


 甲冑には致命的な弱点があった。それは”錆び”である。


 甲冑は、剣や斧、時には鉄砲の玉から着用者を守るために、中世当時、最高の素材が用いられた。


 それは高炭素鋼。


 一般的には鉄と呼ばれる素材である。甲冑は鉄を使用し、職人の手によって打ち延ばされ、隅々まで磨き上げられることで銀色の輝きを誇っていた。


 では、日本では珍しくない自転車はどうか。


 あれも用途は違えど、粘り気と硬さとコストを両立する為に、ギアとチェーンに鉄が使用されている。それが真っ赤に錆びた経験はないだろうか。


 甲冑にもこれと同じことが起きるのである。


 地獄だ。まさに血のように装甲へと赤い錆が点々と浮かぶのだった。


 恐らく、日本で甲冑を所有する人の多くが、この問題に悩まされているはずだ。錆が出た事により、手放す判断をした人も多くいたことだろう。


 ちょっと待て!その前にだ、落ち着いて聞いてほしい。錆に対抗する為に救世主が存在する。今さっき気が付いたその存在は、実に安く、それも簡単に問題を解決する。魔法は存在するのだ。


 それはピ〇ールだ。乳白色で灯油の匂いのするその研磨剤は、貴方の甲冑を隅々までギラギラと光らせる。ピカピカではない、ギラギラだ。研磨面に懐中電灯の光なんて当てた日にはもう、目が見えなくなる。それほどのギラギラ。


 一缶数百円で世界が変わるから。錆の方が装甲よりも硬いから、紙やすりだとなかなか除去できないが、ピカー〇は浮かせて錆を落としてくれる。


 想像してみてくれ。初めて会った騎士が錆びだらけの鎧を着ていたらどんなに落胆するか。


 私は、ギラギラした騎士の方がいいと思う。


 助けを求める姫は、騎士が白馬に乗って現れると思っているのだから。年老いたロバでは格好がつかないという物だ。


 ピ〇ールだピカー〇を買え。悪いこと言わないから。


 実は甲冑が錆びるのは、息をしているからなのだった。銀色の鉄は、この世界にもともと存在しない物質である。人間が脆く錆びた鉄鉱石から生み出した長い歴史のある友だ。


 鉄は酸素を取り込み、酸化することで錆び、元の安定な鉄鉱石へと戻ろうとしている。それにあらがうのが持ち主に求められることだった。


 いいじゃないか。手のかかる子ほどかわいいというしね。


 ドラゴンを倒し、姫様を助けた騎士も、火の無い騎士も、化け物を狩る狩人達も、華やかな物語の裏で、こんな苦労をしていたんだな……と想いを募らせる次第だ。


 私の場合、外で甲冑を磨いていたら友達に見られた。流石と言うべきか、友達は飛ぶように駆け寄って来た。男子がこの魅力に勝てるものか。ちなみに彼は某狩りゲームのヘビーユーザーである。


「おま!!なんだよそれぇ!!!ガチじゃねーか!!」


 ええ、ガチですとも。

 内心にやり、とほほ笑む私である。

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― 新着の感想 ―
[一言] ねっしーさんの、鎧が如何程の価格なのかにもよりますが……基本的にガチ(本物) を持っている人はそうは居ないかと。 ブリキ? だか、何だかの軽めのやつならいるでしょうけれども……とは言え、数…
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